大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2021】 | さとるパパの住宅論

大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2021】

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冬暖かく夏涼しい家にするために重要な断熱性能は、外皮平均熱貫流率(UA 値)を調べれば簡易的に比較できます。ここでは、注文住宅の大手ハウスメーカー(年間3千戸以上販売している全 13 社)を対象に UA 値をランキング形式で紹介します。UA 値はすべて公式サイトやプレスリリースで確認した情報です。数値を公表していない会社はランキング対象外として解説しています。

なお、部位平均の断熱性能(UA 値)がいくら良くても、断熱材のバランスが悪かったり、気密性能が低かったりしては意味がありません。そのため、各部位の断熱仕様が公開されている場合は、断熱等性能等級4 の温暖地仕様基準(参考外部ページ)と比較してどれだけ高いか低いかを示しました(最新の情報が見つからない場合は、以前確認できた情報を「旧情報」として掲載)。

また、各社の気密性能(C値:相当隙間面積)にも簡単に触れています。

ランキングは以下のとおりです。

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高断熱で何が変わるか

ランキングの詳細に入る前に、高断熱住宅の住人として、断熱性能が高いとどのような違いがあるのか説明しておきます。

断熱性能が高いとどうなるかというと、まず、断熱性能が高ければ高いほど、住宅内の温度差が小さくなります。足元と頭の高さで温度差が小さいと足が冷えないので、冷え性の症状が改善します。また、1F と 2F の温度差や部屋間の温度差が小さいということは寒い部屋がなくなるということなので、部屋間の移動が苦にならなくなります。室内の最低温度が上がることで、風呂やトイレで寒い思いをすることがなくなるだけでなく、ヒートショックで死亡するリスクも減ります。

とはいえ、いくら断熱性能が高くても、室内で発生する熱や室内に入る熱がないと暖かくはなりません。無暖房でどれだけ暖かいかを示す指標としては自然温度差がありますが、これは断熱性能が高いほど大きくなります。

高断熱住宅ではまた、暖冷房の効きもよくなるため、一定の断熱性能を超えると、部屋ごとにエアコンを設置する必要もなくなり、少数のエアコンで家中を暖房できるようになります。

さらに家中を「連続暖房」すると、温度差はさらに小さくなり、床などの温度も上がるため、床暖房の必要性を感じないほど快適に過ごすことができます(理由の詳細)。

ちなみに、国の省エネ基準値は、寒冷地では連続暖房を想定しているのに対し、温暖地では従来どおり間欠暖房で生活することを前提として設定されています。温暖地でも実は連続暖房のほうがずっと快適になるのですが、全館で連続暖房する場合、暖房費は断熱性能(Q 値)に比例します。

このため、省エネ基準を満たすくらいの断熱性能の住宅で全館連続暖房を実践すると、省エネではなく「増エネ」になってしまうという問題があります。温暖地において、少数のエアコンを連続運転する生活を送りながらも省エネを実現しようとすると、国の省エネ基準(最高等級)を大幅に上回る断熱性能が必要なのです。

国の省エネ基準を上回る断熱性能の目安については、HEAT20(解説記事) が参考になります。

基本的に、断熱性能が高いほど維持費用はかからなくなりますが、そんな高い断熱性能を実現するには初期費用が高くつきます。その初期費用(追加費用)は住宅会社や工法によってマチマチなので、住宅会社や工法の選択によって安く抑えることもできます。

高断熱住宅のメリットは冬だけでなく、日射の侵入に注意すれば夏も安く快適に過ごすことができます。

当サイトでは、このような住宅を実現するための手がかりとなる情報を多数提供しています。高断熱住宅や断熱性能などについて理解を深めたい方は、以下のページなどをご覧ください。

断熱性能はどこまで求めるべきか(Q値とUA値)
高気密・高断熱住宅に関するまとめ(記事紹介)

UA 値ランキング

それではランキングに入りますが、以下はこのランキングの注意事項です。

  • 関東(温暖地)の2階建て住宅のモデル仕様でのUA値を対象としました。
  • 工法ごとに数値が異なる場合は、最高グレードの仕様を対象としました。一般的な仕様とは異なることも多いのでご注意ください。
  • UA値は間取りや窓の面積によって変わります。会社公表の UA 値は美化されているので割り引いて見てください。

つまり、実はランキングにすること自体に無理があるため、ランキングはほんの参考程度に、総合的に判断していただければ幸いです。

詳細 断熱性能ランキングにあまり意味がない理由

第1位:一条工務店

UA=0.25(i-smart)

「家は性能」の一条工務店。外壁に内外ダブルの発泡系断熱材を採用し、窓には樹脂サッシのトリプルガラスを標準採用しているだけあり、他を圧倒する断熱性能を実現しています。ツーバイシックス工法に準じた i シリーズが特に高断熱ですが、他のモデルも十分に高断熱と言えます。また、気密性能を表す C 値(小さいほど良い)も実測平均値が 0.6 を切っており、高レベルです。2020 年度の ZEH 実績は 96%(北海道を除く)で、太陽光発電はほとんど導入されるようです。

熱交換型のダクト式第一種換気システム、全館床暖房の仕様が一般的で、そこまでやるかというほど設備にお金がかかる仕様になっていますが、その割にはコストパフォーマンスは高くなっています。

各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] (高いほど良い)は以下のとおりです。窓以外は旧情報です。

窓:1.3(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)の約 3 倍
壁:9.5(断熱等性能等級 4 レベル(2.3)の約 4 倍
天井:11.7(断熱等性能等級 4 レベル(4.0)の約 3 倍
床:7.0(断熱等性能等級 4 レベル(2.0)の 3.5 倍

詳しくは次の記事で紹介しています。

一条工務店の耐震性・断熱性・気密性の評価と特長

第2位:アイフルホーム

UA=0.28(高気密高断熱仕様)

ローコスト住宅を供給している LIXIL 住宅研究所のアイフルホーム。木造軸組工法のフランチャイズです。断熱性能は要望に応じて大まかに3段階で提供しています。最上位の高気密高断熱仕様では、一条工務店に近いレベルの高断熱・高気密住宅をより低価格で販売しています。C 値は 2020 年度実物件測定平均で 0.52 とのことなので、日本の大手では最高レベルです。構造用面材と断熱材を一体化したパネルを採用することで高い耐震性と断熱性を実現しており、制震装置も搭載しているようです。ZEH基準クリア仕様では UA=0.53 となっており、C値は 1.0相当とのことです。2020 年度の ZEH 実績は 15% と、低めです。

ダクトレスの熱交換型換気を採用できます。

各部位の断熱材の厚みはデータが見つかりませんでしたが、以前の最高モデルであるセシボ極の各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は以下のとおりでした。

窓:1.3(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)の約 3 倍
壁:5.8(断熱等性能等級 4 レベル(2.2)の約 3 倍
天井:3.5(断熱等性能等級 4 レベル(4.0)の -13%
床:不明

詳しくは次の記事で紹介しています。

アイフルホームの耐震性・断熱性・気密性の評価と特長

第3位:タマホーム

UA=0.37(大地の家)

木造軸組工法のローコスト住宅大手のタマホーム。2021年3月から全国で販売開始された「大地の家」ではダブル断熱にトリプル樹脂サッシを採用し、上記のUA 値を実現しています。「大安心の家」というモデルも比較的高断熱な仕様を選ぶことができます。ただし、タマホームの一般的な価格帯の商品よりも高く、標準仕様とはかけ離れているため、モデルやオプション次第でしょう。断熱仕様の選択肢が多く、トリプルガラスや高断熱サッシ、吹付けウレタンフォーム断熱などを採用すればかなりの高断熱に対応できるものと思われます。気密性能についての情報は見つかりませんでしたが、吹付けウレタンフォーム断熱ではそれなりに高い気密性が期待できそうです。2020 年度の ZEH 実績は、たった 2%(北海道を除く)です。

第4位:ミサワホーム

UA=0.39(木質系高断熱仕様)

トヨタホームの子会社となったミサワホームは鉄骨系と木質系に分かれており、木質系は鉄骨系よりも高断熱にすることができます。参考までに、木質系の標準仕様は UA=0.51、鉄骨系標準仕様は UA=0.66(旧情報)、子会社 MJ Wood (木造軸組工法)のZEH仕様は UA=0.55 です。 気密性能については標準では測定していませんが、最近測定された方の情報によると 1.0 前後であり、なかなか高気密です。2020 年度の ZEH 実績は 42%(北海道を除く)です。

各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は以下のとおりです(標準仕様の旧情報)。窓については、AZサッシというサーモスXのような高性能アルミ樹脂複合サッシが標準で、樹脂サッシも選べるようです。

窓:?(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)以上?)
壁:2.0(断熱等性能等級 4 レベル(2.3)の -13%
天井:5.3(断熱等性能等級 4 レベル(4.0)の約 1.3 倍
床:2.0(断熱等性能等級 4 レベル(2.0)相当)

第5位:三井ホーム

UA=0.41(標準仕様)

ツーバイ工法を代表する三井ホーム。わが家はここで建てました。ツーバイシックス工法(プレミアム・モノコック)が標準になったため、壁の断熱材に厚みがあり、外断熱がなくても他のハウスメーカーより少し高い断熱性能になっています。ただ、屋根の断熱性能が標準ではやや劣る点が残念です。2020 年度の ZEH の実績は、北海道を除いて 53% とのことで、国の目標をギリギリ達成するレベルです(個人的には ZEH に懐疑的です)。

熱交換型第一種換気、冷暖房に除加湿と空気清浄を含む全館空調システムを長年の売りとしていますが、費用はかかるので採用しないことも可能です。2019年からはエアコン 1 台による安価な全館空調システムも採用できるようになり、この「スマートブリーズワン」の詳細はこちらの記事で紹介しています。

参考 ツーバイシックス工法のまとめ

窓を樹脂サッシやトリプルガラスにグレードアップすればより高断熱な住宅にすることもできます。C 値を測っていないのが残念ですが、気密性能を確保しやすい工法のため、1.5 を切る程度は期待できそうです。

各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は以下のとおりです。

窓:0.4(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)相当)
壁:3.7(断熱等性能等級 4 レベル(2.3)の約 1.6 倍
屋根:3.7(断熱等性能等級 4 レベル(4.6)の -20%
床:不明※

※以前よりUA値が改善しており、床以外の仕様が変わらないため、床断熱(MGファイバー89mm厚)が改善されているものと推察します。少なくとも断熱等性能等級 4 レベル以上でしょう。

詳しくは次の記事で紹介しています。

三井ホームの耐震性・断熱性・気密性の評価と特長

第6位:セキスイハイム

UA=0.46(木質系グランツーユー)

積水化学工業のセキスイハイムには鉄骨系と木質系があり、断熱性能では木質系が勝っています(鉄骨の UA 値は 0.60)。木質系の中でもグランツーユーはツーバイシックスなので、三井ホームと同様に高い断熱性があります。現在のWebサイトではUA値を確認できませんでしたが、かなり昔から既に高断熱であり、特に仕様は変わっていないようなので、その値を掲載しました。窓をグレードアップすればより高断熱な住宅にすることもできます。また、C 値を測定しており、1.0 を切るレベルを実現しています(鉄骨は 2.0 未満ですが、鉄骨としては最高クラスです)。2020 年度の ZEH 実績は 85%(北海道を除く)と高めです。

ダクト式の熱交換型第一種換気を採用しています。

各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は以下のとおりです(旧情報)。部位ごとに見るとすべて三井ホーム以上なので、公表のモデル値と実際の差が小さく、実際は三井ホーム以上に高断熱になることが推測されます。

窓:0.4(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)相当)
壁:3.7(断熱等性能等級 4 レベル(2.3)の約 1.6 倍
天井:5.3(断熱等性能等級 4 レベル(4.0)の約 1.3 倍
床:3.7(断熱等性能等級 4 レベル(2.0)の約 1.9 倍

詳しくは次の記事で紹介しています。

グランツーユーの耐震性・断熱性・気密性の評価と特長

第7位:ダイワハウス

UA=0.50前後? (xevo Σ Grande)

断熱仕様はエクストラV、ハイクラスV、スタンダードVと段階分けされており、UA値は公表されていませんが、2015年発表のxevo Σ GrandeではUA=0.55という参考値を出していました。価格は上がりますが、現在のプレミアムクラスでは開口部を増やしてもZEHに対応できるとのことなので、UA=0.50前後と推測しました。近年は木造住宅も扱っており、木造は低価格ですが断熱性能と気密性能に関しては鉄骨より高いレベルが期待できます。どちらにしても気密性能については測定しておらず、高い気密性能は期待できません(木造は2前後?、鉄骨は2~5?) 。2020 年度の ZEH 実績は 50%(北海道を除く)です。

第8位:トヨタホーム

UA=0.60(ESPACiO)

2015年11月のリニューアルにより標準仕様の断熱性能が向上しました。ちなみに、シンセシリーズ(鉄骨ラーメン構造)の UA 値は 0.70 です。気密性能については、鉄骨系にしては珍しく公開しており、モデルプラン平均の C 値は 2.8 だそうです。この数値は微妙ですが、鉄骨にしてはセキスイハイムに次いで高気密ではないかと思っています。2020 年度の ZEH 実績は 58%(北海道を除く)です。

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ランキング対象外

以下は、UA値を公表していないため評価対象外とした大手ハウスメーカーです。どこも ZEH に対応可能(=UA 値 0.6 以下も可能)なので、どこも 8 位のトヨタホームに劣るわけではないことにご注意ください。

住友林業

UA=0.46 以下程度?

在来木軸工法を代表する住友林業。この頃は断熱仕様を上げており、具体的な数値は出していませんが、温暖地でも北海道などの「寒冷地に求められる性能と同水準」とのこと。つまり、UA=0.46 以下程度と判断しました。気密性能については標準で測定されることもなく、以前は微妙でしたが、最近測定された方の数値を見ると 1.0 前後を実現しているようで、なかなかの高気密といえます。2020 年度の ZEH 実績は 56%(北海道・沖縄を除く)です。

各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は現在は不明ですが、数年前に公開されていた旧情報では以下のとおりです。

窓:0.4(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)相当)
壁:2.6(断熱等性能等級 4 レベル(2.2)の約 1.2 倍
天井:5.8(断熱等性能等級 4 レベル(4.0)の約 1.5 倍
床:3.6(断熱等性能等級 4 レベル(2.2)の約 1.6 倍

積水ハウス

UA≦0.60?

日本最大のハウスメーカー。UA 値は見つかりませんでしたが、2020 年度戸建住宅の 91% で ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で「ゼッチ」と読みます)をクリアしているため、多くのケースで UA 値 0.6 以下の断熱性能があるようです。材質から考えて、木造のシャーウッドのほうが鉄骨よりも断熱性能を確保しやすいでしょう。シャーウッドでは、グリーンファーストゼロのハイグレード断熱仕様で Q値 1.9 をクリアしているそうです。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(シャーウッドは 2 以下程度?、鉄骨は 5.0 以下?)。

詳しくは次の記事で紹介しています。

シャーウッドの耐震性・断熱性・気密性の評価と特長

へーベルハウス(旭化成ホームズ)

UA≦0.60

2017年5月から「ヘーベルシェルタードダブル断熱構法」が標準仕様となり、ほとんどの商品で ZEH の要件を満たす UA 値を確保できるようになったようです。鉄骨にしては健闘しています。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(5.0 以下?) 。2020 年度の ZEH 実績は 66%(北海道を除く)です。

パナソニックホームズ(旧パナホーム)

UA≦0.60(NEW『CASART』)

2015年のリニューアルで主力商品の標準仕様の断熱性能が向上しました。標準仕様で ZEH レベルに対応しているそうです。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(5.0 以下?) 。2020 年度の ZEH 実績は 54%(北海道を除く)です。

桧家住宅

ヤマダホールディングスの子会社となったヒノキヤグループは全体で年間 3 千戸以上を販売している大手です。UA 値の具体的情報は見つかりませんでしたが、断熱において重要な窓で樹脂サッシ(ただしアルミスペーサー)を標準仕様としていることは、よくあるアルミ樹脂複合サッシの仕様よりも高断熱です。また、C値も新築時 0.4~0.7とのことなので、十分な気密性が期待できそうです。ZEH 仕様基準には容易に対応でき(ただし実績は全体の公表データが見つからず、一部代理店では0%でした)、HEAT20 G2レベルにもオプションで対応できるとのことです。

ZEH 仕様の各部位の熱抵抗 R 値 [㎡・K/W] は以下のとおりです(窓以外は旧情報)。

窓:0.7(省エネ建材等級 4 レベル(0.43)の約 1.7 倍
壁:2.2(断熱等性能等級 4 レベル(2.2)相当)
屋根:4.7(断熱等性能等級 4 レベル(4.6)相当)

その他の大手ハウスメーカー

「スウェーデンハウスやエスバイエルがない!」などと不思議に思われるかもしれませんが、それはこのランキングが年間3千戸以上を販売しているハウスメーカーに限定しているためです。

その他の高断熱な大手ハウスメーカーについては「高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等のQ値、UA値、C値の一覧」という記事に掲載されている可能性があります(少し古い情報です)。

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総評

国策で「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上をZEHにすることを目指す」としてきたため、これまで断熱性能が高くなかったハウスメーカーも UA≦0.60 を標準で採用できるような商品展開を行うようになりました。このレベルでは、関東でもはっきりと快適さを実感することができます。高性能化は良い傾向ですし、今後はトリプルガラスや樹脂サッシの普及・低価格化が見込まれるため、ますますの高断熱化が期待できます。最も断熱性能を上げやすい箇所である窓の選択肢はどこも増えています。

ZEH を上回る HEAT20 の基準で見ると、標準で UA値 0.60以下ということは、間取りを工夫すれば HEAT20 G1 レベル(UA=0.56)は容易に実現できます。しかし、トータルコストを下げつつ、全館暖房でより快適な生活が可能になる HEAT20 G2 レベルとなると、ハウスメーカーによっては高額なアップグレードが必要になる恐れがあります。

特に鉄骨造では構造材料自体が熱を通しやすいため、同じ断熱レベルを実現するために必要な断熱コストは木造よりも高くつきます。防火地域でなければ木造で、標準仕様で高断熱に対応しているハウスメーカーを選ぶほうが望ましいでしょう。

また、気密性能については ZEH などの要件になっていないため、改善傾向にあるものの、多くのハウスメーカーの意識が低く、世界的に見て低レベルなままです。どれほど UA 値が低くても、すき間風が入るようでは足元に冷たい空気が漂いやすくなるため、今後の改善が期待されます。特に現行の省エネ基準の気密仕様は住宅の耐久性にも大きく影響するため(参考)、必ずクリアしたいところです。

高断熱・高気密を共に重視するなら、上位の数社やスウェーデンハウスなどに限定するか、新住協パッシブハウス・ジャパンに加入しているような専門の住宅会社・建築事務所などで建てるのが確実です。上記ハウスメーカーより低コストで高性能な住宅を建てられるところは多数あります。

参考 高断熱・高気密に対応できる全国の住宅会社リスト

住宅選びに失敗したくない方は、当サイト推薦図書(以下など)や、各記事をご覧ください。

この著者の YouTube チャンネルと、2020年8月に発売された新刊『エコハウス超入門 84の法則ですぐ分かる』もお勧めです。

参考
断熱性能はどこまで求めるべきか(Q値とUA値)
高気密・高断熱住宅に関するまとめ(記事紹介)
【ローコスト限定】高断熱・高気密に対応するハウスメーカー等の一覧

コメント

  1. やぐ より:

    いつも楽しく拝見させて頂いております。

    一条工務店とアイフルホームではR値で壁で1.6倍、天井で3倍の差がありますが
    なぜUa値に0.02(7%)しか差がないのでしょうか

    熱損失面積比を窓10% 壁50%、天井20%、床20%として
    1/R値×面積比 を部位ごとに行って足し算すると、大体のUa違計算できると思い行ってみました
    アイフルホームの床R値を7としても、一条とアイフルホームでは140%差があるのではないかなと思いましたが
    いかがでしょうか。

    • さとるパパ より:

      鋭いご指摘ありがとうございます。
      UA値で比べるとほとんど差がないのに断熱仕様に大きな差があるのは、算出元のモデル住宅が各社により大きく違うためでしょう。この違いを示すために、今回の更新では断熱仕様も載せることにしたわけです。

      ただし熱抵抗値は断熱材だけの数値ですので、熱橋部は考慮されません。そのために工法別の基準値と比較したのですが、たとえば一条とアイフルホームとでは、壁の充填断熱部だけを見ると2×6工法のiシリーズのほうが熱橋部からの熱損失が大きいことが推測されます(一条の壁は熱橋を含めるとU=0.131と公表されています)。

      外皮平均熱貫流率UA値をざっくり計算するツールでパラメータをいじると、アイフルホームの数値に無理があるわけではありませんが、同じ面積条件だと一条工務店の数割増しにはなりそうです。
      UA値の計算に当たっては窓面積や土間床などの評価の違いが大きく影響しているのではないでしょうか。

      • やぐ より:

        コメントの返信と、パラメータシートのご案内ありがとうございます。
        パラメータシートと比較しますと、一条・アイフルホーム共に、公表値がパラメータシートより悪い数字になっており
        別途、熱橋部や土間等断熱材のない部分が考慮されている事で納得しました。
        一条は、やたら乖離が大きい結果になりました、以前Q値の計算違いのご指摘をされていましたが
        どんな条件ならQ値0.51とUA値0.28が両立するのか気になっており、一条に熱損失の内訳を聞いてみたいところです。

        熱抵抗値と決まった間取り、構造ごとの熱橋部の補正など、自分なりに比較できるように勉強したいと思います

        • さとるパパ より:

          あの計算フォームは概算で小さめに出る傾向があります(その旨追記させていただきます)。
          一条計算の熱損失(旧仕様)の内訳はサスケさんの一条ブログで公開されていたと思います。
          私は正確なQ値やUA値の計算まではやったことがありませんが、調べるほど何か発見がありそうです。

  2. らきらきさん より:

    うちは九州在住の積水のシャーウッドで先日建てましたが、西日本住宅評価センターの設計住宅性能評価書によると、外皮平均熱貫流率(UA値)が、0.51W/m2Kでしたよ。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。窓の仕様と面積によって幅が生じるものではありますが、参考になります。

  3. zaq より:

    らきらきさんと似たようなお話ですが、パナソニックホームズ で建てましたところ、住宅性能評価書のUA値は0.46でした。
    全館空調(エアロハス)を採用したら、自動的に屋根の厚みが倍になり、ZEH申請を満たすための弊社の断熱基準があると言っていました。
     そのため、補助金応募のため、窓の選定から、水栓の種類まで先に決めましょうとなりました。他の事例は分かりませんが全館空調でZEHを受けるためのパナソニックホームズ の基準がHEAT20なのでしょうね。

    • さとるパパ より:

      情報ありがとうございます。ZEHの細かいルールはわかりませんが、寒冷地でなければZEH申請はUA値0.60以下で良いはずです。設計次第で変わるので余裕をもたせて高い断熱仕様にしている結果、HEAT20 G2レベルまで向上したのかもしれませんね。

  4. スカイウォーカー より:

    土屋ホームの性能について詳しく知りたいです。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      土屋ホームは年間3千戸を超える規模ではなく、地域も限られ、私もほとんど存じ上げないため、個別に取り上げる予定はございません。
      北海道発で成長している会社なのですね。ご期待に沿えず申し訳ございません。

  5. 田中昌 より:

    はじめまして。
    2021年にシャーウッドで建てました。
    私は気密測定を業者にお願いしました。
    結果を記載しますね。
    UA値:0.39
    C値:0.59
    良い気密断熱性能だと思いますが、
    いかがでしょうか?

    • さとるパパ より:

      情報提供ありがとうございます。
      良い気密断熱性能と思います。
      もし宜しければ教えていただきたいのですが、貴宅では気密に関して標準以上の特別な仕様を依頼したのでしょうか?
      ネットでいくつか見た情報では、シャーウッドのC値は 1.5前後が多かったので、標準でそこまで改善してきているとしたら素晴らしい向上です。

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