低気密・中気密は何がどう問題なのか

「C 値 1.0 を下回る高気密性能が大事」とはよく言われているものの、そのレベルの戸建住宅をふつうに提供している住宅会社はまだ多くありません。工法ごとの C 値の平均と標準偏差はこんな感じなので、多くの住宅は 1~5 の範囲でしょう。わが家の C 値も 1~2 の間です。

思い切って C 値 1 以下の住宅会社に絞ることができればよいのですが、選択肢が少なくなりすぎると逆に選べなくなったり、そもそも C 値にそこまでこだわる必要があるのかと疑問が湧いてきたりもします。
「中気密でいいじゃないか」という意見もあります。

そこでこの記事では、C 値 1~5 の範囲を中気密、C 値 5 以上を低気密とし、具体的にどのような問題があるのかを考えてみたいと思います。

そもそも C 値とは何?という方はこちらを先にお読みください。

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換気の基本

この問題を考えるにあたっては、換気のしくみをある程度理解しておく必要があります。

まず知っておきたいことは、換気設備がなくても(内外圧力差がなくても)発生する、自然換気のことです。

この自然換気は、温度差換気風圧換気が組み合わさったものです。

温度差換気は、暖房されて膨張した室内空気が建物上部から外に出ようとし、その分、建物下部から外気が侵入することで発生します。

この量は住宅の相当隙間面積に依存し、換気回数に換算すると、以下のようにおよそ C 値 × 0.1 回/h の量になります。


鎌田紀彦『本音のエコハウス』p.111より

風圧換気は条件によりますが、大雑把にいうと、C 値 5 程度では強風時に換気量が大きく増え、C 値 2 以下になると風の影響が少なくなり、C 値 0.7 でほとんど影響がなくなる感じと理解しています。

隙間がまったくない理想的な高気密住宅では自然換気の影響は微々たるものですが、中気密・低気密の住宅ではこの自然換気の影響を無視することはできません。この影響は、気密レベルや換気方式によって変わってくるので、もう少し細かく分けて考えてみることにしましょう。

低気密のメリットとデメリット

C 値 5 以上を低気密とします。気密シートなどを使っていない、やや古い木造住宅の多くがこれに該当します。このような住宅は、上図を基に考えると、温度差換気だけで 0.5 回/h の換気回数をほぼ達成できます。

毎時 0.5 回とは、建築基準法で一般住宅に定められる必要換気量です。つまり低気密住宅では、換気設備を付けなくても最低限の換気量を確保できることになります。

しかし、先ほど説明したように、自然換気は温度差換気と風圧換気の合計です。C 値が 5 なら無風時にはちょうどよい換気量ですが、風が吹けば吹くほど、換気量は多すぎることになってしまいます。換気過剰という問題です。

本音のエコハウス』によると、昔の木造住宅(築1980年以降程度)は、換気回数 1.5 回/h と仮定してシミュレーションすると実測値とフィットするそうです。

換気回数 1.5 回/h というのは、0.5 回/h の 3 倍です。0.5 回/h の換気は熱損失係数 Q 値に換算すると 0.4 [W/㎡K] くらいなので、低気密住宅では換気だけで Q 値 1.2 相当の熱損失が発生することになります。UA 値と異なり Q 値には換気の熱損失が含まれますが、Q 値計算上の換気回数はおそらく 0.5 回/h きっかりなので、計算上の Q 値がたとえば 2.7 であったとしても、低気密住宅の実際の Q 値は 3.5 くらいになるのでしょう。

これで暖房が効くわけがありません。住宅の下部から侵入する大量の冷気は室内の上下温度差の原因にもなり、床が冷えて体感温度が低下することにもつながります。

参考 熱損失係数Q値とは?暖房費の手計算でわかる本当の意味

ただし、換気過剰はデメリットばかりではありません。換気が不足することはなく、室内環境と室外環境の温度差・湿度差が小さい(差を付けられない)ため、窓の結露や、それに伴うカビは発生しにくい傾向があるように思います。とはいえ、気流止めのない多くの古い在来工法の住宅では、灯油暖房を多用する時期に壁内結露が発生し、小屋裏に移動して長くとどまる(天井の染みの原因)ため、木材の劣化という別の問題もあります。

参考 Q値C値に現れない高断熱住宅の要「気流止め」の問題

中気密のデメリット

現行の省エネ基準に準拠して住宅をつくると、その C 値はだいたい 5 以下程度にはなります。ただし、C 値 1.0 以下となると、気密を重視してきちんと測定しているような住宅会社でないと難しく、多くの新築住宅は 1.0 ~ 5.0 程度でしょう。この範囲を中気密とすると、どのような問題があるのでしょうか。

中気密では、前述の自然換気回数のグラフからわかるように、換気扇を止めた場合、温度差換気だけでは必要な 0.5 回/h の換気量が不足します。このため、24 時間換気設備を止めてしまうのは問題だし、適切な維持管理を行っていくことも不可欠です。

この問題の性質は、換気方式が第一種か第三種かによって大きく異なるため、分けて考えることにします。第一種換気と第三種換気の違いと特徴についてはこちらを参照してください。

第三種換気で中気密の場合

第三種換気とは、室内から室外に向かって排気する方向にファンを設置し、室内側を負圧にする、安価で一般的な換気方式のことです。

この方式での気密性能と換気量の関係については、以下の図を目にしたことがあるかもしれません。

気密性能と自然給気口からの給気量

この図を見ると C 値 1.0 でも問題があるように思えますが、この図の計算は、実はとても単純です。

延床面積 100 ㎡ の住宅を考えるとすると、給気口(レジスター)の面積は合計で約 100 cm2 です。
C 値(cm2/㎡)は床面積(㎡)あたりの隙間面積(cm2)なので、住宅全体の隙間面積は、C = 1.0 で 100 cm2、C = 2 で 200 cm2 です。

自然給気口からの給気量の割合は「給気口を含めた隙間の合計面積」に対する「自然給気口の面積」の割合なので、C = 1 なら 100 ÷ (100 + 100)= 50%、C = 2 なら 100 ÷ (100 + 200)= 33% となるわけです。

ここで注目したいのは、中気密の第三種換気では住宅全体の換気量がほぼ一定であることです。第三種換気では、住宅全体の換気量は換気扇による排気流量とほぼ同じになります。C 値が 5 に近いほど強風時には影響を受けますが、風の影響が大きくないときの換気量は 0.5 回/h を大きく超えません。風の影響を受けにくくするために C 値は低いに越したことはありませんが、中気密の場合、C 値が多少悪くても熱損失が大きく増えることはないのです。これは後述する第一種換気と異なる点です。

自然給気口を通る割合については、フィルターを通した空気を取り入れたい場合は高いほうが良いですが、そうでない空気でも外気は新鮮なので、「窓の隙間などからの給気」と「自然給気口からの給気」を分ける必要はあまりないとも思います。あまりに隙間が多いとショートサーキットとなって自然給気口が無意味になりますが、給気口と隙間の量がほどほどで、均等に分布していれば、換気経路上は問題ない気がします。

問題は換気の総量ではなく、そのムラです。先ほど説明したように、温度差換気による隙間風は住宅下部では室内方向、住宅上部では室外方向へと発生し、その量は隙間(C 値)が大きいほど大きくなります。

3 種換気でファンによって室内空気に一定の負圧をかけた場合、隙間がわずか(=温度差換気がわずか)であれば、室内全体が負圧になり、給気口や隙間で発生する気流は室内方向のみとなります。このとき、住宅上部では隙間風(自然給気口を通る風も同じ)の流れの方向は反転しています。

しかし、隙間が多い(=温度差換気が多い)場合、住宅上部の気流を反転させることができず、自然給気口で給気にならず、排気が発生することになります。換気の総量は同じでも、隙間があるほど住宅下部からの給気の割合が増え、住宅上部からの給気の割合が減るということです。この理屈では上部階が換気不足になりがちになる傾向があるため、室内の空気循環を促進したり、窓を開けたりする必要が出てくるかもしれません。

C 値が 1 程度であれば自然換気量の影響が小さいため、換気経路の工夫しだいではムラは小さくできそうです。しかし C 値が 2 あたりになると計画的な換気を行うのは難しく、5 に近づくほど自然換気(温度差 + 風)の割合が増し、気まぐれな風に左右されて換気過剰になる時間が増えてくるのではないかと思います。

3 種換気での換気ムラを減らすためには、気密性能をできるだけ高めるか(やはり 1 以下を目指すべき?)、各部屋に排気用の吸い込み口をつけるダクト式第三種換気という方式を採用するのが効果的かと思われます(これでも C 値は 1.5 以下が望ましい)。

第一種換気で中気密の場合

排気と給気にそれぞれファンを使用する第一種換気の場合、室内は負圧にならないため、機械換気に加えて自然換気がそのまま発生します。この自然換気の量は C 値が大きいほど増加し、仮に C 値 2.0 ならば、温度差換気だけでも換気回数 0.2 回/h ほどになります。

しかしほとんどの住宅会社は、自然換気のことを計算に入れていません。換気計画で設計される換気設備の換気量は、ふつうに 0.5 回/h 以上でしょう。すると、実際の換気量は 0.7 回/h ということになり、換気過剰です。

熱交換換気を行って「見かけの換気回数」(参考記事)が 0.3 回/h になったとしても、自然換気 0.2 回/h があれば合計は 0.5 回/h となり、換気によって熱損失を減らす効果は実質ゼロです。

これに加え、熱交換されない局所換気(トイレや浴室、レンジフード)があるだけでなく、風による換気も発生します。

このため、中気密住宅では、熱交換式第一種換気を採用しても省エネ効果は期待できず、むしろ換気による熱損失が増えるケースが多いのではないかと思っています。暖房費・冷房費は第三種換気よりも高くなるかもしれません。

第一種換気は省エネ効果だけでなく湿度維持の効果も謳われていますが、自然換気の割合が高い状況では、これも同様に効果を発揮できません。

参考までに、第一種換気で自然換気を引いた分の機械換気を行うという運用方法も考えられます。この場合、換気過剰にはなりにくくなりますが、気密が低いほど熱交換換気のメリットが消えるのは同じことです。

それでも、中気密住宅で第一種換気を採用する意味が無いわけではありません。第一種換気では、ダクト式にせよダクトレスにせよ、各部屋で確実に一定量の換気が確保されるという特徴があります。つまり、換気不足や換気ムラが発生しにくいということです。

また、熱交換された給気は室温に近いため、「冬に換気の空気が寒い」という問題は軽減されます。

ただ、これらのためだけに第一種換気を採用するというのは、その高いコストを考えると、非常にもったいないことです。換気ムラをなくすだけならダクト式第三種で良いし、第三種換気の給気の寒さは工夫しだいで緩和できることだからです。

第一種換気を採用し、そのメリットを最大限に活かすためには、0.5 程度の C 値を目指したいものです。

上記のような換気の詳細については、次の本がお勧めです。

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