レンガの家は強い?~『3匹の子豚』の力学的考察~

シェアする


イギリスの有名なおとぎ話である『3匹の子豚』の教訓は、しっかり手間をかけて作ったものの方が丈夫で役に立つというお話です。しかし、短絡的に解釈すると、ワラの家や木造住宅は弱く、レンガや石、コンクリート造りの家の方が強いという印象を抱きがちです。家の強さが生死を分けるこのショッキングな物語は強く潜在意識に残るため、へーベルハウスが好まれる大きな要因となっています(?)。はたして、レンガの家が強いというのは本当なのでしょうか?

結論から言うと、ご存知のように、レンガの家は地震に弱いという欠点があります。レンガの家は地震の少ないイギリスでは問題ありませんが、地震が日常茶飯事に発生する日本では大問題です。ここでは、レンガの家が地震に弱い理由を構造力学的に簡単に説明したいと思います。

地震で問題になるのは、多くの場合、横揺れです。どんな建物でも自重は支える必要があるため、垂直方向の力にはある程度耐えられるようになっています。しかし、横(水平)方向の力は平常時にはほとんど受けないため、横方向の力に耐える力は建物によってピンキリです。建物(柱)に対して横方向の力が加わるとどうなるのかを示したのが次の図です。

物体が静止しているとき、すべての力は釣り合っています。下端が固定されている柱の上部に左から力(P)が加わるとすると、下端では同じだけの反力が発生します。このとき、柱内部には、「せん断力」と「曲げモーメント」が発生します。「せん断」とは、ハサミのように、ある面(上図の断面方向)に反対の力が作用することです。もう一つの「曲げモーメント」とは、柱が倒れないように回転方向に抵抗する力のことです。曲げモーメントは距離に比例するため、上図では最下部で最大になります。このとき、柱の断面では、左側で引張力、右側で圧縮力が発生します。

レンガは材料として、圧縮力には強いが引張力に非常に弱いという性質があります。レンガだけで造られた建物が地震に耐えられないというのは、このためなのです。(例外として、幅が大きい場合は自重もあり引張力が発生しないので丈夫です。また、一見レンガ造りに見える建物も、レンガを使用しているのは外壁材としてのみで、構造材はレンガではないこともあります。)

引張力に弱いというレンガの性質は、コンクリートも同じです。レンガやコンクリートのこの欠点は、鉄筋で補うことができます。ヘーベルハウスのへーベル(軽量気泡コンクリートのパネル)にも、ちゃんと鉄筋が組み込まれています。コンクリート構造物を設計する際、引張力が発生すると推定される箇所には必ず鉄筋を入れることになっています。これにより、地震時にひびが入ることはあっても倒壊はしないように設計されているのです。

なお、木材は圧縮強度と引張強度がともに高いという特性があります。また軽量なので、自重を支えることが負担になりません。『3匹の子豚』では、木の家はオオカミに吹き飛ばされてしまいますが、木の家の強さは構造しだいです。木材は断面積当たりの強度は鉄骨にはかないませんが、面構造であれば受ける力が分散され、単位面積あたりにかかる荷重が小さくなるため、全体として十分な強度を発揮することができます。

ついでにいうと、鉄骨が最強だに思われるかもしれませんが、鉄骨だけだと「座屈」(Wiki)という問題があります。また、火事などで高温になると一気に強度が低下するという欠点もあります。錆びるという問題もあります。これらの問題は、コンクリートと補完し合うことができます。鉄筋コンクリートが普及しているのは、このためなのです。

フォローする