構造計算は精度が高いほど建築費が安くなる? | さとるパパの住宅論

構造計算は精度が高いほど建築費が安くなる?

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一口に構造計算と言っても、いろいろな方法があります。耐震等級を示すためには耐震性能を評価する必要がありますが、その手法としては大まかに以下の 3 つが定められています。

  1. 壁量計算
  2. 許容応力度計算
  3. 限界耐力計算

下の手法ほど、細かくて正確です。このうち 1 の壁量計算は仕様規定であり、普通は構造計算とは見なされません。3 階建以上の住宅には選択できない手法ですが、一般的な 2 階建の木造住宅で多く採用されている簡易的な方法です。

一般に構造計算というと許容応力度計算などになります。この方法では必要な強度が確保できているかを個別に計算するため、壁量計算などだけの場合よりも正確に耐震性能を評価することができます。

ただし、その計算には多くの不確実性や推定が含まれています。

実際の強度は理論値どおりにはなりません。現実には材ごとの違い、経年劣化、施工の技術差などが影響し、その結果得られる強度には無視できないバラツキが発生します。このバラツキが大きければ大きいほど、結果が予測できないぶん、大きな安全率をかけて強めの設計値にしておく必要があります。

たとえば、100 の強度が必要な材料にバラツキがあり、実際には 80 の強度しか期待できない可能性があるとします。その場合、設計上では必要な強度が確実に得られるように、最初から 1.25 倍の強度にしておくのです。

工業生産される鉄骨などはバラツキが小さいので正確に計算しやすいですが、節のある木材などは品質規格はあるものの比較的個体差が大きいため、安全側に設計される傾向にあります。不確実性が大きいと、その分、安全側を見てより高い強度が要求されることになり、無駄が多くなって不経済です。

見方を変えると、目的の強度が同じ場合、構造計算の精度が高ければ高いほど、使用する材料は減らすことができるのです。

比較的新しい限界耐力計算では、実験値に基づく統計値や変形量の計算も含めて細かい計算を行い、より精度の高い構造計算を行うことができます。耐震性に定評あるミサワホームでは、住宅にもこの方法を採用しているそうです。

しかし、精度が高い計算を行うためには、その材料に関する豊富なデータが必要になるし、専門知識や膨大な計算も必要になります。材料のコストが減らせたとしても、そのための追加コストも無視することはできません。同じ工法の住宅を大量に作る場合、決まっている仕様を守るだけでいい仕様規定のほうが効率的です。

また、いくら設計の精度が上がったとしても、施工不良や地盤などの不確実性を完全になくすことは不可能です。

そのため、仕様規定が悪く、限界耐力計算が絶対的に良いという単純な話でもないわけです。

それでは結局どの構造計算の手法がいいのかというと、その結論はケースバイケースですが、2 階建以下の木造住宅に関する私見は以下のとおりです。

まず、私が耐震性能に求めることは、「数十年に一度程度の地震で内装材の損傷がないこと(層間変形角が 1/200 以下)」と、「数百年に一度程度の地震でも倒壊しないこと」です。構造計算してもらえるなら、これらを確認してもらいたいものです。

しかし、仕様規定であっても、枠組壁工法(ツーバイフォー)の仕様で建てた住宅では、過去の震災の結果を調べるとほとんど被害が発生していないことがわかります。そのため、構造計算の必要性は感じられず、わが家はそれで十分だと判断しました。構造計算の詳細を確認する気力すら起こりません。

もし木造軸組工法で建てるとしたら、耐震等級 3 に加えて制震装置があれば同様の耐震性能を期待できるのではないかと思っていますが、不確実性が大きいのでは、とも思います。そのため、壁量計算だけよりは構造計算もしてもらえたほうがずっと安心だし、その方法が限界耐力計算であれば、なお安心です。

参考
耐震等級3を超える耐震性能を求める理由
仕様規定と性能規定
熊本地震におけるツーバイフォー住宅の被害状況
地震の繰り返しに耐える住宅とは(変位角と耐震性)

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