熊本地震におけるツーバイフォー住宅の被害状況 | さとるパパの住宅論

熊本地震におけるツーバイフォー住宅の被害状況

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震度7を2回も記録した熊本地震において、ツーバイフォー(木造枠組壁工法)の被害はどうだったのでしょうか。日本ツーバイフォー建築協会が、平成28年7月に次の資料を発表しています。

熊本地震における会員会社の物件の被害状況アンケート調査結果』(PDF)

簡単に紹介すると、2940棟の調査の結果、「全壊・半壊はなく、当面修理をしなくても居住に支障のない住宅は97%を占めている」とのことです。ちなみに、熊本地震以外の過去の震災におけるツーバイフォーの被害状況については、同じく日本ツーバイフォー建築協会がこちらのページで概要を公表しています。

震災後に調査を行っているハウスメーカーは多くありますが、全壊・半壊がないというデータしか公開していないことが多く、そのまま住めるかどうかという重要なデータは公表されていません。実際には、半壊と判定されなくても、外壁はヒビだらけ、石膏ボードがバキバキに折れている、ということもあります。ツーバイフォー協会がこのデータを出せるのは、ツーバイフォーでは倒壊以外の被害も本当に少ないからでしょう。ちなみに、一部損壊は79棟あり、その原因は強震変形46棟、地盤崩壊15棟、液状化15棟、その他3棟とのことです。

調査した2940棟の中には、設計ミスや施工不良、耐震上好ましくない設計、築年数の長いもの、管理が行き届いていないものも含まれていることが推測できます。そんななか、この結果はツーバイフォーの高い耐震性を実証していると言えます。

一方で、日経ホームビルダーに気になる記事が掲載されています(参照記事:「築浅住宅が地震で倒壊、金物不備や増築が要因か」)。熊本地震で、ツーバイフォー工法によって建て増しされた住宅の1階が潰れていたとのことです。この記事からは少なくとも半壊していると思われるため、先ほどの報告と矛盾しているようですが、協会に問い合わせたところ、この住宅は日本ツーバイフォー建築協会の会員以外の会社が供給したツーバイフォー住宅であるため管轄外である、とのことでした。この住宅は土台と合板が適切にクギ打ちされていないという施工ミスがあり、旧住宅との接合部の設計にも問題があったようです。ツーバイフォーの倒壊ではありますが、この現場は隣接する古い住宅が倒壊した影響を受けており、不運なケースと考えられます。

追補

2018年に日本建築学会から出た『2016年熊本地震災害調査報告』によると、被害の大きかった益城町の詳細調査では、枠組壁工法の住宅54棟のうち6棟に半壊以上の被害が発生していることになっているようです(文献を直接確認したわけではありません)。

在来工法と比べると被害は少ないものの、全壊・半壊ゼロというツーバイフォー協会の報告とはだいぶ差があります。ツーバイフォー協会で調査しているのは現存する会員会社が供給した物件に限定されるため、既に存在していない会社や会員以外の会社が建てた物件は含まれておらず、大きな被害を受けたのはそうした物件だったのでしょう。被害の大きいツーバイフォー住宅は、日経ホームビルダーの記事の事例と同様、枠組壁工法の仕様にきちんと準拠していなかったのかもしれません。

このことから、ツーバイフォー住宅を入手する場合には、いつ潰れるかわからないような会社ではなく、ツーバイフォー協会に加盟している会社が建てた物件や、きちんと第三者によるチェックを受けた物件が望ましいと思いました。

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