当サイトでは、Q値1.6以下の高断熱仕様にすることにより、光熱費をかけずに家中の温度を一定に保つことを推奨しています。ここでは、家中の温度を一定に保つための冷暖房の方法について、エアコンと全館空調を検討します。
どちらの方式でも言えることは、高断熱住宅では室温を変えるのに大きなエネルギーが要らないということです。Q値の値(W/K・㎡)は建物から逃げる熱量(W/K)の床面積比を示すものなので、Q値=4.8の住宅(※注)とQ値=1.6の住宅を比較すると、同じ床面積の冷暖房に必要なエネルギーには 3 倍の差があることになります。ということは、理論的には、同じ能力のエアコンで 3 倍の空間の冷暖房を行えることになります。
※注:Q値=4.8の住宅とは、平成4年の新省エネルギー基準の最高等級が関東で4.2だったことから、ペアガラスでない昔の戸建て住宅の一般的なレベルだと推定します。
エアコンの台数と配置場所
40坪程度までの住宅では、1台のエアコンで家中の温度を管理することも不可能ではありません。ただし、そのためには、日射の管理に注意したうえで、家の中で熱が均等に行き渡るような間取りにする必要があります。具体的には、家の中央部に階段や吹き抜けのあるリビングを作って常時稼働させるエアコンを設置し、そこから各部屋が空間的につながるようにします。ドアは基本的に開けておいた方が良いかもしれません。ただし、やりすぎると音は漏れるし、プライバシーもなくなります。また、暖かい空気は上に行き、冷たい空気は下に行くため、エアコンを1階と2階のどちらに付けるかも悩ましい問題となります。
実際には、Q値=1.6程度の場合、エアコンを複数台設置する方が多いようです。エアコンを付けない部屋は外気温の影響を受けるため、昔の住宅ほどではないにしろ、快適性に劣ります。プライバシーを確保して温度を細かくコントロールしようとすると、各部屋にエアコンが必要になってきます。ただし、断熱性能がもっと高くなり、Q値が1.4を切る程度になると、吹き抜けの上下の温度差がほぼなくなり、エアコンのある部屋とない部屋の温度差も小さくなるため、各部屋にエアコンを付ける必要性は減ります。
このように、エアコンの設置場所や間取り、台数は悩ましい問題であり、感じ方も人それぞれです。断熱性能によっても差があるため、Q値1.6程度ではセキスイハイムのグランツーユー、Q値1.4程度ではスウェーデンハウスに住んでいる方のブログなどを調べることをお勧めします。この2社はエアコンによる冷暖房を標準で提案しています。スウェーデンハウスの冷房の連続運転については、以下の URL の最後の方に詳細な検証結果が公開されています。
なお、熱交換式の第一種換気システムを採用することも、部屋の温度差を一定に保つことに貢献します。熱交換率80%であれば、理論的には、室温24度、外気温0度のとき、取り入れられる空気の温度は19度になるからです。コストはかかりますが、これなら無理にオープンな間取りにする必要がなくなるかもしれません。
全館空調ですべて解決?
温度差とエアコンの悩みを解決する方法の1つは、全館空調です。第一種換気システムに冷暖房を組み込んだもので、ツーバイフォーの大手ハウスメーカー(三井ホーム、三菱地所ホーム、東急ホームズ、ウィザースホームなど)で採用することができます。室外機が 1 か所で済み、各部屋の冷暖房を効率的に行うことができます。暑がりの人と寒がりの人がいる場合に細かく対応することはできませんが、1階と2階で冷暖房の強度を調整することはできます。また、冬季用に加湿機能が付いているものもあります(十分な能力ではありませんが、ないよりマシです)。快適性については好意的な意見が多いようです。
一方で、以下の欠点もあります。
・初期費用がかかる(我が家は40坪で190万円)
・機器や配管の設置スペースが必要
・月1回のフィルタ掃除や年間のメンテナンス契約が必要
・部屋ごとの調整は困難
・エアコンのように簡単に新機種に交換することができない
・稼働音や風が気になる人もいる
・故障時に困る
故障時は冬ならば予備の電気ファンヒーターなどで対応できますが、夏場は外気温以下にはできないので大変そうです(予備のエアコンを設置すればよい?)。サポートがいつまでも続くのかという点も心配ですが、大手の安定したハウスメーカーなら何とかしてくれるでしょう。
いずれの方法にするにせよ、住宅展示場などで納得いくまで確認することが大事です。我が家は全館空調を採用しましたが、吉と出るか凶と出るかはわかりません。
ここではエアコンと全館空調を取り上げましたが、他に、床下エアコンやFF式ストーブを使う方法もあります。一条工務店が採用している全館床暖房については、「エアコン vs. 床暖房」の記事をご覧ください。
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