遮熱材が効くところ、効かないところ

温暖地の住宅では、断熱だけでなく遮熱も大事ということを聞きます。しかし遮熱は万能ではなく、実際には効くところと効かないところがあります。

遮熱の効果はさまざまな条件によって変わるので評価が難しいのですが、遮熱材の宣伝には過剰広告がよく見られます。

ここでは、遮熱について理解を深めるポイントを紹介したいと思います。なるべく簡単な解説を試みましたが、難しいと感じたら適当に読み飛ばしていただき、ポイントだけ確認していただければ幸いです。

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そもそも遮熱とは何か

熱の移動方法は以下の 3 つに分けられます。

熱伝導:物体間の熱移動
対流:流体(空気や水など)による熱移動
熱放射:物体から放射される電磁波を吸収することによる熱移動

遮熱とは、このうちの熱放射に焦点を当てた対策のことです。断熱材が熱伝導に作用するのに対し、遮熱材は熱放射に作用することを意図しているため、しくみが異なります。

たまに遮熱材の効果を「〇〇mmの断熱材相当」と評価している広告を見かけることがありますが、しくみが違うため、断熱効果として評価することは不適切です。遮熱材を導入するからといって断熱材を削減することは、あってはなりません。

光(電磁波)は、透過性のない物体に当たると、その一部を吸収して熱エネルギーに変換し、残りを反射します。この割合は物体によって変わります。遮熱材の多くは、銀ピカの物質などで赤外線などの電磁波を反射するしくみです。

ちなみに光が透過性のある物体(ガラスなど)に当たるときは、一部が透過し、その残りが吸収、反射されます。透過、吸収、反射の合計で 100% になります。

遮熱が確実に効くところ

すべての物体は電磁波を放出していますが、そのエネルギーは物体の熱力学温度(K)の 4 乗に比例します(シュテファン=ボルツマンの法則)。

というと難しそうですが、住宅に最も影響が大きいのは、太陽からの日射熱です。その量は、垂直に受ける面では約 1 kW/m2 にもなります。

そして、住宅を構成する物質のうち、窓には特に高い透過性があるため、透過する日射熱は室内環境に大きく影響します。

そのため、窓周りで日射熱を遮熱することは、確実に効果があるといえます。この効果は、窓ガラスの種類(Low-Eのタイプなど)、窓の内側か外側かによって異なり、その量は季節ごとの太陽高度と方位によっても大きく変わります。

窓周りの日射熱の管理についての詳細は、以下をご覧ください。

日射の管理で実現する省エネ住宅
Low-E ガラスの遮熱はカーテンではなく窓の外で
落葉樹による日射遮蔽はあまり期待できない

遮熱材の効果が限定的なところ

続いて紹介するのは、これ以外の遮熱です。外壁や屋根に塗る遮熱塗料や、内部に使用する遮熱シート、遮熱工法などが有名です。

これらの広告資料を見ると、非常に高い効果があるように感じられます。しかし後述するように、多くの場合、それは錯覚です。赤外線などの熱放射を反射できるのは本当でも、それが実際の住宅の温熱環境に影響するかどうかは別問題だからです。

結論から書くと、これらが効果を発揮するのは断熱材がほとんどない場合が主であり、冬にはデメリットになることすらある、というのが実際のところです。

効果がまったくないわけではないのですが、広告に書かれているほど高い効果があるのなら、どこの住宅会社も標準採用すべきだし、国の基準にするべきです。しかし現実としてそうなっていないのは、コストに見合う効果がないからではないでしょうか。

遮熱シートの本当のところ

遮熱シートとは、壁内通気層の室内側表面や屋根裏に貼る、銀ピカのシートのことです。透湿防水シートに遮熱機能を追加したもののほか、屋根のルーフィング材に遮熱機能を追加したものもあります。

遮熱シートは、たとえばデュポンなどの大企業がタイベックシルバーには効果があるといっているのだから、本当に効果があるような気がします。タイベックシルバーは住友不動産でも使われているし、桧家住宅でもアクアシルバーウォールライトという遮熱シートが使われています。

これらはどんなケースにも効果がないわけではなく、効果があるケースがあったり、一定の効果があることは事実です。しかし実際には、断熱材がしっかりと施された住宅ではほとんど効果はありません。効果が限定的だとしても、「こういうケースには効果がない」という情報は企業からは積極的に発信されません。企業としては、効果があると信じて買ってくれる顧客がいて、売れるから作っているだけなのでしょう。

広告内容と実際

なぜ遮熱シートにそれほどの効果がないといえるのか、広告の内容を注意深く見ていきたいと思います。

赤外線をはね返す?

多くの遮熱シートには、日射エネルギーの多くを占める赤外線を 8 割以上などの高い割合ではね返すと書かれています。太陽の日射熱をはね返しているようなイメージ図もよく添えられています。

しかし、壁や屋根の内側に使用する場合、はね返すのは日射そのものではありません。日射はまず不透明な屋根材や外壁材に当たるため、遮熱シートに届く前に、そのほとんどが既に熱エネルギーに変換されています。

はね返すのは主に、日射熱で高温になった屋根材や外壁材などから二次的に発生する熱放射です。また、はね返した電磁波がどこに行くのかには触れられていませんが、反射された電磁波は大気圏に放出されるわけではありません。実際は、屋根材や外壁材にぶつかってまた熱になっているはずです。屋根材や外壁材は、より効率的に暖まるかもしれません。

遮熱材は、日射が直接当たらない内部に使用する場合、日射が直接当たる場所に使用するときほど大きな効果は期待できません。

小屋裏の温度が下がる?

このような間接的な遮熱でも、効果がないとは言えません。実際、夏の屋根材の温度は非常に高くなることが知られているので、そこからの熱放射も無視できるわけではありません。サーモグラフィーなどで見ると、その差は一目瞭然です。

しかし考えてみると、天井断熱の場合、小屋裏は断熱層の外側であり、外気に通じる空間です。小屋裏には、換気(通気)によって熱を排出するしくみがあるのですから、屋根裏の野地板の温度がどうであれ、室内環境に直接悪影響を及ぼすものではありません。大事なのは、断熱材を越えて伝わってくる熱量の大きさです。

野地板裏面の表面温度が何度か低下するといっても、小屋裏空間の中央部の温度低下はそこまで大きくないでしょうし、小屋裏の温度も断熱材で隔てられているため、室内温度とはまったくの別物です。

また、一時的に温度が下がる時点があるにしても、日平均でみれば大きな温度差にはなりません。小屋裏空間が暑すぎることには問題はありますが、基本的には適切な小屋裏換気によって解消すべきことでしょう。

屋根の遮熱ルーフィングにしても同じことです。実際には屋根材の下に通気層があり、そこで熱が排出される仕組みがあります。

重要なのは、通気層や断熱材がある実際の住宅で、室内環境に対してどれだけの効果があるのか、ということです(後述)。

なお、サーモグラフィーの図はよく見ると、色の違いから受ける印象ほど温度の数値に差がなかったりするので、この点にも注意が必要です。

冬は熱を逃がさない?

遮熱材は室内から屋外へ逃げる熱放射もはね返すので、冬は暖かいと宣伝されています。しかし、室温よりさらに低い壁内の建材から発する熱放射が大きくないことは、シュテファン=ボルツマンの法則を出すまでもなく明白です。

遮熱材に断熱材のような保温効果はありません。遮熱材はむしろ、冬の日射熱のメリットを損なう可能性すらあります(これも断熱材が適切な住宅では大きな影響はないでしょうが)。

遮熱材に保温効果が期待できないことは、㈶建材試験センターの建材試験情報 Vol.47(2011.10)に掲載されている「壁体の断熱・遮熱性能評価について」(明治大学建築学科酒井孝司教授)の p.9 でも確認できます。

実際に効果を測定した結果

重要なのは実際の建物での測定結果です。遮熱材メーカーにも、実際の住宅のデータがあるではないか、と思うかもしれません。しかしよく見ると、実験条件があいまいで、屋根に断熱材が入っていなかったり、低密度なグラスウールが使用されていたりするケースもあります。また、とある時点の一部分の温度だけを見せられても、なんとも評価できません。逆に不都合な結果が出ていて、それが公開されていないだけという可能性もあるからです。

実際の住宅での効果を検討した結果は、次の論文で紹介されています。

青木, 大塚, 永吉, 太田, 近藤:「屋根通気層内表面の低放射率化による遮熱効果の検討」日本建築学会大会学術講演梗概集. D-2, pp.465-466, 2010.7

これは公開されていませんが、タイトルでググれば解説が見つかるので、気になる方はご確認ください。

要点だけ書くと、一定の効果はあるものの、冷房負荷や暖房負荷にはほとんど差が出ないというものです。

夏季、屋根断熱(ネオマフォーム50mm)の小屋裏(断熱層の室内側)において、遮熱シートの有無による温度差は平均で 0.5 ℃ 程度だったそうです。この実験の断熱材は少なめ(高性能グラスウール100mm相当)なので、屋根や天井をきちんと断熱している住宅ではほとんど影響がないといえるでしょう。

ちなみに次世代省エネ基準の仕様基準で木造・温暖地の天井断熱の基準は熱抵抗値で 4.0 以上なので、高性能グラスウールで計算すると 160mm 以上になります(たとえば住友林業では 220mm 厚が標準)。断熱材は遮熱と異なり、冬にも効果が期待できるので、断熱材が足りないなら、そこを増やすほうが費用対効果は高いでしょう。

日射の影響を強く受ける屋根面での効果がこの程度なら、外壁面での効果は言わずもがなです。携帯電波等の影響を考えると、外壁面への採用は私にとってはメリットがあるとは思えません。

ひいき目に見れば、断熱材が効いているところで差がないということは、熱橋部(断熱材がなく熱を通しやすい部分)対策には効果があるかもしれませんが。

通気層や断熱材がある現代の住宅で暑さ対策を考えるなら、建物内部の遮熱にこだわるより、断熱にこだわるべきでしょう。

参考までに、屋根における数々の遮熱策のうち一番効果が高いのは、屋根表面に遮熱塗料(高反射率塗料)を塗る方法のようです。太陽光を直接反射できるので、遮熱としては効率的です。遮熱塗料は高めですし、反射光による「光害」や、汚染による反射率低下といった問題もありますが、断熱材をどうしても厚くできない場合には検討してもよいかもしれません。

なお、遮熱シートを使う場合の注意として、通気層に接するところで使用する必要があります。物体に挟まれたところで使っても、ただ熱伝導するだけなので。

まとめ

そんなわけで、遮熱に確実な効果が期待できるのは、窓まわりだけです。

屋根や壁の内部に使用する遮熱材は、断熱が弱い建物を除き、大きな効果は期待できません。

遮熱材は冬に断熱効果がないことを考えると、まずはしっかりと断熱することが重要です。

参考
屋根の断熱性能が低すぎるという問題を調べてみた結果
大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2019】(各社の屋根・天井断熱の熱抵抗値を掲載)

コメント

  1. あきおじ より:

    新築計画中で、ずっとさとるパパさんのブログは参考にさせて頂いています。
    白鳥様の「教えて断熱さん」コラムと、さとるパパの住宅論はら私の家造りの絶対的な指針になっています。

    メーカー選定で三井ホームも候補に入れたのは、さとるパパが三井ホームなんだから、見ないわけにはいかんだろうとの理由。 外断熱の見積もりまで出してもらい、最後の最後まで迷いました。 結局予算の都合と床面の断熱不安で他所にしましたが。

    さて、今は天井断熱の我が家にタイベックシルバーを施工するかどうかで迷っています。
    十寸屋根で2.5メートル高を確保できるところだけ二階スペースとするので、二階部分の壁の外は小屋裏という形です。
    この場合、天井上と南北壁の外は外気ではなく小屋裏で、夏場はかなり熱を持つはずなので、断熱材自体の温度もかなり上がるのではと危惧しています。 遮熱シートと通気があれば、断熱材の仕事を軽くできるのではと思うのですが、どう思われますか?

    q値からの光熱費計算でも外気温はかなり光熱費に影響するようなので、小屋裏の熱のこもりと屋根からの放射はできるだけ減らしたいと思っています。

    それにしても、どこを見ても遮熱シートはあまり評判よくないですね。
    ただ遮熱の仕組み自体理解していないと思われるものも多いので、遮熱ネタが出てきた今、さとるパパさんのお考えを伺えればとご連絡しました。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。参考にしていただいて恐縮です。三井ホームは知識が足りない頃にデザイン性と高断熱のバランスで仕方なく選んだので、高断熱住宅を突き詰めるならお勧めはできません。

      遮熱シートの効果については記事のとおり(今朝、少し追記しました)、断熱材が十分であれば効果が薄いということになります。私もこれ以上の引き出しはなく、コストもよくわからないのでどうすべきとは申し上げられませんが、私があきおじさんの立場なら、小屋裏に接する壁面と天井面の断熱性能を十分に確保する(熱抵抗値で最低4、できれば5以上?)ことをまず優先し、それができない場合に限り、屋根材による遮熱、続いて遮熱シートによる遮熱を検討するかもしれません。小屋裏が 50 度になると内外温度差は真冬と変わらない程度にはなりますので。

      また、小屋裏換気を適切に行うことも重要かなと思います。これについては住まいの水先案内人さんの解説がわかりやすいのでお勧めです。

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