断熱塗料ガイナの効果は大袈裟?効果の有無をチェックする方法 | さとるパパの住宅論

断熱塗料ガイナの効果は大袈裟?効果の有無をチェックする方法

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外壁塗装について調べていると、断熱塗料ガイナという高価な塗料を勧めている業者が目立ちます。

いわく、高効率な遮熱に加え、断熱機能まであるため、「夏は涼しく冬は暖かくなり、光熱費が安くなる」そうです。塗装会社や建築士などプロと思われる方々も推薦しており、なにやら良さげです。

しかし、あまりにも良い評価ばかりでは逆に心配になりますし、実際は効果がわからないという口コミも散見されます。

そもそも、「断熱塗料」とはいったい何なんでしょうか。これらの疑問について調べてみた結果、断熱効果が実は小さいことと、効果があるかどうかは住宅しだい、ということがわかりました。

勧めている塗装職人や建築士も本当の効果をよく理解していない可能性があるため、このことについて解説したいと思います。

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断熱効果は期待できない

断熱塗料ガイナとは何かというと、中空のセラミックを含む、断熱と遮熱の両方の効果がある塗料だそうです。

この効果について紹介する前に、熱の移動についてかんたんに説明します。

熱移動の基本と、断熱、遮熱の違い

熱の移動は 3 種類に分けられます。熱伝導、熱伝達(対流)、熱放射(輻射)です。

このうち、熱伝導と熱伝達は物質を介して行われる現象であり、これを軽減する対策が断熱です。

熱放射(輻射)は、太陽光のように熱が電磁波として運ばれる現象であり、これを軽減する対策が遮熱です。

このため、遮熱塗料の効果としては、太陽光による熱を反射することで表面温度の上昇を防ぐことができます。夏に嬉しい効果である反面、冬にはデメリットとなる場合もあります。遮熱の効果は、放射率や反射率で表すことができます。

いっぽうの断熱の効果としては、外壁や屋根の表面温度が室内側に及ぼす影響を小さくすることができます。夏にも冬にも効果が期待できるわけです。

断熱効果は熱抵抗値で表せる

断熱の効果は、材料の熱伝導率 [単位:W/(m・K)] が小さいほど、材料が分厚いほど高くなります。

材料の厚みも考慮した断熱効果は、熱貫流率 [単位:W/(㎡・K)] という指標で評価できますが、小さいほど良いというわかりにくい指標です。

そこで、断熱材の評価としては、この逆数の熱抵抗値(R値)[単位:㎡・K/W]がよく利用されます。熱抵抗値は、大きいほど断熱性が高いことを意味します。

たとえば、1980 年築以降の木造住宅の壁では、グラスウール(10K) 50mm という断熱仕様がよくあります。
この場合の熱抵抗値は、1.0 です。

近年義務化が見送られた次世代省エネ基準の壁では、高性能グラスウール(16K) 100mm という仕様が一般的です。長期優良住宅や注文住宅では、これくらいの断熱材が使われていることでしょう。
この場合の熱抵抗値は、2.6 です。

参考までに、高性能グラスウール(16K) の熱伝導率は 0.038 W/㎡・K です。

天井には、壁以上の断熱材を使用するのが一般的です。

関連 熱伝導率と熱抵抗値を計算するツール

断熱塗料ガイナの熱抵抗値は?

それでは、断熱塗料ガイナの熱抵抗値はどのくらいなのでしょうか。

すごい断熱効果を謳っている割になかなか情報が見つからないのですが、こちらによると熱伝導率は 0.03 kcal/m.h.c とのことです。

単位を換算すると、熱伝導率は約 0.035 W/m・K となります。高性能グラスウールと大差ありません。

断熱塗料の厚みは、約 0.4 mm です。

ここから計算される断熱塗料ガイナの熱抵抗値は、0.01 です。

前述の壁の断熱材の熱抵抗値と比べてみてください。

断熱塗料なんて言葉があることに驚きましたが、ガイナに限らず、そもそも、この塗膜の厚さで断熱を期待することに無理があるのです。いくらセラミックの中が真空だとしても、セラミック自体が熱を伝えてしまいます。

ここでは代表例としてガイナを取り上げましたが、断熱塗料を謳っているキルコートクールサームなどにも同様の問題があります。

断熱塗料といっても、その効果はほぼ遮熱のみであることがわかります。

ところで、この遮熱についても、効く住宅と、効かない住宅があることをご存じでしょうか。

遮熱塗料が効くのは低断熱住宅のみ

遮熱塗料で冷房費が安くなる、という広告はよく見かけますが、それはほとんどの場合、屋根に断熱材が使われていない馬小屋や倉庫で行われている実験であることに注意してください。また、冬の暖房費の増加についても一切触れられていません。

以前、「遮熱材が効くところ、効かないところ」という記事で詳述したように、断熱材が効いている住宅において、遮熱の効果はほとんどありません。

たとえ外表面の温度が高くなったとしても、そもそも室内側に伝わる熱がほとんどないからです。この断熱材の有無を考慮しないで断熱塗料の費用対効果を語ることに、意味などありません。

そのうえ、近年の住宅の外壁は、外装材と外壁との間に通気層が設けられているケースが多くあります。主に壁内部の湿気排出のためですが、この通気層にも外表面の温度を室内側に伝えにくくする効果があります。

つまり、1980 年より前の無断熱の住宅ならまだしも、最近の住宅であれば遮熱は効果的でないケースが多いのです。

塗装会社は本来、断熱・遮熱塗料を勧める前に、この断熱との関係をきちんと確認する必要があると思います。

ただ、1980 年以降の住宅でも、住宅によっては断熱材がきちんと機能していなかったり、屋根や天井での断熱材の厚みが不十分であったりすることもあります。

関連 壁・天井(屋根)・床に必要な断熱材の厚みはどの程度か?

どの程度までなら問題ないかは以下記事の情報が参考になるとは思いますが、判断の難しいところでもあります。

日射で暖められた外壁のせいで暑くなる?アルミ遮熱シートは効く?

遮熱効果が期待できるかどうか迷った場合は、次の方法でチェックすることができそうです。

遮熱効果があるかどうかをチェックする方法

遮熱が効きそうかどうかを判断するには、住宅内部が外表面(外壁・屋根)の温度の影響を受けているかどうかをチェックすればわかります。

表面温度は、次のような千円台の放射温度計でも測定することができます。

暑い時期に日射が当たっている屋根の表面温度は60 ℃ を超えることがあります。外壁面も、素材や色によって差はありますが、結構高温になります。
このときに、室内の外気に面さない壁面と、日射面(天井または内壁)の表面温度を測定し、比較してみればよいのです。

この温度差が大きくなければ、遮熱を行う意味はありません。私も次の夏に測定し、結果を公表しようと思っています。

追記:屋根の断熱材は 140mm で足りない?猛暑日に測定した結果…

夏が来るまで待てないという方は、冬でも多少のことはわかります。夏の屋根表面と室温の温度差が 40 ℃ だとしたら、冬の明け方の温度差も 20 ℃くらいあったりします。冬に天井面が室内の壁面(×外気側)より冷えていたら、断熱が効いていないということなので、夏は日射熱の影響も受けやすいことが予想されます。

まあ、そんなことをしなくても、夏の 2 階の住み心地を思い出せば答えは出るかもしれませんが。

遮熱塗料はお勧めか?

上記の点を考慮したうえで、夏に遮熱塗料の効果が期待できそうな住宅(≒日射面の断熱が弱い住宅)であれば、日射熱反射率が高い遮熱塗料を採用するのもよいかもしれません。ガイナでも、そのほかの遮熱塗料でもかまいません。

ただし、汚れると効果が落ちる可能性があることと、日射熱による冬の暖かさも期待できなくなることにはご注意ください。反射率の経年変化が数値として公表されている塗料もあります。

なお、近年では、断熱・遮熱塗料を使用した外壁塗装に対して、自治体から補助金や助成金が受けられるケースがあります。

遮熱塗料の効果が期待できないとしても、塗装の追加費用より受けられる補助金のほうが大きいなら、補助金目当てで断熱・遮熱塗料を選択するのも得策かもしれません。

自治体が断熱レベルと無関係に遮熱リフォームに補助金を出すことは、納税者としては不満ですが。。

ちなみに外壁塗装を安く済ます方法として、この頃、火災保険の活用が注目されています。台風や大雨による軽い被害でも火災保険の対象となり、外壁塗装代に充てることができるケースもあるようなので、気になる方は調べてみてください。

高価な塗料が勧められる理由

実際にメリットがあるかどうかは微妙なのに、さまざまなところで無条件に高価な断熱・遮熱塗料が勧められているのはなぜなのでしょうか。

上記のような事実を把握していないがために、消費者にメリットがあると本気で考えている善意の塗装業者もいることでしょう。そういう方は、この記事を読んで再考していただければ幸いです。

いっぽうで、工事費を高くできることで利益が増える業者もたくさん存在します。たとえば外壁塗装業者を紹介する会社の場合、工事費が高くなれば比例して受け取る紹介料も大きくなるのかもしれません。

この外壁塗装紹介業の実態については、以下の記事をご覧ください。

外壁塗装はどこに頼む?【一括見積サイトの裏事情】

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