多くの住宅で加湿器を効果的に使うことができない2つの理由

感染症対策などで加湿が大事だとよく言われていますが、加湿器をうまく活用することは、住宅によっては、とても難しいことだと思います。
この記事では、多くの住宅で加湿器を活かせない理由についてまとめてみました。

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湿度40%以上でも不十分?

まず最初にはっきりさせておきたいのは、必要な湿度はどの程度かという問題です。

こちらの記事で紹介した論文によると、インフルエンザウイルスの不活性化のしやすさは、相対湿度(%)ではなく絶対湿度に依存するそうです。

絶対湿度とは、一定の空気中に含まれる水分の質量のことで、容積比で考える場合の単位は g/m3 です。

インフルエンザウイルスの 6 時間後生存率は、絶対湿度 8.9 g/m3 以上で 5% 以下となり、6.8 g/m3 で 17% になるというデータもあります。

大雑把にまとめると、感染症対策になる絶対湿度は 8 g/m3 以上くらいでしょう(20℃で相対湿度 50% 程度)。

この水準を、乾燥期に飛沫(核)感染するウイルス全般に当てはまると見なすのは単純化しすぎかもしれません。
が、インフルエンザ感染対策だけでも重要なので、ここでは絶対湿度 8 g/m3 を基準とし、室内空気の湿度を考えていきたいと思います。

なお、絶対湿度には、容積絶対湿度(g/m3)と重量絶対湿度(g/kg(DA))の 2 種類があります。
容積絶対湿度 8 g/m3 は、だいたい重量絶対湿度で 7 g/kg(DA) ほどに相当します。
関連 温度と相対湿度から(容積・重量)絶対湿度を計算するツール

とはいえ、湿度は%単位の相対湿度が一般的です。
実感がわきにくいかもしれないので、絶対湿度 8 g/m3 とは、どのような状態なのかを補足しておきたいと思います。

次の図は、気温と絶対湿度の関係を示したグラフです。

赤線は、感染症対策の基準となる絶対湿度 8 g/m3 のラインです。

青色の曲線は相対湿度 100% のときの絶対湿度を示し、気温が高いほど絶対湿度は大きくなっています。

%表記の相対湿度とは、その温度における飽和水蒸気量に対する絶対湿度の割合のことです。
たとえば、20℃のときに赤線は青線の約半分なので、相対湿度は 50% くらいということがわかります。

よく相対湿度 40%以上などという目安が示されますが、これは温度に依存します。
23 ℃以上の空気であれば絶対湿度 8 g/m3 を超えますが、10 ℃なら絶対湿度は 3.8 g/m3 となり、全然足りません(実際、相対湿度が高くても温度が低い条件ではインフルエンザウイルスは不活化しません)。

絶対湿度を一定以上に保つには、空気がそれなりに暖かいことが要求されるということです。

前置きが長くなってしまいましたが、ここから、多くの住宅で加湿器が効果を発揮できない理由を述べたいと思います。

理由1:高断熱窓が一般的でない

多くの住宅が抱えている一番の問題は、窓の断熱性能が低すぎることです。
窓は住宅のなかで最も熱を通しやすい部位です。
この窓の断熱性能が低いと、暖房が効きにくく、室温が下がります。

暖房が弱く、室温が低い場合、相対湿度はともかく、絶対湿度 8 g/m3 を超えることが困難なのは、前出のグラフを見れば明らかです(室温が 7 ℃以下では物理的に不可能)。

では、石油ストーブなどで強力な暖房を行ったとしたらどうでしょうか。
暖かくはなりますが、しかし、窓辺はなかなか暖まりません。
加湿して絶対湿度を 8 g/m3 まで上げたとしても、窓のサッシなどの温度が 7 ℃以下になっていれば、局所的に相対湿度は 100% を超え、結露が発生してしまいます。
窓の結露がいろいろと厄介なのは言うまでもありません。

このように、窓の断熱性能が低いと、加湿すればするほど結露が多く発生し、窓で除湿されることが問題なのです。

除湿しながら加湿するのではイタチごっこであり、効率的ではありません。単板ガラスの住宅は特にそうです。

結露は窓の断熱性能が高いほど発生しにくくなります。
絶対湿度を 8 g/m3 以上にしたいなら、サッシ表面が最低でも 8℃以上になる断熱性能が要求されます。
ただ、この水準は、最近の新築住宅でようやく当たり前になってきた、アルミサッシの複層ガラスでも困難です。

断熱性能の高い、樹脂サッシの複層ガラスやトリプルガラスが温暖地でも重宝されるのは、それが過剰な贅沢品ではなく、必要性があるからだと思います。

そうはいっても、上記の説明だけでは納得いかないという方もいらっしゃるかもしれません。
「うちは加湿器を使っているけど結露は起きてないぞ」、と。

それには、次の理由が考えられます。

理由2:換気量が多すぎる

近年、加湿器の販売シェアで 1 位を取り続けているダイニチのホームページに、「必要加湿量計算フォーム」というツールが提供されています。

この必要加湿量の計算式を見てみると、室内外の絶対湿度の差に対し、換気回数が乗じられています。

換気回数とは、1 時間に部屋の空気が入れ替わる回数のことです。
このフォームでは木造 1 回/h とされていますが、「建物の構造により大幅に変動」するとも説明されています。

要するに、換気量が倍になれば、必要加湿量もほぼ倍になる(=加湿の効果が半減する)わけです。

住宅に必要とされる換気回数は、0.5 回/h です。しかし、住宅のすき間が多い(=気密性が良くない)住宅では、自然に発生する換気だけで換気回数は 1.5 回/h 前後にもなります。

詳細 低気密・中気密は何がどう問題なのか

近年の省エネ基準を満たす住宅は 0.5 回/h 程度の住宅も多くなっていると思いますが、20世紀に建てられた戸建て住宅のほとんどは 1.5 回/h 前後の自然換気が発生しているのではないかと思います。そう考えると、ダイニチ推定の換気回数 1 回/h は平均的です。

高気密住宅と、そうでない住宅の差は 3 倍です。気密性の低い住宅では加湿器の効果が三分の一になるということです。

よくある木造住宅で、加湿しても窓で結露が発生しないのは、換気が良すぎて加湿が足りず、室内の湿度が上がっていないからかもしれません。

こういう環境で乾燥が気になるときは、こまめに水分を摂取し、のど飴をなめたりするのが一番かもしれません。

布団にもぐったり、マスクを装着するのもよいですが、呼気を再度吸うことになるため換気不足にもご注意ください。

私の体験談

こんな記事を書いている私も、昔はよく考えずにマンション(高気密)で冬に加湿器を多用していました。
スチーム式の加湿器をガンガン使い、少しはマシになった気でいましたが、実際の効果はよくわかりません。

窓の結露が毎朝ひどかったことはよく覚えていますが、それが加湿器のせいだとか、意味が無いのではないかとかは考えませんでした。
アルミサッシには黒カビが発生し、本棚の本や家具の裏、壁紙にもカビが発生していました。
加湿器を使わない実家のマンションもカビが生えていたので、それが普通のことだと思っていました。

樹脂サッシのペアガラスの住宅に移り住んでからというもの、湿度を意識し、絶対湿度を 8 g/m3 以上にしていますが、窓の結露はずっと少なく、居室にカビが生える気がしません。

窓は大事だな、と改めて思います。

関連 ペアガラスの結露の発生量を実際の画像で比較する

なお、以前のマンションでスチーム式の加湿器を使用していたのは、気化式の加湿器では寒かったからです。
本当は気化式の加湿器のほうが省エネで効率的なのですが、当時は知りませんでした。

詳細 気化式加湿器は寒い… が、それで良い理由【気化熱と消費電力】

加湿器の売れ筋ランキングを見ると、現在も人気モデルはスチーム式や加温ハイブリッド式が中心です。
もしかしたら、以前の私と同様、低い室温で寒くならずに加湿できる加湿器を選ぶ人が多いのかもしれません。

高断熱・高気密の住宅が当たり前になればよいのに、とつくづく思います。

P.S. 私のお気に入りののど飴は、カンロのボイスケアのど飴です。
味と効果のバランスがちょうど良い感じです。

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