気化式加湿器は寒い… が、それで良い理由【気化熱と消費電力】 | さとるパパの住宅論

気化式加湿器は寒い… が、それで良い理由【気化熱と消費電力】

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気化式の加湿器は消費電力が低くお勧めですが、吹き出す風が冷たいというデメリットがあります。
気化式加湿器で定評あるパナソニックの説明ページにも、「吹き出し口の温度は室温より低くなります」と小さな文字で書かれています。

水が気化する際には気化熱が奪われるため、室温が下がるというのは事実です。
そうであるなら、寒くならない温風気化式(ハイブリッド式)や、スチーム式の加湿器のほうが魅力的に感じるかもしれません。

しかし私は、特に高断熱住宅の加湿器としては、やはり気化式がベターと考えます。

その理由について、気化熱と消費電力を試算し、検討してみたいと思います。

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気化熱の量はどのくらいか?

水が気化する際に奪われる熱量はどのくらいでしょうか。

Wikipedia の「蒸発熱」の説明には、以下の記述があります。

同じ液体でも気化する温度が高くなると、蒸発熱は小さくなる。例えば 25 ℃ の水の蒸発熱 44.0 kJ/mol は、100 ℃ では1割近く減少して 40.6 kJ/mol となる。

気化熱(蒸発熱)は水温によって変わるものの、大きな差はなく、室温で約 44 kJ/mol とのこと。
H2O 1 mol の分子量は 18 g なので、1 L に換算すると約 2400 kJ です。

加湿器の加湿量が 500 mL/h なら、気化熱は約 1200 kJ/h であり、換算すると 330 W になります。

よくある電気ヒーターが約 1000 W であり、6畳用エアコンの暖房能力が 2.2 kW = 2200 W であることを考えると、決して大きくはありませんが、無視もできないくらいの熱量です。

見方を変えると、加湿しつつ部屋の温度を一定に保つには、暖房負荷が 330W 増えるということでもあります。

ほかのタイプの加湿器はどうか?

気化式加湿器は本当に冷える、ということがわかりましたが、他のタイプの加湿器はどうなのでしょうか。

スチーム式(加熱式)加湿器の気化熱

スチーム式加湿器は沸騰させるタイプなので蒸気が高温になりますが、これも気化という現象は同じため、気化熱は奪われます。

加湿量 500 mL/h ほどのスチーム式加湿器では、沸騰後の消費電力が 400 W ほどなので、部屋全体での熱収支は少しだけプラスになるでしょう。実際、使っているとほんのわずかに暖かい気がします。

超音波式加湿器の気化熱

超音波式は水を細かくして噴出しているだけなので、すべてが気化しているとは限りません。
乾燥した暖かい部屋ではほとんどが気化し、その際に気化熱が奪われていると思われますが、寒い部屋や、すでに湿度が高い部屋では気化せずに周囲を濡らすことになり、その分は気化熱による室温低下は生じません。

気化式をエアコンと併用するのが省エネ

気化式で寒くなるのは嫌ですが、室温を下げずに加湿するにはどうすればよいのでしょうか。

加湿器だけで考えるなら、ヒーターで暖めて加湿する、スチーム式や温風気化式(ハイブリッド式)を選ぶしかありません。

しかし、これらは消費電力が高めで、加湿量 500 mL/h ほどで比べると、スチーム式は 400W~、温風気化式は 160W ほどになります。温風気化式は一見室温を下げなそうですが、消費電力と気化熱の差の分、室温は下がっているはずです。

一方、気化式の加湿量は環境により左右されるものの、加湿量 500 mL/h ほどで消費電力はわずか 8W とかのレベルです。

気化式の気化熱による熱損失を電気ヒーターで補おうとすると、消費電力は 330W 必要なので、合計消費電力は 338W となり、スチーム式と大して変わりません。

しかしここで、エアコン暖房を併用するとどうでしょう。

例えば、暖房エネルギー消費効率(COP)が 4.0 のエアコンで 330W の暖房を行うと、消費電力は 330 ÷ 4.0 = 83 W です。
気化式加湿器とエアコンの消費電力はトータルで 91 W となり、だいぶ低コストです(一番低コストなのは、加湿器を使用しないで湿度を保つことですが)。

エアコンのない狭い部屋ではスチーム式が便利ですが、大空間を加湿する場合は気化式加湿器を冷風が気にならない場所に置き、エアコン暖房と併用するのがお勧めです。

そういうわけで、気化式加湿器は一見超低コストに見えて、室温低下を招くというデメリットもあるけれど、エアコン暖房と併用すればまだまだ低コストである、というお話でした。

なお、このように、電気ヒーターの使用を極力減らし、代わりにエアコンやエコキュートなどの高効率なヒートポンプ設備で熱を発生させるという方法は、いろいろと応用の利く節電の極意です。

電気ヒーターは、よく見るとさまざまなところで使用されています(オイルヒーター、セラミックヒーター、ハロゲンヒーター、ホットカーペット、暖房便座、浴室暖房、電気温水器、加熱式・温風気化式加湿器など)。

わが家は別に節電できているわけではありませんが、なるべく節電を心がけ、上記のヒーターは一切使用しないようにしています。

温風気化式(ハイブリッド式)加湿器の多くの機種は、ヒーターOFFにすると気化式加湿器として使用することができます(参考記事)。

参考 高断熱住宅に向く加湿器の選び方

コメント

  1. ヒトマ より:

    まさか自分のコメントから1つ記事を書いていただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。気化式加湿器は非常に低消費電力なので、幾ら気化熱で室温低下を招いても、スチーム式より省エネとは思っていましたが、実際そうなんですね。自分は当初、LDKのワークスペースの近くに気化式加湿器を置いていましたが冷気を感じるので、一番風を感じにくいところに移動させて使っています。

    • さとるパパ より:

      気化式加湿器で暖房負荷が上がることは松尾先生の著書で知りましたが、実際どの程度かは知らなかったので良い機会と思い計算してみました。ありがとうございます。
      温度低下と風で冷たいのは事実なのでスチーム式や温風気化式のほうが売れ筋な印象ですが、使い方を工夫して活用する人が増えればいいなと思っております。

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