冷暖房なしの内外温度差を表す自然温度差について考えていたら、湿度についても似たようなことが考えられることに気づきました。
室内は常に水分の発生源であり、その湿度は換気によって排出されますが、空調(冷房や除湿)を使わない場合、室内の湿度は外気の湿度よりも一定程度高くなるはずです。もちろんこれは相対湿度(%)ではなく、絶対湿度(g/㎥)の話です。
そこでこの、空調を利用しない自然状態での内外絶対湿度差を「自然絶対湿度差」と呼ぶこととし、これについて考えてみたいと思います。勝手に用語を作りましたが、すでに同じ意味の言葉があったら教えてください。
ちなみに、エアコン暖房は絶対湿度に影響しません。
自然絶対湿度差の計算式
自然絶対湿度差はどのくらいだろう、どうしたら計算できるだろうと考えていると、ある時、おぼろげながら浮かんできたんです。次式のシルエットが。(進次郎風)
自然絶対湿度差[g/㎥] = 生活放湿量[g/㎥h] ÷ 換気回数[回/h]
ここで、生活放湿量とは室内空気 1 立方メートルあたり・ 1 時間あたりの水分発生量のことで、次式などで計算できます。
生活放湿量[g/㎥h] = 1日に発生する水分量[g] ÷ 気積[㎥] ÷ 24 [h]
気積は、床面積[㎥] に天井高[m] をかけた値です。
自然絶対湿度差の計算例
『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』p.224 によると、4 人家族の生活(呼吸・炊事・入浴・洗濯乾燥)で 1 日に発生する水分は合計 9.4L だそうです(この内、最大は人体からの 4L)。
仮に床面積を 100㎡、天井高を 2.3 m とすると、気積は 230 ㎥ となり、生活放湿量は 1.7 [g/㎥h] となります。
換気回数が 0.5 回/h なら、自然絶対湿度差は 3.4 g/㎥ です。
自然絶対湿度差からわかること
上記の例の住宅で自然絶対湿度差が 3.4 g/㎥ だったことから、この住宅内の絶対湿度は、外気の絶対湿度よりも 3.4 g/㎥ ほど高いことが推測されます。
実際には生活での放湿量や換気量は一定ではないので増減があるし、調湿を行う建材もあるためアバウトな数字ですが、平均的には大体このような湿度になるのでしょう。
絶対湿度差 3.4 g/㎥ とはどのくらいかというと、室温 20 ℃の相対湿度で約 20% 分に相当し、結構な量になります。
この自然絶対湿度差の計算式からは、次のことがわかります。
- 発生する水分量が同じ場合、住宅が大きいほど自然絶対湿度差は小さくなる
- 換気回数が多いほど自然絶対湿度差は小さくなる
つまり、コンパクトで換気回数が少ない住宅ほど乾燥しにくいということがわかります。
もちろん、自然絶対湿度差は大きいほどよいわけではありません。大きい場合は冬に加湿器が不要になるかもしれませんが、風を通しても暑い時期は常にエアコンを稼働させないと高湿度に悩まされやすくなるかもしれません。
実際、いくつかの時点で室内外の絶対湿度を調査してみたところ、絶対湿度差は 1.3~4 g/㎥ で、ばらつきはあるものの中央値は 2 g/㎥ 台くらいでした。測定した起きている時間帯は発生水分量も多いので、なかなか妥当な感じがします。
自然絶対湿度差がわかると、外気の絶対湿度にこれを足すことにより、乾燥や湿気過剰が問題になる時期の目安がわかります。
一例として、東京の年間の絶対湿度(移動平均)を以下に掲載します。
快適な絶対湿度は、10~15 g/㎥ くらいなので、わが家もそろそろ加湿器を使用する時期のようです。
実はこんな計算しなくても、絶対湿度がわかる温湿度計があれば、時々チェックするだけでわかることなのですが。。
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