高断熱住宅における湿度管理の理想と現実【加湿器は必要か?】 | さとるパパの住宅論

高断熱住宅における湿度管理の理想と現実【加湿器は必要か?】

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わが家は全熱交換型第一種換気を含む全館空調システム(加湿機能付き)を採用しており、乾燥する太平洋側の冬でもそれなりに快適な湿度(冬は概ね 40~55% 程度)を維持することができています。

しかしこれは本当に、高価な換気システムのおかげなのでしょうか?

そこで今回は、一番乾燥する時期の実際の温湿度や換気量から、その水分収支の内訳を考えてみることにしました。

この冬、一番乾燥する時期に湿度をなんとなくチェックしていたところ、室温 23 ℃のときの相対湿度が 34% になっていました。このとき、補助的に Panasonic 気化式加湿器(の旧バージョン)も使っています。

本当は加湿器のタンクが空になっていて湿度 30% くらいになっていることもあるのですが、これは例外とし、この家が一番乾燥していた時点での空気の状態について検討してみます。

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わが家の乾燥期の水分収支

わが家が乾燥していたのは、2 月のよく晴れた日の夕方、外気は気温 3.8 ℃、相対湿度 33% でした(絶対湿度 2.1 g/㎥)。このときの室内は、室温 23 ℃、相対湿度 34% でした(絶対湿度 7.0 g/㎥)。

換気の条件は、こちらのページに書いたとおりです。この両方の条件の数値から、絶対湿度への換算ツールで水分量に変換してみると、わが家の室内空気の 1 時間あたりの水収支は次のようになりました。

数値を出すともっともらしく見えますが、以下の補足を読めばわかるように、テキトーな計算です。

なお、これらの数値は一定ではありません。室内の絶対湿度が高いほど、換気による排出量は増え、加湿器等による給水量は減ります。反対に、室内が乾燥していれば、換気による排出量は減り、加湿器等による給水量は増えます。つまり、部屋の湿度が高いときは乾燥しやすくなり、湿度が低いときは上がりやすくなります。部屋の湿度はこの釣り合いなので、室内の湿度が安定しているときは給水量と排水量がほぼ等しいはずです。

*1:換気システムの湿度交換率はわからなかったので約 70% としました(一条工務店の高性能換気システム・ロスガードで 82% とあり、それより劣ると思うので)。

*2:西方先生の著書『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』p.224 によると、4人家族の生活で一日に 9.4L の水蒸気が出るそうなので、1時間あたりの平均は 392g です。乾燥していたこの時間は炊飯・入浴の前で室内干しの洗濯物が乾ききっていた時間なので、仮に 250g としました。

*3:加湿器の約 4 L のタンクが早いときで半日で空になることから約 300g としました。

*4:全館空調の加湿量はさっぱりわからないので、給水量=排水量となるように数値を設定しました。加湿器より少し強力なので、このくらいな気がします。

なお、ここでは気密性能が高くないことによる自然換気量は考慮していません。

この計算では、換気関係(上から3行)に限定した水分収支は -957g と大幅にマイナスになっています。生活で発生する水蒸気や加湿器などにより相対湿度 34 % で持ちこたえていますが、相対湿度 40% 以上を目指すのであれば、もっと強力な加湿が必要になります。

理想的な換気の水分収支

上記の数値は問題だらけのわが家の換気計画から計算しているので、あまり参考にならないかもしれません。

そこで今度は、理想的な換気が行われる場合の室内空気の水収支について考えてみることにします。

条件は次のとおりです。

床面積:100 ㎡
気積:230 ㎥(平均天井高 2.3 m として)
換気量:115 ㎥/h(換気回数が毎時 0.5 回として)
外気条件:温度3.8℃、湿度33%(上の乾燥期の条件と同じ)
室内空気:温度23℃、湿度40%(わが家より高めの水準)
換気:第三種換気(換気に伴う水分の再回収はなし)

この条件で同様に計算すると、水収支は次のようになります。

この計算では、換気関係に限定した水分収支は -717g であり、湿気を再回収できるにもかかわらず乾燥していたわが家の場合(-957g)よりもマイナス幅が小さくなっています。

生活で発生する水蒸気量(人体・炊事・入浴・洗濯乾燥)で相殺すると、水収支を合わせるため(=湿度40% を維持するため)に必要な加湿量は 1 時間に 325g です。

生活で発生する水蒸気は 4 人家族の平均的な数値であり、暮らし方や時間帯によって増減はあると思いますが、この程度の必要加湿量ならば家庭用の加湿器で賄うことができそうです。しかもこれはピーク時なので、ときどき乾燥してもかまわないというのなら、加湿器を使わずに部屋干しなどで生活上の水蒸気を増やすだけでも大して問題にならない気がします。

この計算は第三種換気を想定しましたが、全熱交換型第一種換気であれば、70% の湿度交換率で一時間に約 500g の加湿効果が期待できます。局所換気の量が大きくなければ 40% より高い湿度で安定することになり、加湿器がなくても乾燥が防げそうです。

全熱交換換気で乾燥するのはおかしい?

三井ホームで全館空調「スマートブリーズプラスII」を導入する際に聞いた話では、全館空調で乾燥するという声が多いので加湿機能が追加されたが、それでも不十分(追加の加湿器が必要)、とのことでした。つまり、わが家で起こっていることは三井ホームの同システムの家庭では一般的なことなのでしょう。

しかし、2 つ目で計算したように、換気量が適切で、局所換気の影響が小さい場合、全熱交換型第一種換気で乾燥が激しいというのはおかしな話です。これはやはり、1 つ目の計算のように、局所換気の影響が実際には大きく、熱交換(および湿度交換)される空気の割合が大きくないことが影響しているのではないでしょうか。計算には含めませんでしたが、気密性能に比例する漏気も影響しているかもしれません。

そんなわけで、今回の結果をまとめると以下のようになります。

  • 高気密・高断熱住宅で換気計画が適切であれば、第三種換気でも加湿器で対応可能
  • 高気密・高断熱住宅で換気計画が適切であれば、全熱交換型第一種換気なら加湿器も不要そう
  • 全熱交換型換気はただ採用するだけでは不十分で、局所換気を含めた換気計画と高気密が大事

室温が高いほど乾燥する

なお、普段暮らしていて湿度が低いと驚くときは、室温も高くなっていることがあります。この場合、室温を下げると乾燥も和らぎます。

これは、絶対湿度で考えるとよくわかります。たとえば 23℃、34% の重量絶対湿度は 5.9 g/kgDA ですが、この水分量で室温が 25℃に上がると相対湿度は 30% に下がり、より激しい乾燥が感じられます。

反対に、同じ水分量でも室温を 20℃に下げれば相対湿度は 41% まで上がります。

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ついでに、気化式加湿器を使っていて臭いが気になる場合、フィルターに対してワイドマジックリン 台所用洗剤を使用するのがお勧めです。加湿器メーカーのダイニチも加湿器のお手入れ方法として紹介しており、わが家でもクエン酸と使い分けています。

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