H25省エネ基準の最高等級4で高断熱住宅と言えるか | さとるパパの住宅論

H25省エネ基準の最高等級4で高断熱住宅と言えるか

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平成25年改正省エネルギー基準(次世代省エネルギー基準)というものがあります。この基準を満たすと、断熱等性能等級 4 (最高等級)に認定され、省エネ住宅であるというお墨付きを得ることができます。最高等級と表示されていると、ふつうは高性能な住宅なんだと思いますが、実際のところ、この断熱性能のレベルはどの程度なのでしょうか。この基準のうち、外皮の熱性能の基準を満たす方法には、計算により算出する「性能基準」と、仕様を満たすことで合格とする「仕様基準」があります。ここでは、性能基準で定められている UA 値(外皮平均熱貫流率)の数値について解説します。UA 値の詳細については、「断熱性能を示すQ値とUA値の違いと注意点」 を参照してください。

この H25 省エネ基準の基準値は、地域によって異なります。たとえば、関東以西の温暖地では、UA 値が 0.87 以下という基準が設定されています。ちなみに、この H25 省エネ基準の以前には、H11 年の省エネルギー基準というものがありました。このときの断熱性能の評価には Q 値(熱損失係数)が使用され、UA 値ではありませんでした。その数値はというと、関東以西で 2.7 以下です。これは UA 値の 0.87 に相当する断熱レベルです。つまり、要求される断熱性能のレベルは、H11 年から変わっていないのです。

それでは、この UA 値 0.87(Q 値 2.7 相当 )という数値の断熱性能で、高断熱住宅のメリットは得られるのでしょうか。Q 値は冷暖房費用におおよそ比例するため、Q 値 5 前後の昔の住宅に比べればマシとは言えます。しかし、「家計にも身体にも優しい高断熱・高気密住宅」で紹介したような高断熱住宅のメリットが得られるかというと疑問です。近畿大学の岩前教授の調査(外部リンク:「高断熱が健康を守る」)では、転居先の断熱性能が高ければ高いほど冷え性やアレルギー疾患が改善するというデータがあります。この Q 値を見ると、Q 値 4.2 と 2.7 のレベルでは改善率に差がなく、Q 値 1.9 で大きな改善がみられることがわかります。Q 値 4.2 と 2.7 で同程度の改善がみられるのは、清潔な新しい住宅に引っ越すことによる改善であると推定されます。そのため、高断熱住宅の本当のメリットが得られるのは Q 値 1.9 からであるということがわかります。Q 値 1.9 は、UA 値に換算すると 0.56 程度になります。

Q 値 1.9(UA 値 0.56 相当)以下になると具体的に何が変わるのかというと、住宅内の温度差が小さくなります。つまり、冷暖房をつけたときなどに、身体はちょうどよいのに足だけ冷える、ということがなくなります。これがあるのとないのとでは、快適さに大きな差があります。

うれしいことに、近年、ハウスメーカーの多くはこのレベルの断熱性能を標準仕様にするようになってきています(参考:「大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2017】」)。 2015 年に ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、「ゼッチ」と読む)の支援事業が創設され、この外皮基準が UA 値 0.6 以下(関東以西)となっているためです。 ZEH の認定を受けるかどうかは別として、「ZEH レベルなら高断熱住宅のメリットが得られる」ということは覚えておいてください。

しかしながら、理想は Q 値 1 前半です。Q 値が 1.6(UA 値 0.56)になると、エアコンの連続運転を行っても間欠運転と電気代が変わらなくなるため、エアコンで24時間の全館冷暖房を行うことで非常に快適な室内環境が得られるようになるからです。

H25 省エネ基準に話を戻すと、H25 年度において、この基準を満たす外皮性能の住宅は全新築戸数の約 6 割だったそうです。大手ハウスメーカーはほとんどこの基準を満たしていますが、小さな工務店などでは基準を満たしていない住宅も多いようです。それにしても、過半数の住宅が満たす性能が最高等級、というのはずいぶん甘い基準だと思います。2020 年を目途にすべての新築建築物に対してこの基準を義務付ける方針のようなので、これから家を建てる人にとって、H25 省エネ基準は最低基準として考えるべきものです。また、この基準には、断熱性能を発揮するために必要となる、気密性能に関する性能基準がないという問題もあります。消費者がより簡単に断熱性能を比べられるように、より厳しい評価基準を定めてほしいものです(大手ハウスメーカーが国交省住宅局の天下りを受け入れている関係で難しいと思いますが)。

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