高断熱住宅で暖冷房費がかからないという話の注意点

断熱性能が高ければ高いほど暖冷房費がかからないという話があります。高断熱住宅の関係者はほとんど言っていることだと思いますが、これには注意が必要です。当サイトでもさんざん書いた後に気づいたことなので今さらで申し訳ございませんが、その注意事項について書いておきたいと思います。

かんたんに言えば「快適性重視と省エネ重視の 2 タイプの高断熱住宅」でも紹介したように、暖房費が半分などというのは暖房などをあまり使わない生活をした場合の話である、ということです。

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連続暖房か間欠暖房か

暖房や冷房の使い方が同じ場合、高断熱ほど暖冷房費が安いというのは本当です。しかし、暖房を連続運転する場合と、在宅時のみ間欠的に暖房する場合とでは、事情がまったく異なります。

注意が必要なのは、国や HEAT20 の基準では、寒冷地でのみ連続運転、温暖地では間欠運転が前提として設計されているという違いです。

たとえば HEAT20 では、3~7 地域において、LDK で毎日 13時間以上、子ども部屋と主寝室でも毎日 3 時間以上暖房することを前提としてします。この暖房時間が実態に即しているかどうかも疑問ですが、このような間欠運転を行った場合、省エネ基準レベルの住宅(温暖地で UA=0.87)では体感温度が 10 度を下回るところも発生します。

HEAT20 G2 レベル(温暖地で UA=0.46)にアップグレードした家でも、15 度未満になるエリアが 15% ほど生じると推定されています。いっぽう、連続運転を前提としている寒冷地では、省エネ基準レベルでも 15 度未満になるエリアは 4 % 程度しかありません。

つまり、温暖地の人は、寒冷地の人よりも寒さをガマンする生活をすることが前提となっているのです。温暖地で連続暖房にすれば(エネルギー消費は増えても)ずっと快適になるのに、それはまったく想定されていません。

温暖地の高断熱住宅に住む人が生活スタイルを変えず、これまでどおり各部屋にエアコンを付けて必要に応じて使用するだけならば、省エネは実現します。実際、国は H11 の次世代省エネ基準レベル(= H25,H28 省エネ基準レベル)でも住宅部門の省エネが実現できると計算しています。

しかし、温暖地の人が連続暖房でずっと快適になると気づき、多くの人がその生活を目指したとしたら、結果はまったく変わってしまいます。ひょっとしたら、当サイトのように温暖地での連続暖房をそそのかす輩は、反社会的な存在と見なされているかもしれません。

全室暖房にも 2 タイプある

また、一口に全室暖房といっても、方法は一つではありません。私は 24 時間全部屋を同じ室温(23 ℃とか)に保つことだと思っていましたが、これは最も暖房費がかかる贅沢な方法のようです。

たとえば全室暖房でも暖房費が半分になるとして提唱されている新住協の Q1.0住宅(キューワン、温暖地では Q=1.0 ではない)では、温暖地でこのような暖房方式を想定していません。

代表理事の鎌田先生の著書『本音のエコハウス』で初めて知ったのですが、生活時間帯は暖房で 20 ℃を維持し、就寝時は暖房を止めて朝は 15 ℃くらいまで下がることを想定しています。家全体の平均温度としては 18 ℃くらいだそうで、すべて平均 20 度にする場合には 10~20% 暖房費が増えるそうです。

24 時間暖かくすると省エネにならない?

暖房費推計ツールで試算してみると、Q1.0 住宅の平均 18℃ を 20℃ に上げると暖房費は +16%、23 ℃ に上げると +39% にもなります。

Q1.0 住宅で暖房費が「省エネ基準の半分」になるといっても、省エネ基準の暖房費シミュレーションが実態に即しているかは疑問(温暖地ではもっと節約している住宅が多い?)もあるので、全部屋を 24 時間一定に保つ場合、実際にはほとんど省エネにならないのではないかと思います。

どちらのタイプが望ましいか

全室暖房でも、深夜に暖房を止めるのであれば、上記 HEAT20 の温暖地における間欠運転と大きな差がないようにも感じられます。就寝時の室温が低いことは良好な睡眠にはよいですが、内外温度差が大きい深夜に暖房を止めると朝方の床面はやや冷えるでしょうし、朝の暖房負荷も一時的に高くなることが予想されます。省エネ基準レベルの住宅で部分間欠運転を行う場合よりはずっと快適だと思いますが、全館空調の贅沢な使い方に慣れた身としては、ちょっとどうかと思うところです。

しかしながら、スウェーデンハウスの宿泊体験でも、夜寝る前には冷暖房を切ることが提案されています。

また、暖房費推計ツールで設定温度を下げずに暖房費を最大で月 1 万円程度(おそらく年間暖房費が 4 万円ちょっとで、一般の戸建住宅相当?)にする方法をいろいろ試算してみると、Q 値が 1.0 くらいのかなりの高断熱が必要という結果になり(地域などによります)、これには大きな初期費用がかかってしまいます。

そこで思ったのは、最大限の快適性を追求するだけでなく、暖房費や省エネを考えると、平均 18 ℃ の生活も現実的かなと。全館空調では夜オフにすることは推奨されませんでしたが、夜間に設定温度を下げることはできます。家族の意見が大事なのでどうなるかはわかりませんが、今後は多少なり省エネも追及していきたいと思っています。

冷房費は使い方しだい

冷房費は、全室冷房か個別間欠運転かよりも、どのようなときに使うかで差が出るように思います。これについては各家庭の差が大きく、シミュレーションはあまり当てになりません。

8 月前後の外気温が 27 ℃以上のときに限定して冷房運転で温度を下げるだけなら大してコストはかかりませんが、窓を閉めて常に湿度までコントロールしようとすると、住宅によって大きな差が出ます。梅雨時などに再熱除湿を行うと、多少は電気代がかかります。気密性能が低かったり、換気の設計に問題があったりすると、湿度管理のコストは高くつくでしょう(わが家のこと)。

また、春秋の中間期には窓を閉めると少し暑くなるときがありますが、このようなときに冷房を使うかどうかでも差が出ます。中間期は窓の通風や換気量の調整でやり過ごすのが省エネですが、天気や外気温の変化に左右されずにいつでも洗濯物が乾き、静かに過ごせる空調は、一度体験すると手放しがたいものです。

参考
全館空調の電気代(2017年1月~12月)
24時間全室暖房の暖房費は本当に個別間欠暖房より安くなるのか
1世帯当たりの年間冷暖房費はいくらか?【全国平均】
除湿能力・コストの比較【エアコン、除湿器、熱交換換気、エコカラット、デシカ】
「高断熱住宅では窓を開けない」は本当か?【設計上の反省点】

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