高断熱住宅は本当に光熱費のかからないエコハウスなのか | さとるパパの住宅論

高断熱住宅は本当に光熱費のかからないエコハウスなのか

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高断熱住宅は光熱費がかからない省エネのエコハウスであるはずですが、必ずしもエコハウスになるわけではありません。一般的には、断熱性能が高ければ高いほど冷暖房にかかるエネルギーが少なくなります。しかし、それなりに高断熱住宅である三井ホームの我が家について確認してみると、一般家庭よりも多くのエネルギーを消費していました。これでは、到底、エコハウスとは言えません。エコハウスを目指したはずが、そうはならなかった、その理由を考えてみたいと思います。

電気代については「全館空調の電気代・維持費用を考える(暫定版)」で述べているので、ここでは冷暖房にかかるエネルギー消費量をベースに考えてみたいと思います。エアコンによる全館冷暖房を行う高断熱住宅のエネルギー消費量は、日本の住宅の平均値と比較してどうなのでしょうか。

日本の平均的な住宅の冷暖房エネルギーは?

(細かい話なので読み飛ばして構いません)
少々古いのですが、資源エネルギー庁の「家庭エネルギー消費の実態」のデータを元に計算してみます。世帯当たりの年間エネルギー消費量は
34,905 MJ で、そのうち冷暖房が 20.6% とのことなので、冷暖房にかかるエネルギー消費量は 7190 MJ です。冷暖房には石油ストーブや電気カーペットなどが含まれ、エアコンは全消費量の 3.5% とのことなので、約 1200 MJ です。

エアコンによる全館冷暖房では、エアコン以外の冷暖房機器が不要になるため、平均的な世帯の6 倍(7190÷1200≒6)エアコンを使用しても、冷暖房にかかるエネルギー消費量は平均的な世帯と同じということになります。世帯当たりの年間電気使用量は 4618 kWh であり、エアコンは 7.4% なので、約 340 kWh です。この 6 倍というと、約 2,000 kWh になります。

つまり、エアコンにかかる年間電気使用量が 2,000 kWh を超えているかどうかが、エコハウスかどうかの境界ということになります。

ちなみに、単位エネルギー(GJ)当たりの単価は、電気が7,800円、都市ガスが3,700円、LPGが6,000円、灯油が2,500円だそうです(参考サイト)。電気は他のエネルギーより割高なので、冷暖房費という観点で見ると、この 2,000 kWh の水準でも平均的な世帯よりだいぶ高くつくことになります。

我が家(全館空調)と平均的な住宅の比較

我が家の全館空調の年間電気使用量は、約 5900 kWh です。全館空調とはエアコンと換気システムを一体化させたものなので、これには熱交換換気システムの電気使用量(約 1,000 kWh)も含まれています。しかし、ざっと計算して、平均的な住宅の 3 倍近くの冷暖房エネルギーを消費していることになります。計算して改めてショックを受けましたが、明らかに省エネ住宅なんて言えたものではありません。

平均的な住宅より高い理由

我が家の冷暖房にかかる電気使用量がこれほど大きくなっているのは、家の大きさと連続運転のためだと思います。冷暖房エネルギーは家の大きさに比例するため、吹き抜けを含めると 44 坪相当の空間があるわが家は、平均的な世帯の住居面積を 30 坪(マンションや共同住宅を考慮するとこれくらい?)とすると、5 割ほど大きいことになります。そして、全館空調の住宅では、家中に 24 時間冷暖房をかけます(連続運転)。一方、平均的な住宅では、必要な時に必要なところでのみエアコンを使用します(間欠運転)。理論的には、Q 値 1.6 で、連続運転と間欠運転の暖房費は同じになるはずです。しかし実際には、間欠運転の方が電気代が安くなるものと思われます。ふつう、間欠運転では、多少の暑さ寒さは我慢し、極端に寒いときや暑いときにしか冷暖房を使用しないからです。また、我が家では、冷暖房だけでなく、電気消費量の多い再熱除湿を多用することも、消費電力が多いことに影響していそうです。これらの要素が積もり合わさって、平均世帯の 3 倍という数字にまでなっているのだと思います。

本題:高断熱住宅はエコハウスか

我が家はエコハウスではありませんでしたが、高断熱住宅すべてがエコハウスでないわけではありません。エコハウスはやはり、高断熱である必要があります。同じように間欠運転をするなら、高断熱であればあるほど冷暖房費が少なくなるのは当然ですし、連続運転をする場合でも、より高断熱であれば冷暖房費はかからないはずです。たとえば、スウェーデンハウスのエアコン消費電力(参照PDF)を見ると、7 月末で 1 日 5 kWh 以下です。夏場の 1 カ月で 150 kWh であれば、年間でも 2,000 kWh 以下にはなるだろうことは推測できます。

つまり、中途半端な高断熱住宅で連続運転をすると、それなりの断熱性能で間欠運転をする場合よりもエネルギー消費量が多くなる、ということです。やはり、連続運転をしても電気代がかからない、というためには、スウェーデンハウスレベル(Q 値 1.4)以上の断熱性能が必要になるのでしょう。

我が家はもう建ててしまったので手遅れです。ふつうに全館空調を運用していれば、高エネルギー消費住宅になってしまいます。それでも、全館空調で快適さをなるべく犠牲にしないで消費電力を抑えるにはどうすればいいか、試行錯誤して今後報告したいと思います。また、今回の記事で調べていて、住宅のエネルギー使用量のうち、給湯が占める割合が一番大きいこともわかったので、これの改善余地(太陽熱利用温水器?)も検討してみたいと思っています。これから住宅を建てる方には、わが家の反省を活かしていただければ幸いです。

ちなみに最近、『ホントは安いエコハウス』(松尾和也著、日経BP社)という本が住宅関係で売れているようです。未読ですが、熱環境工学を専攻した建築家が省エネ住宅について書いた本で、エアコンについては特に詳しい具体的な情報があるそうです。また、『エコハウスのウソ』(前真之著、日経BP社)という本も定評があり、東大建築学科出身の環境学者が実証データを元に “エコハウスの誤解” を斬っているそうです。こちらは、給湯や再生可能エネルギーについてもカバーしています。

目次やレビューを見る限り、どちらも主な主張は当サイトの住宅論と似ているように感じますが、私の主張の裏付けや誤解が見つかるかもしれないので、いつか時間ができたら読んでみたいと思っています。当サイトをご覧の皆さまも、私の主張より信頼できる専門家の意見やデータを調べ、当サイトの記述に疑問・反論があればコメントをいただけると幸いです。コメント欄のメールアドレスは適当でかまいません。なお、ハウスメーカーの営業に聞いて返ってくる答えは、真に受けない方が賢明です。経験上。

追記:どちらも買って読んでみました。以下で紹介しています。
推薦本:『ホントは安いエコハウス』
推薦本:『エコハウスのウソ』を読んでみた

コメント

  1. くろーばー より:

    さとるパパ様へ

    はじめまして。くろーばーと申します。

    本日初めて、さとるパパ様のブログを拝見させて頂きました。住宅性能の大切なことが数多く書かれていて、最初の記事から全て一気に目を通させて頂きました。

    共感する内容ばかりでした。
    合理的な分析がとてもステキで、自分も見習いたいなと思いました。

    今後の記事も楽しみにしております。

  2. さとるパパ より:

    くろーばー様

    コメントありがとうございます。人気記事だけでなく多くの記事に思い入れがあるため、すべて読んでいただけたとのことで冥利に尽きます。

    くろーばー様のブログを拝見したところ、我が家でこうすればよかったと後悔している仕様を多く採り入れており、先見性に感服しました。当サイトはそろそろネタ切れで更新頻度を落とす予定ですが、まだいくつか書いておきたいことがあるので今後もどうぞよろしくお願いします。

    • くろーばー より:

      人気記事だけでなく・・凄く共感します。

      ウェブ内覧会がよく読まれていますが、それよりも断熱気密やメンテナンスを重要視しているので(*^^*)

      さとるパパ様の発信のおかげで良い家を建てる方が多くなっていくと思います。

      これからも記事更新を楽しみにしています(^-^)/

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