高断熱住宅ほど冷房費は高くなる?

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前回紹介した Q 値と冷房エネルギーの関係を示すデータ(以下に再掲)によると、冷房費は高断熱住宅のほうが高くなるという結果が出ています。

(財)建築環境・省エネルギー機構、一次エネルギー消費量算定シート(IV b地域)より作成

一方で、高断熱住宅のほうが冷房費が安くなるというデータもあります。

両方ともシミュレーションによる結果ですが、この違いはどこから生じるのでしょうか。

基本的な事実から順を追って確認していきたいと思います。

夏の室内外の温度差は小さい

冷暖房に必要なエネルギーは、室内外の温度差と断熱性能(熱抵抗)に比例します。

この温度差は、冬と夏でどの程度になるのでしょうか。

冬の温度差

東京の厳寒期の月平均気温は約 6 度です。冬の室温目標を 20 度とすると、室温は外気温より常に低く、その差は平均で 14 度最大で 22 度もあります。

夏の温度差

一方、東京の夏季の月平均気温は約 27 度です。目標の室温を 27 度とすると、外気温は室温より高いときも低いときもあり、平均的には差はありません

2017 年の最高気温は 37 度だったので、一時的な差は最高でも 10 度ということになります。

エアコンは必要

夏に平均的に温度差がないからといって、冷房が必要ないわけではありません。気温や湿度が高いと熱中症の危険があるため、高温時にはエアコンにより温度や湿度を下げる必要があります。

一日の温度変化を平準化できれば快適になるはずですが、そんなことは地下でもないと困難です。風通しをよくするにしても、外気の温度と湿度が高いときには限界があります。

高断熱住宅の性質

高断熱住宅には、熱が移動しにくい性質があります。外気温と差がある状態を維持しやすいので、一日のうちの室温の変化も小さくすることができます。

また、エアコンが効きやすく、室温と外気温の差が 10 度くらいなら、冬よりも余裕で調整することができます。

高断熱住宅のほうが冷房費が高くなる理由

以上の説明では、高断熱ほど冷房費が安くなるというのも納得がいきます。

しかし、ここまでの説明では、日射熱を一切考慮していません

日射熱の侵入があると、室内は温室のように温められるため、室温が外気温より高くなります。

エアコンを使わない場合、日射熱で部屋が暑くなったとしても、涼しくなる夜から朝にかけて自然に放熱されます。この放熱は、断熱性能が低い住宅ほど多くなり、高断熱住宅ほど不利になります。

これが、高断熱ほど冷房費が高くなるケースがある理由です。

なお、全館空調やエアコンで冷房の連続運転を行う場合は、この放熱がまったく期待できないため、大きな影響を受けることになります。これを考えると、高断熱住宅でも連続運転は冬の暖房だけにして、夏季は間欠運転にする運用もよいかもしれません。

まとめると、日射熱の侵入が少ない場合は高断熱ほど冷房費が安くなりますが、日射熱の侵入が多い場合は高断熱ほど冷房費が高くなるのです(特に全館冷房時)

最初に紹介した、高断熱ほど冷房費が高くなるというデータは、公的機関による試算値です。このため、算定の基になっている住宅モデルはおそらく、地域の一般的な窓の割合などを参考にして決められています。つまり、窓が多い一般的な温暖地の住宅では断熱性能が高いほど冷房費が高くなるということなのでしょう(わずかな差ではありますが)。

高断熱住宅で夏季の日射遮蔽が非常に重要だというのは、そういうわけなのです。

温暖地では一般的に窓面積が大きい傾向がありますが、日射管理を適切に行っている住宅は多くありません。窓からの日射熱は南面だけでなく、全方位から侵入してきます。

さまざまな方法で日射を管理し、快適かつ省エネに夏を乗り切りましょう。

今年のわが家は、ゴーヤを植えています。

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