ユニットバス下部の断熱方法は特殊です。浴室下部が基礎断熱構造になっている場合は別ですが、床断熱工法の場合、ユニットバスの区画には床断熱がないため、浴室ユニット下部のみで断熱を行うことになります(参考:望ましい浴室断熱、LIXIL公式解説ページ)。
この浴室ユニット下部の断熱は、洗い場床や浴槽などの保温材で構成されており、これらの断熱仕様はユニットバスのモデルによって決まっています。
調べてみて驚いたのが、ユニットバス各社の断熱性能にはかなりの差があるということです。
ここでは、各社標準クラスのユニットバスの断熱性能について調べた結果をご紹介したいと思います。
熱貫流率*の数値は、戸建住宅で一般的な1坪タイプ(1616サイズ)の値を記載しています。
熱貫流率 U は、単位面積あたり、温度差 1℃あたりの熱の移動量のことで、単位は W/(㎡・K) です。熱伝導率 [W/(m・K)] と異なり、断熱材等の厚みが考慮された指標となっています。数値が小さいほど高断熱であることを意味します。熱貫流率が半分なら、逃げる熱も半分なので、温度差を維持するために必要な暖房エネルギーも半分になります。
リクシル(LIXIL)ユニットバス・アライズの断熱性能
熱貫流率:1.39(2019年サーモフロア仕様)
ユニットバス最大手のリクシルの断熱仕様は、洗い場がポリエチレンフォーム 4mm、浴槽が発泡プラスチック保温材 30mm となっています。
参考までに、より高級なシリーズであるスパージュの熱貫流率は 1.34~1.50 であり、アライズとあまり差がありません。
わが家の浴室はアライズの前身のキレイユですが、浴槽の保温材も数ミリの厚さしかなかったので、近年に大幅に改善されたものと思われます。断熱性能とは関係ないですが、使っているとカウンターの付け根が汚れやすいので、新機能の「丸洗いカウンター」が羨ましいです。
TOTO ユニットバス・サザナの断熱性能
熱貫流率:1.343
リクシルに次ぐ大手 TOTO の数値はカタログでは見つかりませんでしたが、以下の記述が見つかりました。
魔法びん浴槽ほっカラリ床でシステムバス全体の熱貫流率は1.343
引用:https://excel-e.com/specification/bathroom-toilet/
今では各社当たり前のように採用されている高断熱浴槽は、TOTO が先駆けのようです。「ほっカラリ床」のイメージ図を見る限り、リクシルよりも高断熱な仕様になっているように見えます。
Panasonic ユニットバス・オフローラの断熱性能
数値は見つかりませんでしたが、保温浴槽IIの浴槽断熱材は発泡PS 20-40mm 厚であり、洗い場床は床保温シート(発泡PEシート5mm)と床断熱材(発泡PS 80mm)の二層構造となっています。一部はセレクト仕様のようですが、これらの仕様を選択すれば、上記 2 社より優れた熱貫流率になるのではないかと推測します。
その他各社のユニットバス断熱性能
上記3社が特にシェアの大きい会社ですが、ほかにも人気のユニットバスは多数あります。
以下は、多少なり断熱性能の情報が見つかったユニットバスを紹介します。
タカラのユニットバスの断熱性能
タカラのユニットバスは価格帯によって差がありますが、しっかりと情報公開されているところが好感が持てます。
熱貫流率:
1.14(プレデンシア)
1.40(レラージュ)
1.31~2.19(ミーナ)
参考PDF
ハウステックのユニットバス・フェリテの断熱性能
旧日立グループのハウステックの断熱性能は、高断熱浴槽(4時間で湯温低下2.5℃以内)はふつうですが、洗い場床面(温クリンフロア)はヒヤリ感の軽減しか謳われておらず、厚みのある断熱材があるようには見えません。
トクラスのユニットバス・エブリィの断熱性能
トクラス(旧ヤマハ)のエブリィでは、高断熱浴槽と断熱フロアを選択すれば、熱貫流率 1 台前半くらいの高断熱になりそうです。
ニッコーのユニットバスの断熱性能
ニッコーのオーダーメイドのバスルーム BAINCOUTURE(バンクチュール)は高額ですが、圧倒的に高断熱な資料を見たことがあります。
総評
以前は熱貫流率 2 くらいになるユニットバスが多かったのですが、TOTO の魔法びん浴槽がヒットして高断熱浴槽が普及したため、1.4 くらいが標準的になってきました。
しかし洗い場下の断熱層は依然として数ミリしかないことが多く、それでは決して高断熱とはいえません。ユニットバス以外の床断熱と比べると、床断熱では 80mm以上の断熱材を使用することが多く、その場合の熱貫流率は、熱橋を考慮しても 0.6 ほどです。
つまり、一般的な床断熱と比べると、ユニットバスは 1.4 でも半分以下の断熱性能しかないことになります。
ユニットバスを断熱の弱点にしたくない、という場合は、高断熱浴槽に加え、洗い場下に 80mm くらいの断熱層がある仕様のユニットバスを選択することをお勧めします(基礎断熱にする方法もあります)。
備考:ユニットバスの断熱性能は重要か?
ユニットバスを選ぶ基準は、掃除のしやすさやカビの生えにくさ、機能性や耐久性などさまざまであり、断熱性能は選択基準の一つに過ぎません。しかし、浴室が暖かいことや、湯温が冷めにくいことは、生活の質や光熱費において重要な要素です。
とはいえ、断熱性能の高いユニットバスを選べば浴室が暖かくなるかというと、そう単純ではありません。
そのあたりについて考えてみたいと思います。
低断熱の住宅とマンションではあまり意味がない?
昔の戸建住宅はほとんどが低断熱ですが、こうした家は脱衣所も風呂場も寒くてたまりません。
このような住宅では、ユニットバスだけを高断熱にしたとしても、一気に暖かくなることは想像できません。
高断熱は熱を逃げにくくするだけで熱を発生させるわけではないので、周囲が寒ければ浴室も同様に寒くなってしまうことでしょう。
お湯を使えば暖まり、冷めにくくなることは期待できますが、そのような住宅では浴室暖房機などがあったほうが快適になりそうです(電気代はかかりますが)。
また、鉄筋コンクリートのマンションにおいても、高断熱のユニットバスはあまり効果がない気がします。というのも、下の階やコンクリートの温度がそれほど低くないので、浴室もそれほど寒くなりません。ただ、浴室が外気に接する面にあり、アルミサッシの窓(熱貫流率 6 ほど)がある場合は、そこから冷えます。そういう間取りの場合は、高断熱窓にするか、エコ内窓を設置することが効果的でしょう。
ユニットバスの断熱性能が特に重要なケース
ユニットバスの断熱性能が重要になるのは、戸建住宅の 1F に浴室を設置する場合です。床下の冷気の影響を軽減する必要があるからです。
浴室暖房機があれば寒さの心配はいりませんが、ある程度の断熱性能があり、暖房を使う住宅では、浴室暖房機は過剰設備であり、ヒートポンプでないので電気代がもったいないと思います。
浴室や脱衣所がエアコンなどの暖房器具から離れているほど冷えやすくなる点には注意が必要ですが、暖房を使うことで 10℃以下にならない住宅などでは、ユニットバスの断熱を確保し、浴室暖房機を使わないのがお勧めです(感じ方には個人差があります)。
参考 高断熱住宅に浴室暖房は不要か?わが家の温度を調べた結果…
ユニットバスは気密も施工も大事
浴室の断熱では、気密をとることも重要です。在来工法の住宅では床下の冷気が壁内を上がっていく恐れがあるのでご注意ください。
また、上記の熱貫流率は、あくまでも設計上の数値です。端部まで断熱材があるかどうかや、きちんと施工されているかどうかは別問題です。ひょっとしたら、断熱材に大きな穴が開いているかもしれません。わが家のように…
参考 初めて床下に潜ってユニットバスまわりをチェックしてみたら…
浴室が暖かいと乾きも早い
浴室が暖かいことのメリットは、快適でヒートショック対策になることだけではありません。浴室が暖かいと、使用後の乾きが早くなり、乾きが早いとカビも生えにくくなります。
わが家は全館空調のおかげもあり、風呂の寒さに悩まされてはいませんが、床下に潜ってみたところ、ユニットバスの断熱には満足していません。いつかユニットバスをリフォームする時期が来れば、今度こそ、ユニットバスの断熱性能にも注意を払いたいと思っています。
以下は、リフォーム一括見積サイトによる記事です。ご参考までに。
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