断熱性能が高いほど家中の温度差が小さくなるということはよく言われていますが、どうしてなのでしょうか。以前、部屋の熱損失を計算する方法で解説を試みましたが、まだわかりにくいと思ったので、下手なりに図を描いて再度説明してみたいと思います。
断熱性能が高いほど温度差が低いというのを感覚的に理解するためには、極端な例を考えてみるのがわかりやすいと思います。
断熱ゼロの住宅モデル
最初に考えるのは、断熱が全くない住宅のモデルです。
恥ずかしくなるほどテキトーな図で恐縮ですが、赤が高温、青が低温のサーモグラフィーをイメージしています。。
断熱がゼロなので、壁の内外の温度に差がありません。中央の部屋で暖房を使っても、暖房から離れれば離れるほど温度は下がってしまいます。外に暖房を設置するようなものなので、強力な暖房の近くでしか暖かさは感じられません。
部屋で暖房を効かせるには、狭い空間を仕切るしかありません。風がないだけ外よりはマシですが、暖房以外の風はすべて寒いので、本来は必要な換気も不快でしかありません。
熱の移動は家の中の暖房付近で活発なので、室内で大きな温度差が発生します。温度差が大きいということは、空気の密度(体積当たりの質量)の差も大きいので、上下の空気の移動(対流)も起こりやすく、上下の温度差も大きくなります。
次は反対に、断熱性能が高すぎる住宅を考えてみましょう。
超高断熱の住宅モデル
熱の移動が発生しないので、家の中の温度は外気温の影響を一切受けず、家内部の周囲の温度と同じにしかなりません。室内温度はどこも一定で、密度の差もないため上下の対流も発生せず、上下の温度差もありません。
この一定の温度が高いか低いかは、条件しだいです。発生する熱がない場合、家中が温度差なく寒い可能性もあります。ただし住宅にはふつう、人体や家電などから熱が出る(内部発熱)だけでなく日射熱も入るので、外気温よりは高い温度になります。
適度な温度で安定すればよいのですが、逃げる熱がないと日射熱や内部発熱の影響を受けやすいため、その熱だけで、家中に温度差がないまま室温が上昇してしまうこともあります。超高断熱住宅で一定温度を快適温度な範囲に保つためには、エアコンは欠かせません(必要な熱量はわずかで済みます)。
換気を考える場合、新鮮な空気の温度は最初は外気温と同じですが、すぐに室温と同じになるので不快にはなりにくいでしょう。
以上、2 つの極端な例を考えてみましたが、どちらのケースも意外と心当たりがあるのではないでしょうか。前者は、大部屋でエアコンが効かないような、築年数の長い木造住宅に住んだことがある方なら想像がつくはずです。後者は、トリプルガラスを採用しているような高断熱住宅の住人の声として、聞いたことがあるかもしれません。
上記の説明ではどちらもデメリットがあるかのように書きましたが、超高断熱住宅のデメリットはちょっとした工夫で無くすことができます。住み心地としては、超高断熱住宅のほうが圧倒的に快適でしょう。
住んでみないと実感はわかないかもしれませんが、体験宿泊などができることもあるので、できることなら一度体験してみることをお勧めします。
もちろん、この中間の、なかなか高断熱な住宅を目指すのも良い選択です。
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