グラスウールは低価格で広く普及している断熱材ですが、「きちんと施工されていないと断熱効果を発揮できない」、「水を吸って重くなってずり落ちる」などという批判を受けることがあります。
本当ならば大問題ですが、これに関しては誤解も多いので、そのことについて紹介したいと思います。
施工状態で断熱性能が半分以下になる?
グラスウールは施工状態が悪いと断熱性能(熱貫流率)がこんなに悪化する、という数値が図とともに説明されていることがあります。昔はセキスイハイムの Web ページに掲載されていた記憶がありますが、いつの間にか削除されています。
これらによると、グラスウールは施工状態によっては断熱性能が理論値の半分以下になりうるので、「施工に左右されるグラスウール断熱材はよくない」、あるいは「施工が大事」といった結論が導かれます。
私もこれを見たときは、それはイヤだなと思ったものです。
しかし、この説明をそのまま真に受けてはなりません。この図は、施工の良し悪しが断熱性能に及ぼす影響を示した図ではなく、適切な気流止めの有無が断熱性能に及ぼす影響を示した図であるからです。
詳細は以下のとおりです。
適切な気流止めがないために壁内気流が発生していたら、たとえ発泡プラスチック系断熱材などであっても同様の問題は発生する可能性があります。
また、気流止めが適切に施工されていたら、通気性のあるグラスウールなどの断熱材を使用して施工に多少のムラがあったとしても、断熱効果が極端に落ちるということはありません。
この図は勘違いで広まっているものと思われますが、グラスウールの欠点として故意に読み間違えるように利用する業者があるとすれば、悪質だなと思います。
断熱材がずり落ちる?
グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材は湿気を吸うため、しだいにカビが生えたり重みでズリ落ちたりするという指摘があります。
新建ハウジングの記事によると、ヒノキヤグループが解体時にグラスウールなどの状態をチェックしたところ、
全ての住宅で、断熱材にカビや湿気などの影響と思われる黒い変色や、45%の住宅で断熱材の垂れ下がりによる断熱欠損が確認された
とのこと。ずり落ちなどは実際にかなりの住宅で発生しているようです。
この調査研究では、以下のように結論付けられています。
グラスウールやロックウール等の繊維系断熱材は、気密性を高める気密テープや気流止め等を含めた正しい施工がされていないと劣化し、断熱材本来の機能を発揮しない住宅になってしまうことが明らかとなった
これを読むと、繊維系断熱材は良くないと思ってしまいそうです。調査を行った桧家住宅では、繊維系断熱材ではなく発泡断熱材のアクアフォームを採用しています。
しかし、この調査を行った住宅はすべて、1994 年以前に建てられた住宅です。H11(1999年)省エネ基準により、温暖地でもそれなりの高断熱・高気密住宅が作られるようになる前の住宅です。この時期の温暖地の木造住宅では、壁内結露に大きな影響を及ぼす気流止めが適切に施工されていることはほとんどありません。
前述の結論は、「気密性を高める気密テープや気流止め等を含めた正しい施工がされていない」から問題なのであって、最近の住宅で気密施工と気流止めが適切であれば問題ないとも解釈できます。
どの程度の気密仕様なら問題ないのかまでは私もまだよくわかりませんが、壁内気流が発生せず、通気工法や防湿シートなどによる壁内結露対策がきちんと行われていれば、1994 年以前の住宅のような問題は起こらないはずです。
参考までに、1999 年以前の木造住宅でも、ツーバイフォー(枠組壁工法)では気流止めがなくても構造的に壁内気流が発生しません。この工法を採用している三井ホームが築28年の住宅を解体調査した結果(こちらのページ下部)では、壁内結露は一切なく、断熱材は新品同様だったそうです。
2016 年に自宅を建てた時の三井ホームの気密工事は決して万全なものではありませんでしたが、断熱材に関してはたぶん問題ないと思っています(思いたい)。
参考
▶ Q値C値に現れない高断熱住宅の要「気流止め」の問題
▶ 木造住宅の寿命は20年~200年?住宅仕様と耐久性の変遷
▶ 断熱材と断熱工法は何がよいか?
コメント