高断熱住宅は暖かいので浴室暖房が要らないという意見がありますが、高断熱住宅の浴室は本当に暖房なしでも暖かいのでしょうか。
実際に住んでみないとわかりにくいことなので、わが家の浴室の温度状況について、まだ寒さの残る2月中旬に調査してみました。
結論から書くと、私としては浴室で寒さを感じることがなく、浴室暖房は不要と思っていますが、その暖かさも条件や感じ方によるかなと思っています。
ヒートショックを防ぐための浴室の温度
本題に入る前に、そもそも浴室はどの程度の温度が適切なのでしょうか。
ヒートショック対策について調べてみると、温度に関しては、概ね次のことに注意すべきとあります。
・脱衣所と浴室を暖めること
・お湯の温度を40℃以下にし、長湯をしないこと
このうち脱衣所と浴室の温度については、朝日新聞に「脱衣所・浴室、18度未満避けよう ヒートショック防ぐ」という記事があったので、18℃以上が望ましいようです。
熱いお湯や長湯によって身体を暖めすぎないことも重要とのことですが、浴室や脱衣所の温度はこれにも影響する気がします。空気が寒く身体が冷えているときほど、熱い湯船で身体を暖めたくなり、湯船から上りたくなくなるからです。また、身体が冷えているのに湯船が低温だと、身体が暖まらずに寒いだけです。
反対に、浴室・脱衣所が暖かければ、お湯の温度が低くても不満を感じにくいし、湯船から出ることをためらう気持ちも起こりません。
わが家の条件と測定結果
参考までに、平均気温が 5 ℃くらいの 2月のわが家の浴室温度を紹介しますが、これは様々な条件の影響を受けるので、まずはわが家の風呂の環境について説明します。
わが家の浴室条件
まず、浴室に暖房はなく、あるのは排気専用の換気扇のみです。
そして浴室は1Fの北側にあり、間取りはこんな感じです。
サイズは1坪(1616)で、ユニットバスの6面のうち、4面は室内に面しており、床面と壁面が外気に接しています。
外壁面には 40 x 100 cm の窓(樹脂サッシの高断熱ペアガラス)もあります。
面している室内は、全館空調を利用しているため、脱衣所を含め、どこも 20℃以上はあります。
住宅の断熱性能は、UA 値で 0.5 以下程度です。ユニットバスでの基礎断熱は行っておらず、床下はユニットバスの断熱材のみで、外気が通じています。
測定結果
温度については、浴槽が空の状態で、脱衣所および浴室の室温と、浴室床面の表面温度を測定しました。
わが家では普段、サーキュレーターで浴室を乾かしているのですが、まずはその状態で外気温5℃の夕方に測定しました。
脱衣所、浴室、床面の温度はそれぞれ、
21℃、20℃、20℃でした。(浴室が脱衣所より1℃低い)
まあ、脱衣所の暖房の空気を浴室に送りまくっているのですから当然でしょう。
そこでまた別の日に、サーキュレーターを止め、ドアを閉め、換気扇を止めた状態で半日ほど経ってから、外気温7℃のときに測定してみました。脱衣所の暖かい空気が入りにくいため、浴室が一番冷えやすい条件です。
脱衣所、浴室、床面の温度はそれぞれ、
22℃、18℃、17℃でした。(浴室が脱衣所より4℃低い)
ギリギリでヒートショックの心配はないと言えるレベルです。入ったときに少しだけ寒さを感じますが、そこまで寒くはなく、お湯を使えば気にならないくらいでしょう。
また参考までに、ドアを閉めて換気扇を稼働した条件(脱衣所の暖気が浴室に入る)と、ドアを全開にして換気扇を止めた条件でも測定してみましたが、どちらも浴室が脱衣所より2℃ほど低いという、中間的な結果となりました。
浴室ドアは開けておいたほうが浴室が暖かくなりますが、浴室のドアを開けることに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。私の場合、RCマンションに住んでいたときは浴室のカビがひどく、その空気が居室に流れてくるのがイヤだったので、ドアは閉めていた気がします(曖昧な記憶です…)。しかし現在は、数年住んでも浴室のカビ発生は細部だけでひどい状態にはならないため、浴室ドアは開けたままにしていても気になりません。どうしても閉めたい場合でも、浴室で常時換気を行っている場合は、居室の暖かい空気が浴室に流入するのでそれほど寒くならないようです。
浴室の熱損失の内訳
浴室には暖房がないので熱は外壁や床面から逃げていくことになりますが、その内訳はどの程度でしょうか。
換気の影響は考慮せず、面積と熱貫流率からざっくり計算してみます。
外壁面の面積は、1.6 x 2.2 = 3.5 ㎡ で、そのうち 0.4 ㎡ は窓です。
床面の面積は、1.6 x 1.6 = 2.6 ㎡ です。
熱貫流率は、おおよそですが以下のとおりです。
外壁:0.35 W/㎡K
窓:1.5 W/㎡K
床面:1.9 W/㎡K
単位面積当たりの断熱でみると、断熱が高い順に、外壁、窓、床面となります。しかし、床下の温度は外気より高いので(測定したら 12.4℃でした)、温度差係数 0.7 をかけると 1.9 x 0.7 = 1.3 となり、実際には窓が断熱の最大の弱点になることがわかります。
実際に表面温度を測定したところ、浴室室温19℃のとき、外壁18.8℃、床・浴槽17.5℃、窓16.6℃という結果でした。
熱貫流率に面積と温度差(外気温を6℃、浴室温度を20℃とすると 14℃)をかけて熱損失量を計算すると、次のようになります。
外壁:15 W
窓:8 W
床面:48 W
合計:71 W
床面の熱損失量が最大ですが、もし、外気に触れる面が 2 面になる間取りだった場合は、外壁などの影響はより大きくなることでしょう。
以上の計算結果からは、浴室温度を維持するためには約 71 W の熱を供給する必要があることになります。浴室暖房器の暖房熱量(=消費電力)は 1000W 以上ありますが、この暖房能力は過剰であり、他の部屋から少し暖気を送ってやればよいのではないでしょうか。窓や外壁にそれなりの断熱性能があり、浴室の周囲の温度がある程度高ければ、浴室温度はそれほど低下しません。
浴室を暖かくするコツ
以上の結果を踏まえ、浴室を暖かくするためのポイントをまとめてみます。
- 窓を極力小さくする(なしでもよいが、換気や採光も考慮する)
- ユニットバスを高断熱にする
- 浴室を2Fに設置する(メリット・デメリットあるが、床からの熱損失はかなり減る)
- 外気に触れる面を減らすため、ユニットバスを角に配置しない
- 脱衣所など周囲を暖かく保つ
- 室内から浴室への気流を確保する(常時換気、循環ファン、サーキュレータまたはドア開放)
要は、浴室から出ていく熱量を減らし、浴室に入る熱量を増やせばよいわけです。
1~4は浴室からの熱損失を減らす対策で、5と6は浴室に入る熱量を増やす対策です。
全部しっかりやる必要はなく、バランスが大切です(わが家の場合、1~3はできていません)。
浴室が無暖房の場合、脱衣所などの周囲の室温より暖かくなることは期待できないので、住宅全体の暖房や断熱も重要です。
これらの対応が難しい場合には、何らかの浴室暖房が必要になるかもしれません。
なお、2の「ユニットバスを高断熱にする」については、床断熱工法の住宅であっても、本来、ユニットバスまわりは基礎断熱とすることが望ましい断熱方法です(以下参照)。
しかし、わが家のように基礎断熱を採用していない場合、ユニットバス自体の断熱性能が重要になります。そして最近気づいたのですが、この断熱性能はメーカーによって大きな違いがあります。これについては次の記事をご覧ください。
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