住宅に必要な換気量はどのくらいでしょうか。
必要な換気量の求め方は三菱電機のページで解説されているように用途によって異なります。
住宅の場合、シックハウス対策として義務付けられている換気回数 0.5 回/h 以上という基準が有名です。しかし、建築基準法上の特殊建築物では別の考え方による基準(第二十条の二)も定められていて、これが住宅においても参考になると思ったので、ここで紹介したいと思います。
必要換気量は 1人当たり 20 m3/h
学校などの特殊建築物では、機械換気設備で必要な換気量 [m3/h] として、次式が定められています。
20 x (居室の床面積)/(1 人当たりの占有面積)
適当な数値を入れてみればわかりますが、この式の意味するところは、人が居る部屋では 1 人当たり 20 m3/h の換気量が必要、ということです。
この 20 m3/h という数字の根拠は、上記の三菱電機の説明によると、
成人男子が静かに座っている時のCO2排出量に基づいた必要換気量
とのことです。CO2 排出量は代謝、つまり摂取エネルギー(カロリー)に比例すると思われるので、子どもや女性の場合は小さくなり、たとえば成人女性の場合は約 15 m3/h になると考えられます。
この基準は一般の住宅に適用されるものではありませんが、必要換気量の考え方としては住宅でも参考にすべきでしょう。
換気回数 0.5回/h との関係
ここで、1 人当たり 20 m3/h という考え方と、換気回数 0.5 回/h 以上の基準との関係を確認してみます。
換気回数 0.5 回/h の場合、必要換気量 [m3/h] は次式で計算できます。
(床面積) x (天井高) x 0.5
天井高を 2.4m とすると、必要換気量がちょうど 20 m3/h となる床面積は、16.7 m2 です。
つまり、24 時間換気で定められる最低限の換気量の場合、居室では成人男性 1 人当たり 16.7 m2(約 10 畳)のスペースが必要、という計算になります。
成人男性一人が引きこもるには 10 畳以上の部屋が望ましいわけです。
寝室は換気不足に陥りやすい
この計算は、住宅全体や、広い空間がつながっているリビングなどを考える場合には、問題になりません。住宅全体で考えると、5 人家族の必要面積は 50 畳(25 坪、83 m2)くらいになるからです。
問題になるのは、個室、特に寝室です。小さい子どものいる家庭では、10 畳以下の空間でドアを閉め切って 3 人以上で寝るケースは少なくないでしょう。この場合、換気量が不足し、二酸化炭素濃度が高くなるなどの不健康状態が発生する可能性があります。
実際、寝室の二酸化炭素濃度を測定した結果を調べてみると、衛生基準の 1000 ppm を上回る結果がいくつも見つかります(以下例。taikyuさんの新居の測定値は正常です)。
換気不足の対策
3 人で寝るのなら、寝室は 30 畳以上の広さがあればよいわけですが、これは現実的ではありません。寝室にある程度の広さが必要なことはわかっても、寝室を広くするのは困難です。
考えられる対策を以下に列挙してみました。
- 寝室のみの換気量を増やす
- CF(循環ファン)で室内空気を循環させる
- 天井を高くする(屋根断熱の場合)
- 住宅全体の換気量を増やす
- ドアや窓を開けて寝る(最後の手段)
寝室のみ換気量を増やす方法としては、第三種換気の場合は給気口を多めに設置することで対応できます。気密性の低い引き違い窓があることでも、換気量は増えます。気密性は落ちますが、壁より断熱性能が低い窓の面積が大きいと、全館暖房時に寝室の温度を低めの快眠温度にできるメリットもあります(参考記事)。
第一種換気の場合、ダクト式であれダクトレスであれ、寝室だけ換気量を増やすことは可能です。
過剰な換気によるデメリットを懸念して換気量を下げてみようなどとお考えの方は、二酸化炭素を測定してモニタリングするとよいかもしれません。
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