戸建住宅60年のメンテナンス費用は約2千万円! | さとるパパの住宅論

戸建住宅60年のメンテナンス費用は約2千万円!

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戸建住宅の維持管理費はどのくらいかかるものなのでしょうか。これはもちろん住宅仕様や施主の方針によって変わりますが、ハウスメーカーの広告資料にある大雑把な生涯メンテナンス費は当てになりません。もっとリアルな費用が知りたいと思っていたところ、次の興味深い論文が見つかりました。

戸建住宅のライフサイクルコストの推計. 小松 幸夫, 遠藤 和義. 日本建築学会計画系論文集 65(534), 241-246, 2000PDF

この論文では、戸建住宅の居住者にアンケートをとって部位別の交換周期を算出し、実際のリフォーム工事費を掛けて合計するなどの手法により、一般的な戸建住宅の 60 年間のライフサイクルコストを検討しています。

主な結論は「30 年で建て替えるよりもリフォームで長く使い続けたほうが安く済む」ということですが、個人的に非常に気になったのは、その現実的なリフォーム費用です。

詳しくは読んでいただきたいと思いますが、ここではこのメンテナンス費用についてざっと紹介したいと思います。

ついでながら、個人的には 2000 年より前に建てられた一般的な在来工法の木造住宅が、耐震性・耐久性の観点から 60 年間の使用に耐えられるのかはやや疑問を感じています。耐震・耐久性・断熱などを含めたリフォームを行ったほうが望ましいと思いますが、この論文では仕様・性能のグレードアップを考慮していないため、その場合には高額なリフォーム費用がかかってしまいます。

関連記事 【築年代別】耐震性能と耐久性能から考える中古木造住宅の現在価値

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60 年間のリフォーム費用は約 2 千万円

60 年間のリフォーム費用は、この論文によると 20,813,263 円です。

20 年も昔の論文なので、建築物価の変動も考えたほうがよいかと思い、住宅の建築費指数もチェックしました。が、建築費は 2010 年まで下がった後にまた上がったので、2020 年現在と比べてもほとんど違いはありません。概算で約 2 千万円というのは、今も非現実的な数字ではありません。

2 千万円の内訳

約 2 千万円のリフォーム費用の内訳は以下のとおりです。

リフォームは空間ごとに行われることが多いため、このような分類になっています。各項目に何が含まれるのかは、論文を見ればだいたいわかります(詳細は略されている点も多々あります)。

正直なところ最初は高いと思いましたが、詳細を確認すると、むしろ安めに計算されているようにさえ感じました。外壁補修の間隔も、10 年ごとに 6 回ではなく、15 年ごとに 3 回の計算です(60 年目は含めていません)。

固定資産税や水道光熱費は当然含まれていないし、エアコン・照明などの家電費用も、外構も、防蟻処置の費用もたぶん含まれていません。

注目したいのは、外壁・屋根などの防水にかかる費用が大きいことは有名ですが、それらは全体の 3 割以下でしかないことです。

よくあるハウスメーカーの広告を見ると、メンテナンスコストは外壁がほとんどを占め、タイルなどの長寿命の外壁材を採用することによって数百万円も安くなり、ほとんど費用がかからない印象を受けます。毎月 1 万円も積み立てていけば十分、みたいな感じです。

しかし実際には、生活に必要な機能を維持するために、そのほかにも費用がかかる箇所はたくさんあります。水まわりの更新はよく行われるリフォームですし、玄関ドアも床もトイレもサッシも、60 年で考えると幾度かのリニューアルが必要になるのは当然のことでしょう。

必要な積立額は?

2 千万円を単純に 60 年間で割ると、年間にして約 33 万円。

必要な積立額は、月額にして約 2 万 8 千円です。しかも前述のように、これに含まれていない費用も多々かかる可能性があります。

戸建住宅は、共用部分の多いマンションと違って、やはりお金がかかります。

思ったこと

以上のことを知り、もっとお金を貯めないといけないのか、と少し落ち込んでしまいました。が、これはあくまで 1 つのモデルケースであって、機能を維持するためにリニューアル工事を行った場合の試算です。

実際にお金をかけるかどうかは別の話であり、街を歩けば適切な維持管理が行われていない住宅がたくさん見つかります。メンテナンスされていない理由には、維持管理に必要なコストを甘く見ていたケースやただ生活が苦しいケースもあるでしょうが、数あるお金の使い道のなかで、あえて維持管理にお金をかけていないケースもあることでしょう。たとえば私の祖母の家では 2 階のトイレが壊れたままになっていますが、使わないので直す必要がありません。

家を建てた以上、なんとかやりくりしていくしかありません。とりあえず今できることは、おおまかな見積りを行い、後悔しないようにお金の計画を立てることです。そのためには、ハウスメーカーによる営業用のメンテナンスコスト試算を疑い、個々の住宅仕様に沿ったメンテナンス計画を立てる必要があるでしょう。

冒頭に書いたように、メンテナンス費用は個々の住宅仕様などによって変わってきます。そこで次回は、三井ホームのわが家を例として、生涯のメンテナンス費用計画について考えてみたいと思います。

本来は建てる前に検討すべきことですが、知識不足でわからなかったこと、悪く言えば騙されていたこともあります。その点を含め、これから住宅を建てる方にとって、将来のメンテナンス費用を考慮した選択を行うための参考になれば幸いです。

追記→三井ホームの長期メンテナンス費用は本当に安いのか?【わが家の参考額】

なお、貯金する場合、コロナ禍で財政状況が悪化し続けるなか、今後 60 年もの長期にわたって日本円の価値が安定を保てるのかについては疑問を感じています。ただ積み立てるだけでなく、経済状況に応じたリスク対応ができるかどうかは今後重要になることでしょう。そのための基礎知識として、以下のような勉強はお勧めです(私はスティグリッツを読んだ口ですが)。

こんな分厚い本を読もうという人が少ないことはわかっていますが、売れ筋の本を読んで中途半端にわかった気になっても害が大きいので。それに、こういう海外の教科書は、日本の堅苦しい教科書と違って意外に読みやすく、理解しやすいものです。こうやってアフィリエイトリンクを張ってもほとんど儲かりませんが、続けさせてもらいます。将来のリフォーム費用のために。

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