電気代値上げ後、規制料金と自由料金はどちらがお得か? | さとるパパの住宅論

電気代値上げ後、規制料金と自由料金はどちらがお得か?

※当サイトは、アフィリエイトプログラム(Amazonアソシエイトなど)を通じ、商品またはサービスの紹介・適格販売により収入を得ています。詳細...

スポンサーリンク

大手電力会社の料金値上げが決定し、2023年6月1日から新料金が適用されるようになりました。
電気料金のしくみはわかりにくいのですが、これをわかっているのといないのとでは、今後の電気料金の支払額に大きな影響が出てくるため、これについて考えてみたいと思います。

なお、当サイト管理人は関東地方に住んでいることから、具体的な料金については東京電力管内の料金を例とさせていただきます。

スポンサーリンク

電気料金のしくみ

はじめに、電気料金の制度はどうなっているのか、要点のみ書いておきます。

規制料金と自由料金

2016年4月に電力小売りが自由化され、各家庭でさまざまな電力会社や料金メニューを選べるようになりました。

東京電力の場合、それまでの料金プラン(「従量電灯B」など)はそのまま残りつつ、新しい料金プラン(「スタンダードS」など)が登場しました。新電力からもさまざまな自由料金プランが提供されています。

それまでの料金プランのことは、規制料金とも呼ばれます。契約を変更しなかった場合は規制料金のままなので、2022年時点では、規制料金の家庭が4割ほど、自由料金の家庭が6割ほどだったそうです。

電力量料金の内訳

電力量料金は各プランによってさまざまですが、主に次の式で決まります。

基本料金 + 使用電力量 ×(電力量料金単価 + 再エネ賦課金 + 燃料費調整単価)

プランによって、基本料金がタダだったり、電力量料金が使用量や時間に応じて変化したりと、さまざまです。

このうち再エネ賦課金は、年度によって決まるものであり、どの電力会社のどのプランを選ぼうが同額です(2023年5月からの年度は 1.40円/kWh)。

電力プランを選ぶ際に特に注意が必要なのは、燃料費調整単価です。
これは名前の通り、燃料相場によってプラスの数値になったりマイナスになったりするものですが、規制料金の場合には上限があり、自由料金の場合にはその規制がありません。

このような料金プランの違いによって、これまでどのような現象が起きていたのかを振り返ってみます。

規制料金 vs. 自由料金のこれまでの経緯

まず、2016年の自由化開始から2022年夏までの間は、自由料金が普及していった時期でした。

電力の小売は儲かるのか、雨後の筍のように新電力が現れました。各社の料金プラン(自由料金)は規制料金とほとんど変わらなかったり、1割前後安くなる程度でしたが、セット割やキャンペーンによるキャッシュバックなどもあり、自由料金プランに乗り換えるほうが大きなメリットを受けることができました。このとき、燃料費調整単価は規制料金も自由料金も同額でした(一部プランでは例外あり)。

ところが 2022年頃から状況が変わってきます。燃料費がどんどん上がっていき、マイナスだった燃料費調整単価は2022年9月には上限の +5.13円に張り付くようになります。

ただし、この上限が適用されるのは規制料金だけなので、その他の自由料金の燃料費調整単価はさらに上昇し続け、2023年2月には +13.04円まで上がりました。

東京電力の燃料費調整単価の推移を図にすると、次のようになります。

東電資料の表より作成、激変緩和措置は除外

規制料金と自由料金との燃料費調整単価の差は、2023年5月には 4.08円まで縮まったものの、2023年2月には最大 7.91 円にもなっていました。この差は電力量単価の2~3割に相当し、ほとんどの自由料金プランよりも規制料金のほうが電気料金が安くなる状況が生まれました。逆転です。

自由化されているので、消費者にとっては、規制料金が適用される従量電灯Bプランを契約するのも自由です。東電では従量電灯Bへの変更手続きをわかりにくくして、電話でないと契約手続きができないようにあえて不便にしていましたが、東電がそうするのも仕方ない面もあります。

このときの規制料金は東電にとって出血大サービス料金であり、消費者には良くても、そのままでは東電の大赤字が膨らんでしまいます。

このままの状況は持続可能ではないため、値上げを申請し、2023年6月に新料金が適用開始されることになったわけです。

2023年6月以降の電気料金はどうなる?

2023年6月以降の値上げの詳細は、東電のこちらのページで説明されています。

2023年6月以降の値上げの多くは規制料金に関するものであり、東電の自由料金プランの算定結果はほとんど変化しません。

規制料金の従量電灯Bはどのくらい変わるかというと、使用量に応じて3段階の単価が設定されている料金プランでしたが、この全段階の単価が +4.96 円上がります。

これは、従来の単価 + 4.96 円という意味ではなく、従来の単価に上限の燃料費調整単価を加えた単価に対し、さらに追加で +4.96円という意味です。たとえば、従量電灯Bの場合、最初の120kWh までは 1kWh あたり 19.88円でしたが、それが 19.88 + 5.13 + 4.96 = 30.00 円になります(見直しにより、規制料金向けの燃料費調整単価は下がります)。

前出のグラフで 2023年6月の燃料費調整単価が急にマイナスに変化していますが、これは見直しで燃料費のベースラインが上がったから調整単価が下がっただけのことです。

この見直しにより、東京電力の規制料金(従量電灯B)と自由料金(スタンダードS)の差はほとんどなくなります。

つまり、消費者にとって、規制料金という逃げ道は消滅しました(今回、規制料金の値上げがないエリアは別です)。

なお、今後の電気料金を考えるにあたって注意しておかなければならないのが、激変緩和措置の影響です。

この激変緩和措置は、電力量料金単価に対して一律に、2023年1月~8月使用分は -7円、9月使用分は -3.5円割り引くというものです。これがあるために、2023年の春頃からは電気料金の請求額が落ち着いてきた感があります。

値上がりを開始する6月は、一年で最も使用電力量が少ない時期ですし、この頃は燃料費も減少傾向にあります。このため、規制料金の利用者は、6月の電気料金見直しがあっても大きな負担増を実感できないおそれがあります。良くも悪くも。

燃料費が今後も下がり続ければ問題はありません。が、そうでない場合、このままでは、激変緩和措置が終了し、冬に電力使用量が増加する頃になってから、大幅な負担増を実感することになるかもしれません。

追記:政府による電気料金の補助金は当初9月末で終了する予定でしたが、延長されるようです(参考ニュース記事)。

規制料金と自由料金はどちらを選ぶべきか

以上より、2023年6月以降は規制料金を選ぶ理由はなくなるでしょう。

細かいことをいえば、今後、さらに燃費が急上昇し、再度上限が適用されるようになると、もしかしたらまた上限に達して規制料金のほうが安くなることもあるのかもしれません。その場合は規制料金に変更することも可能ですが、そもそも「自由化されたのに規制料金が残っているのはおかしい」という議論もあるので、規制料金はいずれ廃止されるかもしれません。

そのため、今後は再び、自由料金のメリットが生じやすくなる状況になることが予想されます。

とはいえ、東京電力の自由料金プランは別に安くないし、他の電力会社の自由料金も、会社やプランによってその内容はさまざまです。近年は、燃料費調整単価の代わりに、もしくは燃料費調整単価に加えて、独自の市場価格調整単価(名称はさまざま)を適用する電力会社が増えてきているので、これには特に注意が必要です(後述します)。

どのプランがお得になるかは各家庭の使用状況や今後の情勢次第なので、ここでこの電力会社のこのプランが良いなどとお勧めすることはできません。

ここから先は、ご自身で調べ、自己責任でご検討ください。

なお、燃料費高騰時にいくつかの新電力が事業撤退したり、新規受付を停止したりしましたが、最近はまた受付を再開しつつあります(私としては、一度撤退した会社は勘弁です)。

参考までに、電力比較サイト・エネチェンジ
のリンクを貼っておきます。ただし正直なところ、こうした比較サイトのシミュレーションには制約があるし、この頃は料金制度の見直しも頻繁に起こるので、結果を信用せずにいろいろと情報をとることをお勧めします。



電気代シミュレーションで最も注意が必要なのは、調整費の見積もりです。将来の燃料費や電力市場の動向は誰にもわからないので、直近の月の燃料調整費だけで計算していることがほとんどです。調整費のしくみは各社様々で、そのしくみの違いが重要だということは、以降で説明しています。

私の場合の対応

最適な電力会社やプランは人それぞれですが、一例としてわが家ではどうするつもりなのかを書いておきます。読めばわかるように、安直にマネすることはお勧めしません。

私が重視する電力会社の条件

わが家は日中にも電気を使用し、毎月の使用量も少なくないため、とにかく単価の安い電力会社が理想です。千円くらいの基本料金は問題になりません。

また、わかりやすい料金制度が好きです。今のLooopでんきのように、30分ごとに単価が変わるのでは心が落ち着きません。市場連動型プランは過去(2021年1月)に超高額な請求が発生して問題になったこともあったので、そのリスクは受けたくありません。

そのため、

  • 単価が一定(段階制)で安い
  • 市場連動型プランではない
  • 東電と同じ燃料費調整単価を採用している

というのが理想です。

探してみると、東電の自由料金プラン(スタンダードS)とほとんど同じ料金制度でありながら、より単価の安い電力会社はいくつかあります。

伊藤忠系のTERASELでんきや、idemitsuでんき、丸紅新電力などです。
これらでは、1割ほど安くなることが期待できそうです。

わが家で契約する電力会社

いろいろ検討した結果、今だけはシン・エナジーの【昼】生活フィットプランがお得だと判断し、これを契約しました(このリンクで私への紹介料は発生しません)。

シンエナジーの基本料金や単価設定はわが家の電気使用状況にぴったりで、東電の料金プランと比べてかなりの節約(約4割)が期待できますが、懸念もあります。それは、最近の変更で、東電と同じ「燃料費調整単価」ではなく、独自の「電源調達調整費」が採用されるようになったことです(詳細)。

これには次節で説明するリスクがあるため、市場価格の動向を毎月チェックし、状況次第ですぐに別の電力会社に変更しようと思っています。

追記(2023/8):シン・エナジーの昼フィットプランは10月から単価の見直しがあり、お得ではなくなってしまいました。燃料費調整単価も落ち着いてきたので、この秋には別の電力会社に変更するつもりです。

電源調達調整費(独自燃調)の注意点

安い電気料金が魅力的に見えるシン・エナジーなどの電力会社では、独自の電源調達調整費を採用していることがあります。「独自燃調」とも呼ぶらしく、市場価格調整単価などという名称が使用されていることもあります。これらは市場連動型プランとは異なるものの、市場価格の影響を受けることは似ています。

このような料金体系の電力会社を選ぶ場合や、これまで利用していた電力会社に導入される場合(必ず通知が来ます)は、面倒でも、その計算方式をきちんと把握しておくことを強く推奨します。

算定の詳細は各社それぞれですが、多くの場合、各地域の直近のスポット市場価格(参考:JEPX情報)に基づいています。

過去のデータをみてみると、燃料費調整単価とスポット市場価格の動向には、結構な違いがあります。

出典:https://www.jepx.info/

2023年6月の東電の燃料費調整単価は 7.91 円であるのに対し、シンエナジーの計算方式の場合、同月の調整単価は 0 円です(各月の電源調達調整費はこちら)。しかし今後、市場価格が 20 円に上がると仮定すると、電源調達調整費は約 +10 円となり、最近の燃料費調整単価に近い水準になります。

市場価格 30円になれば +22 円になるし、過去にあった市場価格 66円なら、+65 円です。調整単価が +65円ということは、月使用量が 500 kWh なら、調整費だけで月 32,500 円にもなります。

シンエナジーのような料金方式は、このままスポット市場価格が落ち着いてくれればメリットは大きいものの、何かのきっかけで日本卸電力取引所(JEPX)の価格が暴騰すると、非常にハイリスクです。

2023年に入ってから 5月現在までの期間で見ると JEPX 価格に基づく調整費は割安ですが、JEPX 価格の変化は急激です。

東電などの燃料費調整単価の変化は良くも悪くもなだらかなので、2021年1月と、2022年のほぼ一年間は、燃料費調整単価で計算する方式のほうが安かったことでしょう。

電気会社の切り替えは自由で簡単なので、うまいタイミングで切り替えることができれば、電気代は最も安く済みます。しかし、切り替えでは、検針日の都合もあって 1 月前後のタイムラグが発生するため、高騰時にうまく回避できる保証はありません。2021年1月のような暴騰時に逃げ遅れたら、徹底的に節電するほかありません。

うまく電気代を下げるには、価格動向(燃料、電力先物価格など)やニュースをチェックして調べ、自己責任で行う必要があります。私などはちょっと面白いと思っていますが、手間に感じたり、安定志向なら、無難に燃料費調整単価のみに基づくプランを選ぶべきでしょう。

ちなみに、2023年の電力需給見通しは経産省のエネ庁が公表しており(参考PDF)、猛暑の場合、東京エリアだけは7月に供給不足が生じる可能性があるそうです。対策は行っているでしょうが、想定外の問題が生じる可能性はあるし、私は基本的に日本の電力システム改革を信用していません。

私は勢いでシンエナジーを契約したものの、あまりの安さに逆に不安になり、上記のことを調べました。TERASELでんきの「超TERASEL東京B」プランにすればよかったかなぁ、と揺れているので、数か月後には切り替えているかもしれません。
【追記】10月からサーラの電気に切り替えました。

国内最大級の電力比較サイト【エネチェンジ】はこちらから

↑のエネチェンジは時々利用しています。直接申し込むよりお得なキャンペーンがあったら悔しいので。

↓のようなサービスもあるようですが、私は自分でじっくり調べたいので利用しません。



コメント

  1. FIT より:

    初めてコメントさせていただきます。私は関西ローカルのハウスメーカーで2021年に新築し、その前後から(少し勉強が遅れたので自宅はメーカー標準の気密断熱性プラスα程度ですが)こちらのブログを拝見させて頂いて勉強しております。理論的でまとまっており自分的には非常に参考になる事ばかりです。

    さて、そんな中初めてコメントさせて頂くのは電気料金について先日実体験があったからです。というのも新築時には「セット割引」に乗せられて通信系会社で電気もまとめていて、その後は特に気にする事なく過ごしていました。もちろん昨年後半は電気料金が上がっていましたがニュースに取り上げられるような月5万円!とかにはなっていなかったので、内心「高くなったけど、うちはましだな~」と思っておりました。

    ところが、ある方から昔からある「従量電灯A」は燃料調整費が規制されており、しかも関西電力管内では原発稼働の影響で値上げ申請していないので、「逆転現象」が起きているので得だと教えてもらい早速変更しました。
    結果的に、従来の会社を継続している場合の料金シミュレーションと比較して2割5分程安くなりました。

    3月からの変更だったので電気使用量が減少傾向で実際の料金では効果は少しですが、今回の事で思ったのは「セット割引でお得」という言葉を鵜呑みにして思考停止状態だと痛い目に合う、どういう理由で安くなるのか?どうなればお得でなくなるのか?という事を理解して日々情報収集しておく必要があるな~と感じました。

    長文コメント失礼しました。今後も拝読させて頂きます。

    • さとるパパ より:

      コメントありがとうございます。
      関西・中部・九州電力は6月の規制料金の値上げがないので、規制料金のほうが安い状況がしばらく続きそうなのですね。
      電気料金のしくみはちょっと複雑ですが、状況は刻々と変化し、知らないと損することもあるので情報収集は大事ですよね。
      記事には書いていませんが、私は一定期間後にキャッシュバックが受けられる自由料金プランにしていた関係で、規制料金に逃げるタイミングを失ってしまいました。これに懲りて、より慎重に試行錯誤しています。今後ともよろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました