国交省では「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方」について 2018 年度中にとりまとめを行う予定ですが、その審議では、新築住宅において H25 省エネ基準の義務化は見送られる方向になっているようです(日経の一部有料記事)。
H25 省エネ基準は次世代省エネ基準(H11、Wikipedia)と同じレベルの断熱基準ですが、2020 年までにすべての新築建造物で義務化される予定である点が重要でした。
現状の低い適合率
2016 年度において、H25 省エネ基準に対する適合率は小規模(300㎡未満)住宅で 60% とのこと。
約 4 割の住宅が基準を満たしていない現状のまま義務化すると混乱が予想されることから、見送りとなる公算が大きくなっているようです。
住宅の断熱性能に関心のある人はみな、異口同音に H25 省エネ基準は最低限の水準であるといいます。当サイトでも、そう書いています。
大手のハウスメーカーなどはこの程度の基準は満たすようになってきていますが、中小工務店や建売住宅ではまだまだ普及が遅れているようです。ふつうに断熱材を入れて「サーモス L」レベルのペアガラスを採用すれば達成できそうなものですが、まだハードルが高いというのでしょうか。
断熱化のコストが高すぎる?
日経の記事によると、
省エネ基準を満たすために必要な追加投資を光熱費の削減によって回収できる期間が、14~35年と長期にわたる点を問題視した
とのことですが、新築住宅で 14~35 年、人が住むことは当然のように想定される期間です。また、高断熱化は光熱費だけで評価すべきことでもありません。暖房設備を減らし、高効率なエアコンに置き換えたり、防寒用品を買わなくて済むようになったりするだけでなく、生活の質が大きく向上し、健康増進(医療費削減)にも貢献します。
強引に義務化すべき、とは思いませんが、省エネ以外にもメリットの大きい住宅の断熱化が遅れている現状は残念でなりません。
今後どうなるか
今後は、パリ協定から逆算して強引に設定された ZEH(ゼロエネルギーハウス)の目標も、同様にしてズルズルと延期されていくのでしょう。
国には、高所得者向け・設備重視の ZEH や ZEH+ に補助金を付けるより、最低限の断熱レベルを底上げする政策を考えてほしいものです。
参考 ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)を目指すべきではない理由
日本の住宅は、15 年後の 2033 年には 1/3 が空き家になります(参考図書『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)』)。
そんな将来には高断熱サッシが当たり前になり、高断熱住宅のメリットも広く知られるようになることが予想されます。現在、建築基準法が変わった 1981 年以前の住宅が耐震面から避けられているように、その頃には低断熱住宅が住み手に避けられる世の中になっているかもしれません。
これから家を建てる業者、消費者のみなさまには、国の政策に関係なく、良い住宅を建てていただくことを願っています。
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