熱橋部の計算からわかった国産スギ材ツーバイシックス工法の意外なメリット | さとるパパの住宅論

熱橋部の計算からわかった国産スギ材ツーバイシックス工法の意外なメリット

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充填断熱の場合は木材が熱橋部となり、高断熱住宅の断熱性能にとっては意外と大きな影響があります。

以前から公開しているQ値とUA値をざっくり計算するツールでは熱橋部を考慮しておらず、数値が小さくなりすぎてしまう問題があったため先ほど改良したのですが、その際に気づいたことを紹介したいと思います。

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ツーバイ工法の熱橋部の熱損失は大きい

以下の表は、簡易的に熱橋部を考慮する場合に足し算をする、熱貫流率の補正値です。

出典:建築研究所「外皮の熱損失の計算方法」p.10/25
https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/Manual_HeatLoss_20130712.pdf

これを見ると、枠組壁工法(ツーバイ)では外壁の熱橋部の影響が大きいことがわかります。

例として、ツーバイシックス工法で外壁の断熱材を高性能グラスウール16K(熱伝導率 0.038)140mm とする場合について検討してみます。

断熱材のところの熱貫流率(U 値)は 0.27 ですが、熱橋部を含む外壁の平均では 0.27 + 0.13 = 0.40 になることになります。熱橋部を考慮すると、外壁の熱損失量は約 1.5 倍にもなるのです。

これでは、軸組工法で 105mm とする場合の熱貫流率 0.36 + 0.09 = 0.45 と比べ、断熱面の優位性はそれほど大きくありません(反対に床面では枠組壁工法のほうが有利なようですが)。

上記は簡易的な補正値ですが、これをもう少し詳細に計算してみると、以下のようになります。

詳細に計算すると、ツーバイシックス工法で 0.35 と、先ほどの補正値による計算(0.40)ほど悪くないことがわかります。それでも、断熱材だけの熱貫流率 0.27 と比べると、熱橋部を考慮した場合の外壁の熱損失量は約 30% も悪化しています。

これをどうにかできないかと考えて思ったのは、木材の熱伝導率を小さくできないか、ということです。

計算では天然木材の熱伝導率として 0.12 [W/(mK)] の数値を採用しましたが、このページによると、木材の熱伝導率は樹種によって異なります。

一般に、広葉樹より針葉樹、マツよりスギのほうが熱伝導率が小さいようです。ツーバイフォー工法でよく使われる SPF 材の熱伝導率は調べてもよくわかりませんでしたが、マツ科の木材であることを考えると、0.12 は調べたかぎり妥当なところでしょう。

国産材の活用として推奨されているスギの熱伝導率は、上記ページによると 0.087 [W/(mK)] です。

スギ材にした場合の熱貫流率と Q 値、UA 値への効果

先ほどの詳細計算において、木材の熱伝導率の数値を 0.12 ではなく 0.087 にしてみると、外壁の U 値 [W/m2 K] は 0.35 から 0.31 まで改善します。

この数値を「Q値とUA値をざっくり計算するツール Ver.2.0」に入力して比べてみると、Q 値にして 0.04、 UA 値にして 0.02 改善しました。

大したことない違いのようですが、これは樹脂サッシのアルミスペーサー仕様を樹脂スペーサー仕様にした場合の改善度(同試算で Q 値にして 0.02、 UA 値にして 0.01 程度)よりも、ずっと大きなものです。

ツーバイフォー工法は輸入材に依存しているという問題があります。持続可能な林業により得られた木材なので環境には配慮されていますが、輸送に伴う環境負荷や日本の資源活用を考えると、国産材の活用は望ましいものです。

高品質の木材を安く調達できるか、強度は十分かといった課題はありますが、今後このような取り組みが増えることを期待しています。

なお、スギ材を採用すれば「ツーバイフォー工法はすぐ腐る SPF 材を使っているから長持ちしない」という批判にも対応できますが、これは単なる誤解です。

参考
ツーバイシックス工法の優れた特長とデメリット
木造住宅の寿命は20年~200年?住宅仕様と耐久性の変遷
木造住宅の構造材としての無垢材、集成材、SPF材

追記:三井ホームでは国産材の使用を推進しており、地域やタイミングなどのいくつかの条件が合えば採用できるそうです。

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