外壁塗装に代表されるように、住宅のメンテナンスにはお金がかかります。一般的に外壁塗装は 10 年ごとにすべきこととされており、その度に 100 万円前後の費用がかかるので、毎月 1 万円くらい積み立てる必要があることになります。このため、外壁塗装が要らない「メンテナンスフリーの住宅」に大きな魅力を感じる気持ちはよくわかります。私も、できることならそんな家に住みたいと思っていました。
しかし、いろいろ考えると、メンテナンスフリーと言われる住宅にも問題があり、必ずしも良いものではないと思うようになりました。その理由を述べていきたいと思います。
住宅のメンテナンスは欠かせない
日本の住宅の平均寿命は 30 年未満と言われています。
なぜこんなに短いのかは、なんとなくわかります。昔の木造住宅は防水(劣化対策)がしっかりしていないので、見るからに劣化が感じられ、その上基礎がテキトーだったり耐震性が低かったりするので、もっと良い家に建て替えたいと思うのは当然でしょう。
それほど寿命が短いと、外壁塗装なども放置しがちで、問題が起こるまで何もしない人も多くなります。そして、雨漏りなどの問題が起きてからは、ボロボロの家の延命措置にお金をかけるより建て替えたい、と思うのが普通です。
このため、多くの日本人には、住宅を定期的にメンテナンスする、という習慣が根付いていないのではないかと思います。
しかしこれは過去の話です。現在は、木造住宅でも構造に湿気が入らないよう考慮された工法が一般的になり、それなりの耐震性能が確保されています。30 代半ばで建てた住宅を、生涯(60 年程度?)利用することは十分可能でしょう。
メンテナンスを怠らなければ。
住宅を 60 年利用しようと思ったときにまず気づいておきたいことは、耐用年数が 60 年もある箇所はあまりない、ということです。どこかしら劣化します。換気などの機械設備や水まわりの寿命は当然として、その他の部材も劣化します。
そして、補修や更新がいつ必要になるのかは、不確定要素が多くあります。現在の住宅でも雨漏りなどは無縁ではなく、いつ起きてもおかしくありません。シロアリについても、定期的な薬剤散布や床下の点検は欠かせません。
メンテナンスフリーと聞くと、建てたら何もしなくていいような印象を受けます。多くの日本人の習慣には合っていますが、30 年以上住み続けるつもりなら、そんな家はありえません。
日頃のチェックや専門家による定期的なメンテナンスは欠かせない、という認識が必要でしょう。
塗り替え不要の外壁を採用する際の注意点
外壁塗装が要らないと言われる住宅でまず注意したいことは、屋根のメンテナンス計画です。
多くの住宅でよく採用されているスレート(コロニアル)屋根やガルバリウム鋼板には寿命があり、美観を保つには塗装も必要です。10 ~ 30 年で塗り替えが必要になり、材自体の劣化もあります。屋根の塗装は足場なしでできる場合もあるようですが、基本的には足場が必要になります。いくら外壁がメンテナンスフリーでも、屋根のために頻繁に足場を組んで塗装するのであれば、もったいないように思います。
この場合、塗装が要らない粘土瓦の屋根を採用するのも一案です。屋根が重くなるため耐震性能との兼ね合いを考慮する必要があり、部分的な補修は必要ですが、メンテナンスフリーの外壁とは相性が良いでしょう。個人的には、耐震性の高い枠組壁工法であれば瓦屋根を、在来軸組工法ではより軽量な屋根を採用するのがお勧めです。
一般に、メンテナンスフリーの外壁は非常に高価です。どうせ屋根(+軒天、ケラバ)のメンテナンスが必要になるのであれば、足場が必要なタイミングに合わせて外壁の再塗装を実施できるよう、それなりの外壁を採用するのも良いのではないでしょうか。
ちなみに個人的に注目している外壁材は、杉板です。無垢のままでも塗装しても利用でき、いつの時代でも入手できて、非常に安いのが特長です。DIY で作ったツーバイフォー倉庫の外壁に採用し、経過を観察しています。杉板の外壁は、「無印良品の家」でも採用されているそうです(参考外部サイト:「杉板張り外壁のワケ」)。
要はバランス
そんなわけで、住宅はメンテナンスフリーにこだわらず、価格と耐用年数、メンテナンススケジュール、入手の容易さなどをよく検討したうえで仕様を決めることが大事だと思います。もちろん、安くて高耐久で見栄えがよく、高性能なものは大歓迎ですが。
なお、メンテナンス費用を抑えて長く暮らしたい場合、家をシンプルにすることも効果的です。
バルコニーを無くせば、約 10 年ごとの防水措置が不要になります。
総二階にすれば、断熱性能、耐震性能も向上するし、シンプルな屋根形状にすれば雨漏りのリスクも減らせます。
わが家は外観重視で多少はリスクを取りましたが、バルコニーに関しては、外で洗濯物や布団を干さない生活だと使用することがないため、なくても良かったかなと思ったりもします。
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