壁倍率は高いほど良いか(住友林業のビッグフレーム構法を考える) | さとるパパの住宅論

壁倍率は高いほど良いか(住友林業のビッグフレーム構法を考える)

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耐震性能として耐力壁の壁倍率の高さを宣伝しているハウスメーカーは多数あります。通常は高くて5倍ですが、住友林業のビッグフレーム構法(BF構法)では壁倍率22.4倍相当(!)と自慢しています。壁倍率は高ければ高いほど地震に強いのでしょうか。

結論から言うと、壁倍率は高ければいいというものではありません。要は全体の壁量とバランス次第であり、高い壁倍率の壁を使用するほど他の部分の負担は増える傾向にあります。なぜそうなるのか、簡単な図から考えてみましょう。

左が必要な壁量だとすると、壁倍率がその2倍ある場合、右図のように壁の量が半分でよいことになります。大きな窓を付けたり、大空間をつくることができるということです。木造住宅では、水平方向の地震力に耐えるために必要な耐力壁の量が耐震等級ごとに決められています。壁の量を変えずに壁倍率が高い壁を採用するのであればかなり強度が増すと考えられますが、通常は壁倍率が高い壁を採用する分、壁の量を少なくします。

するとどうでしょうか。水平に力を加えたときに、壁と接する部分が少なくなるため、そこに荷重が集中してしまいます。つまり、壁倍率を高くすると、接合部の強度も上げる必要があるということになります。また、究極まで壁倍率を上げて壁を少なくすると柱と同じになってしまうため、ある程度幅が必要だということがわかります(壁の幅は、木造軸組工法の場合は600mm以上、枠組壁工法(ツーバイフォー)の場合は高さの1/3以上と決められています)。

このことから、壁倍率を高くするには限界があることがわかります。実際、建築基準法で認められている壁倍率は最大で5.0倍です。先ほど述べたように、周辺部の負担が増え、強度を上げる必要があるからだと思います。ビッグフレーム構法の22.4倍相当というのは、木造軸組工法ではない独自工法として認可されているから出せる数字です。ビッグフレーム構法とは、接合部に高強度の金物を融合させることで木造軸組工法の限界を超え、究極まで壁倍率を上げた構造であると言えます。

その技術力はすごいと思いますが、そのためにコストが増大していることは見逃せません。接合部だけでなく、集成材にも高価なものが使われていることでしょう。住友林業の近年の坪単価が上がっているのはこのためなのかもしれません。そこまでして木を使うより、鉄骨造りにした方が合理的なのでは、とも思ってしまいます。住友林業が鉄骨を造るわけがありませんが。

ビッグフレーム構法の耐震性は耐震実験の結果を見ると問題なさそうですが、建物全体の変形量が公開されていない点が気がかりです。構造はラーメン構造であり、荷重の負担は集中するため、揺れの大きさ(変形角)はツーバイフォーなどの面構造より大きくなるのではないかと考えています。通常の木造軸組工法と比較して優れているかどうかは不明ですが、耐震実験を行っているので、そのデータも公表していただきたいものです。

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