高断熱住宅の経緯と最新事情がわかる『本音のエコハウス』

『本音のエコハウス』は、2018年7月にエクスナレッジから発行された、高断熱住宅の生みの親である新住協代表理事の鎌田紀彦先生による最新書籍です。
工務店や住宅会社で働く人向けの専門誌『建築知識ビルダーズ』の記事を再構成した本なので、やや難しいところもありますが、いま少しずつ読み進めているところです。

木造軸組工法で高断熱住宅を建てる方は特に、そうでない方も参考になることが多いので、ここに紹介させていただきます。

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本の紹介

「はじめに」に書かれているように、この本が出されたのは、「高断熱住宅に関する情報が膨大に流れるなか、明らかに間違いと思われる情報も少なくないこと」を鎌田先生が危惧し、間違った住宅が建つ前にこれまでの経験と知識を紹介しておきたいと思ったから、とのこと。

似たようなテーマを扱い、温暖地で全室冷暖房が可能な高断熱住宅の普及を目指している当サイトとしても、間違った情報を流すことは本望ではなく、わざわざ指摘してくれる方はなかなかいないので、自分で勉強して正すとこは正さなければならないという思いで読んでいるわけです。

読んでいくと、これまで何となくわかったつもりになっていたことや微妙に引っかかっていたことがきちんと網羅されており、目から鱗が落ちることばかりです。と同時に、わが家を含む日本の住宅には多くの問題点があることがわかってしまい、建てた後には知ると後悔することも多々あります。

特に興味深いのは、何十年もかかわり続けているだけあって、日本の多くの木造住宅の問題点と改善策、それが普及した経緯が書かれていることです。日本に多い木造軸組工法で高断熱住宅を実現するためには工夫しなければならない勘所(気流止めなど)がたくさんあるのに、国の基準や現場ではまだまだ反映されていない現状が見えてきます。いつ頃に建てられた木造住宅にどのような問題があるのかがわかり、リフォームで改善する方法まで触れられています。

基礎断熱工法や外断熱工法などが広がった経緯や問題点も書かれていて、最近多い外壁への発泡断熱材の使用には主に防火の観点から基本的に反対であること、床下断熱も意外と良いこと、高断熱をローコストに実現する方法がたくさんあることもわかります。

そして、過去の話ばかりかと思いきや、換気や冷暖房方式についての最新動向も多く取り上げられています。歴史が浅い、温暖地における高断熱住宅のあり方も最近ではよく検討されていて、今後の発展が期待できそうなことがいくつも紹介されています。

Q1.0 住宅の冷暖房費や暮らし方についての詳細や、国の省エネ基準のレベルが低い理由もよくわかります。

当サイトの情報で物足りない方や、良い住宅を建てたいと思っている住宅関係者には是非読んでいただきたい本です。

個人的感想:ツーバイフォーの残念な現状について

私は鎌田先生らが木造軸組工法の改善に大きく貢献していることを知って感服したところですが、一方で強く感じたのは、日本での木造枠組壁工法(ツーバイフォー)の思い上がりです。

高断熱住宅をつくるにあたって、従来の木造軸組工法には多くの問題がありますが、ツーバイ工法にはそれがありません。ツーバイ工法は、気密も取りやすいし、耐震性も確保しやすいし、耐火性も、コストパフォーマンスにも優れています。それなのに、三井ホームをはじめとする日本のツーバイフォー業界はその基本性能だけで慢心し、改善の努力を怠っています。中には優れた工務店などもあるので、工法が悪いわけではありません。

三井ホームで住宅を建てたものとして特に感じるのは、金持ち相手の商売だからか、コストのかからない冷暖房方式に無関心ということです。新住協では木軸工法にまつわるいくつもの問題をクリアし、気密性能も大幅に改善してきたというのに、三井ホームではいまだに気密に無関心、空調・換気計画は設備会社にほぼ丸投げですし、換気による熱損失が大きいこともまったく気にしていません。この本を読んでいて気付く問題点は、山ほどあります。

三井ホームは HEAT20 に参加しているのだから、必要性をわかっている人はいるはずです。それなのに改善する気配がないことは非常に残念で、もったいないことだな、と思います。木軸工法における新住協のように、ツーバイフォー工法でも本当の高断熱・高気密住宅を目指す集団が現れてほしいものです。

追伸:ダクトレス第一種換気システムの問題商品について

この本を読んでいて一つ気になったのは、ダクトレスの第一種換気システムに関する以下の記述です。

熱交換効率は70%ぐらいが標準であるにもかかわらず93%と誤った表示をして販売している製品(中略)など問題のある商品も出回っている

ひょっとして、同じ新住協の理事を務めている方が一時期だけ推薦していた、あの商品のことでしょうか。

カタログ上はすごく優秀なのに、最近では推薦されていないこと、ダクトレス換気に詳しい設計事務所で採用されていないことから少し怪しい気がしていたのですが…。まぁ、仕組みが間違っているわけではないので、数値がカタログより悪いだけで多少の効果はあるのかもしれませんが。

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