寒冷地並みの気密仕様が標準になると高断熱住宅が変わる | さとるパパの住宅論

寒冷地並みの気密仕様が標準になると高断熱住宅が変わる

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寒冷地で始まった高気密・高断熱住宅の仕様は温暖地でも望ましいものであるため、温暖地の仕様にも組み込まれていく傾向にあります。

その高断熱住宅の生みの親である鎌田先生の『本音のエコハウス』(2018.7)を読んでいたら、驚くべき記述が見つかりました。

平成28年省エネ基準住宅の仕様が気密化工法になったので、仕様書どおりに住宅をつくれば気密性能を示す C 値が 2.0 以下になる、と書かれていたのです。

これまでの私の認識では、木造住宅の気密仕様は温暖地と寒冷地(1~3 地域)とで分けられ、温暖地は C 値 5.0 以下相当の仕様で、寒冷地のみ C 値 2.0 以下相当というものでした。それがいつの間にか、全国的に 2.0 以下の仕様が標準になったのかと思ったのです。後述するように、これは大きな進展です。

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寒冷地並みの気密仕様が全国標準化?

平成28年省エネ基準とは、UA値が導入された H25 省エネ基準を一部見直したものです。この H28 省エネ基準が施行されたのは、平成 29 年 4 月 1 日なので、寒冷地並みの気密仕様が全国標準になっているならば、すでに施工されているはずです。

しかし、ネットで調べて見ても、そのような情報は見当たりません。そこで 2019 年版の木造住宅工事仕様書を取り寄せて確認しましたが、それでも大きな変更点は確認できませんでした

おそらく、執筆時には予定されていたものの、最終的に現場の混乱や反対を考慮して見送られてしまったのでしょう(2020 年からの省エネ基準義務化と同様)。

ついでに鎌田先生が問題視している「気流止め」の仕様が改善されたかも確認してみました。断熱等性能等級 4 の仕様では壁内空間が小屋裏や床下の空間と遮断される、適切と思われる気流止めが掲載されています。しかし、フラット 35 対応の標準仕様では適切かどうかを判断できる図説は見つかりませんでした。不適切な気流止めの図はなくなったものの、きっちり規定されているわけではなく、業者がこの問題を認識しているかどうかは不明なため、今後もチェックしていく必要はありそうです。

高気密化に期待する高断熱住宅の変化

見送られてしまったことは残念ですが、そのような高気密化の動きがあり、いつか標準化されるかもしれないということは重要です。

というのは、高気密住宅が一般的になれば、高断熱住宅の選択肢が一気に広まるからです。

当サイトでは常々少なくとも C 値 1.0 を切りたいと言っていますが、現在、このレベルを実現できる住宅会社は多くありません。C 値と高断熱の両方にこだわると、防火やコストなどに難もある発泡プラスチック系断熱材を吹付けや外断熱として採用している住宅会社を選ばざるを得ないケースが多い、という現状があります。

しかし、寒冷地並みの気密仕様が普及したら、これが変わります。C 値 2.0 以下では不十分ではないかと思うでしょうが、気密性能は工法によって差があります(参考データ)。おそらく、枠組壁工法(ツーバイフォー)と、軸組工法でも壁全面に構造用合板などを張る工法(パネル工法)であれば、C 値 1.0 以下は可能になってくるのではないでしょうか。

重要なのは、このような工法を採用できる住宅会社は結構多いということです。現状では、パネル工法やツーバイフォーの住宅会社は工法として有利なのに高気密に疎いところも多いのですが、全国的に高気密仕様が標準になれば、消費者にとって幅広い業者で高気密・高断熱住宅を建てられるようになることが期待できます。

温暖地では、グラスウールやロックウールの繊維系断熱材などによる充填断熱と、高性能複層ガラス(ペアまたはトリプル)、熱交換型換気などを組み合わせるだけで、十分に高性能な高気密・高断熱住宅を実現できます。

ちなみに繊維系断熱材にも問題はありますが、多くは気流止めに問題があるために壁内に水分が入ることで発生しているものと認識しています。きちんとした高断熱住宅であれば問題はないでしょう。

今後、このレベルの高気密住宅の仕様が普及することを切に願っています。

参考
断熱材と断熱工法は何がよいか?
Q値C値に現れない高断熱住宅の要「気流止め」の問題

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