以前書いた「低気密・中気密は何がどう問題なのか」という記事を読み返してみたら、壁内結露に関してあまり書いていなかったので、この記事で補足したいと思います。
換気での湿った空気の流れの方向についての話です。
換気方式による隙間風の方向
まず、換気システムがない場合の自然換気について、隙間風の空気の流れを確認します。
自然換気は温度差換気と風圧換気を合わせたものですが、風向きを考えると複雑なので、温度差換気のみについて着目します。
温度差換気の隙間風の方向と圧力を図に表すと、次のようになります。
暖かい空気は軽くて密度が低いので上昇し、建物の上部が正圧、下部が負圧となります。
このため、家の隙間を通る気流は、上部では “室内→外気” の方向、下部では “室内←外気” の方向になります。
この隙間風の量や方向は、第一種換気の場合、自然換気と同じです。第一種換気では吸気と排気の換気扇を同時に動かすため、室内空気に圧力の変化を生じさせないからです。
一方、第三種換気では、排気の換気扇のみを動かすため、室内空気全体に一定の負圧がかかります。そのため、隙間風の方向と圧力は次のようになります。
圧力分布図の斜線が左に移動するわけです。
その結果、住宅下部ほど隙間風が入りやすい状態になりますが、気流の方向はほぼ “室内←外気” となります。
気密性能の隙間風への影響
気密性能が高いほど(隙間が少ないほど)、温度差換気(自然換気)の影響は小さくなります。温度差による上下の圧力差が存在していても、隙間が少ないと抵抗が大きく、すき間を通じた空気の移動量が減るからです。このため、計画換気の想定に近い換気が行われることになります。
第三種換気で気密性能が低い場合、温度差換気の影響が大きくなり、室内空気全体にかかる負圧が小さくなります。その結果、温度差換気の図に近い状態となって、建物上部が正圧になり、”室内→外気” の気流が発生してしまうことになります。
室内から外気への気流の問題
ここで、「”室内→外気” の気流が発生してしまう」と悪いことのように書きましたが、隙間を通る “室内→外気” の気流はなるべく少ないほうが良いと思っています(換気扇による “室内→外気” の気流は問題ありません)。
それは、冬季において、室内の空気は外気よりも温度と絶対湿度がともに高く、壁内で冷やされることによって結露が発生する可能性があるからです。
これが問題になるかどうかは、程度の問題です。壁内結露の量が多く、長期にわたって蓄積されるのであれば、構造部材が劣化し、住宅の寿命にかかわる問題になりかねません。
とはいえ、以下の条件のうちのいくつかを満たしていれば、問題ないかもしれません。
- 気流止めがあり、壁内空気が動きにくい
- 壁内の水蒸気が放出される仕組みがある(外壁通気層など)
- 室内側にある防湿層に切れ目がない
- 室内の絶対湿度が高くない
問題かどうかはケースバイケースであり、数十年経たないとわからないことなので、本当に微妙です。
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わが家の場合、1と2は問題なさそうですが、3と4に関しては問題がありそうです。それでも楽観的な私は気にせず加湿しまくって生活していたのですが、先日、少し心配になることがありました。
というのは、家中のコンセントボックスをチェックしていたら、外壁面にある気密化されていないコンセントボックスだけ、内部の金属パーツが錆びついていたからです。隙間を通じて壁内に水蒸気が流入し、結露が発生していることを実感させられ、やはり隙間はないに越したことはないと思った次第です。
室内から外気への気流を防ぐには
以上より、隙間で室内から外気への方向に気流が発生することは抑えるべきです。そのためにどうすればよいかというと、気密性能を高めることが大切です。
第三種換気なら、気密性能を高めれば家中が負圧になり、隙間を通る気流も “室内←外気” の方向になりやすくなります(実際には風の影響があり、一部の方位や一時的に逆になることはあると思います)。
第一種換気では、内外で圧力差がないため、少しでも隙間があれば、その気流は “室内→外気” の方向になりがちです。これを防ぐには、第三種の場合以上に気密性能を高める必要があるでしょう。方向を変えることはできないので、壁内を通る気流の量を少しでも減らすという対策です。
以前、「第一種換気に要求される気密性能についての疑問」という記事で、第一種換気には非常に高い気密性能が求められるらしいけど、よくわからないところがある、ということを書きました。これは換気による熱損失に着目した話でしたが、壁内結露の観点から見ても、やはり第一種換気には高い気密性能が要求されそうです。
わが家は高気密でもないのに第一種換気を採用してしまったので、もう手遅れです。それでも、築後でも気密を改善できる箇所はあるので、少しでも改善を試みているところです。築後の気密改善では、当初の気密層とは別の箇所で隙間を塞がなければならなかったり、どうしても改善できないところがあったりするので、これから家を建てる方は最初から対策することをお勧めします。
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