冬暖かく夏涼しい家にするために重要な断熱性能は、外皮平均熱貫流率(UA 値)を調べれば簡単に比較できます。ここでは、注文住宅の大手ハウスメーカー(年間3千戸以上販売している全 12 社)を対象に UA 値をランキング形式で紹介します。UA 値はすべて公式サイトやプレスリリースで確認した情報です。公開情報が不足している会社はランキング対象外として解説しています。なお、断熱性能がいくら高くても、気密性能が低くては意味がないため、各社の気密性能(C値)にも簡単に触れます。ランキングは以下のとおりです。
UA 値ランキング
第1位:一条工務店
UA=0.28(i-シリーズII)
「家は性能」の一条工務店。外壁に内外ダブルの発泡系断熱材を採用し、窓には樹脂サッシのトリプルガラスを標準採用しているだけあり、他を圧倒する断熱性能を実現しています。ツーバイシックス工法に準じた i シリーズが特に高断熱ですが、他のモデルも十分に高断熱と言えます。また、気密性能を表す C 値(小さいほど良い)も実測平均値が 0.6 を切っており、高レベルです。詳しくは次の記事で紹介しています。
第2位:アイフルホーム
UA=0.30(セシボ極)
ローコスト住宅を供給している LIXIL 住宅研究所のアイフルホーム。木造軸組工法のフランチャイズですが、2017年8月に発表されたこの最上位モデルでは一条工務店に近いレベルの高断熱・高気密住宅をより低価格で販売しています。構造用面材と断熱材を一体化したパネルを採用することで高い耐震性と断熱性を実現しており、制震装置も搭載しているようです。同時に発表された「セシボ零」でも仕様しだいで高い性能を確保できるため、こちらも注目です。どちらにしても、C 値は 2015 年度実物件測定平均で 0.61 とのことなので、日本の大手では最高レベルです。詳しくは次の記事で紹介しています。
第3位:三井ホーム
UA=0.43(標準仕様)
ツーバイ工法を代表する三井ホーム。ツーバイシックス工法(プレミアム・モノコック)が標準になったため、壁の断熱材に厚みがあり、他のハウスメーカーより少し高い断熱性能になっています。ただ、屋根の断熱性能が標準ではやや劣るのため、夏の快適性を考えるとアップグレードがお勧めです(全館空調を採用しない場合は特に)。
窓を樹脂サッシやトリプルガラスにグレードアップすればより高断熱な住宅にすることもできます。C 値を測っていないのが残念ですが、気密性能を確保しやすい工法のため、1.5 を切る程度は期待できそうです。詳しくは次の記事で紹介しています。
第4位:セキスイハイム(住友林業と同順位)
UA=0.46(木質系グランツーユー)
積水化学工業のセキスイハイムには鉄骨系と木質系があり、断熱性能では木質系が勝っています(鉄骨の UA 値は 0.60)。木質系の中でもグランツーユーはツーバイシックスなので、三井ホームと同様に高い断熱性があります。窓をグレードアップすればより高断熱な住宅にすることもできます。 また、C 値を測定しており、1.0 を切るレベルを実現しています(鉄骨は 2.0 未満)。詳しくは次の記事で紹介しています。
第4位:住友林業(同順位)
UA=0.46(マルチバランス構法)
在来木軸工法を代表する住友林業。在来工法なので外壁の断熱材の厚みをツーバイシックスほど取れないはずなのに、UA 値はグランツーユーと同じになっています。そのカラクリは、公式サイトの注意書きにちゃんと書いてあります。
※熱損失量の軽減を図るため、開口面積を抑えた当社シミュレーション(50坪)による試算です。
どこのハウスメーカーも断熱性能値は多少なり美化していますが、これは標準的ではないとちゃんと宣言されています。。。。ちなみに、近年宣伝しているビッグフレーム構法の UA 値は見つかりませんでしたが、おそらく同レベルでしょう。気密性能については、測定しておらず、工法からすると 2 前後と推測しています。
第6位:ミサワホーム
UA=0.54(木質系標準仕様)
トヨタホームの子会社となったミサワホームは鉄骨系と木質系に分かれており、木質系は鉄骨系よりも高断熱にすることができます。参考までに、木質系の高断熱仕様は UA=0.43、鉄骨系標準仕様は UA=0.66、子会社 MJ Wood (木造軸組工法)の 高断熱仕様は UA=0.62 です。 気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(5.0以下?)。
第7位:ダイワハウス
UA=0.55 (xevo Σ Grande)
UA 値はハイクラスプラス断熱仕様での数値しか確認できませんでした。標準の断熱仕様はこれより 2 段階下がることになるため、標準の断熱性能は他社に後れを取っている印象です。木造は鉄骨よりは高レベルの断熱性能と気密性能が期待できます。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(木造は2前後?、鉄骨は5.0以下?) 。
第8位:トヨタホーム
UA=0.60(ESPACiO)
2015年11月のリニューアルにより標準仕様の断熱性能が向上しました。ちなみに、シンセシリーズ(鉄骨ラーメン構造)の UA 値は 0.70 です。気密性能については、鉄骨系にしては珍しく公開しており、モデルプラン平均の C 値は 2.8 だそうです。
ランキング対象外
以下は、公開情報が不足しているために評価対象外とした大手ハウスメーカーです。どこも ZEH に対応可能(=UA 値 0.6 以下も可能)なので、すべて 8 位のトヨタホームに劣るわけではないことにご注意ください。
積水ハウス
UA≦ 0.60?
日本最大のハウスメーカー。UA 値は見つかりませんでしたが、多くの場合 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で「ゼッチ」と読みます)の要件(UA 値 0.6 以下)を満たしているようです。材質から考えて、木造のシャーウッドの方が鉄骨よりも断熱性能を確保しやすいでしょう。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(シャーウッドは 2 前後?、鉄骨は 5.0 以下?)。詳しくは次の記事で紹介しています。
へーベルハウス
UA≦0.60
2017年5月から「ヘーベルシェルタードダブル断熱構法」が標準仕様となり、ほとんどの商品で ZEH の要件を満たす UA 値を確保できるようになったようです。鉄骨にしては健闘しています。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(5.0 以下?) 。
パナホーム
UA≦0.60(NEW『CASART』)
2015年のリニューアルで主力商品の標準仕様の断熱性能が向上しました。気密性能については測定しておらず、工法からしてもあまり期待できません(5.0 以下?) 。
タマホーム
UA≦0.87
木造軸組工法のローコスト住宅大手のタマホーム。UA 値の情報は見つかりませんでしたが、H25 省エネ基準は標準でクリアするそうなので、上記の UA 値になります。断熱仕様の選択肢が多く、トリプルガラスや高断熱サッシ、吹付けウレタン断熱などを採用すればかなりの高断熱に対応できるものと思われます。気密性能についての情報は見つかりませんでしたが、吹付けウレタン断熱では高い気密性が期待できそうです。
総評
ZEH 支援事業の開始以降、これまで断熱性能が高くなかったハウスメーカーも UA≦0.60 を目指すようになったようです。このレベルでは、関東でもはっきりと快適さを実感することができます(当サイトでは、家中に冷暖房を効かせても省エネになる UA 値 0.4 程度を推奨しています)。高性能化は良い傾向ですし、今後はトリプルガラスや樹脂サッシの普及・低価格化が見込まれるため、ますますの高断熱化が期待できます。
しかし一方で、気密性能については ZEH などの要件になっていないため、多くのハウスメーカーの意識が低く、世界的に見て低レベルなままです。どれほど UA 値が低くても、すき間風が入るようでは保温効果が薄れるため、今後の改善が期待されます。
住宅選びに失敗したくない方は、当サイト推薦図書や各記事をご覧ください。
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