建物の周囲に庭木を植えるときに心配なのが、庭木が育つことで住宅に悪影響を与えないかという問題です。
これについて、農学部で林学とコンクリート工学をかじった者として考えてみたいと思います。
基礎に対する庭木の影響
よく心配になるのは、庭木が成長することによって根が基礎を破壊しないかという問題です。
街路樹を見ていると、根っこによってコンクリートが壊されているように見えることがあります。
しかし、大抵の場合、壊されているのはコンクリートではなくアスファルトです。
石の塊のようなコンクリートと違って、アスファルトはベタベタする砂や小石を押し固めているだけなので、内側から引張応力が発生すると簡単に変形してしまいます。
コンクリートなら問題は少ないし、鉄筋コンクリートであればなおさら問題ありません。コンクリートの引張強度は圧縮強度ほど強くありませんが、鉄筋コンクリートであれば鉄筋が引張応力を受けて補完することができるからです。
それに、根っこが欲しいのは水なので、コンクリートの大きな割れ目に湿った土があるならともかく、わざわざ乾いた基礎コンクリート側に根を伸ばすインセンティブはありません。自然の岩が割れる原因は木の根のせいではなく、しみ込んだ水が氷になるときの膨張圧力の影響です。
そういうわけで、昔の簡易な基礎の住宅はともかく、近年多くの住宅で採用されている鉄筋入りのベタ基礎であれば心配はいらないでしょう。
造園会社の人にも一応聞いてみましたが、わが家の基礎なら全く問題ないとのことでした。
とはいえ。
住宅のすぐ近くに太く大きくなる木(ケヤキや桜など)を植えることは、避けたほうがいいと思います。直接影響しなくても、将来切った後、根が腐ってシロアリの住処になるからです。住宅のすぐ近くに大きなシロアリの巣があることは避けたほうがいいでしょう。
排水に対する庭木の影響
排水にも雨水の排水と生活排水があります。雨水排水に関しては、庭に土と木があると保水作用があり、都市部では洪水を緩和する機能が期待されます。
ただしメリットばかりではありません。各家の排水でよく問題になるのは、植物が排水経路を塞いでしまう問題です。庭に小さなマンホールみたいな排水桝(マス)がありますが、住宅のメンテナンス担当者によると、ここが木の根で詰まることは、よくあるトラブルだそうです。フタを開けて見るだけなので、年に一度でも点検することをお勧めします。
また、排水管の継ぎ目の隙間から木の根が入り込み、排水管がつまるトラブルも時々あるそうです。老朽化か接続の甘い排水管から漏れている水分を求めて、木が根を伸ばしてくるのでしょう。庭木を植える際は、排水経路を確認し、多少なり避けるようにしたほうが無難かもしれません。
木が高くなり、屋根に葉が落ちるようになると、雨樋に落ち葉がたまって詰まることもあります。自分でメンテナンスできる場所なら良いですが、私は木が屋根を超えない高さで管理しようと思っています。
外壁に対する庭木の影響
庭木は外壁にも影響を及ぼします。木の枝などが風で揺れてぶつかって汚れることもありますが、特に気になるのは外壁塗装の足場設置です。足場を組むには 60cm 前後の奥行きが必要なので、その空間は確保できるように管理したほうがよいでしょう。
木を外壁や窓の近くに配置すると日よけとしての効果は高まりますが、日よけとしてうまく管理することは難しいものです。
方位別には、東西面は日の角度が浅いので、窓から離れていても日除けになりやすくなります。
南面は、落葉樹を配置すれば夏に日射を遮り、冬に日射を取り込むので最適に思えます。しかし、夏の高角度の日射を防ぐには窓のすぐ近くを高密度の葉で覆う必要があります。これは難しいので、軒や庇のほうが確実でしょう。そうすれば、建物のすぐ近くに樹木を配置する必要もなくなります。
その他の影響
その他にも、木があることによる住宅への影響はさまざまです。
・日射熱を緩和する
・近隣との間の遮音性が増す
・プライバシーを確保できる
・防火機能がある(樹種による)
といったメリットもあれば、防犯面の注意が必要になることもあります。
野鳥やタヌキが訪問してきたり、果樹にハクビシンなどの外来生物がやってくることもあります。
自然のものなので、枯らしてしまったり、台風で倒れたりと、なかなか思い通りにはなりません。それでも、いろいろと考え、時間をかけて庭をつくっていくことは老後の趣味や運動にもなり、面白いなと思っています。
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