以前、全熱交換型の第一種換気で熱交換されるのは一部だけという問題と対策について書きましたが、その件について、確認のため空調メーカーとハウスメーカーに問い合わせた結果を紹介しておきます。この問題を初めて知った方は、まず上記記事をお読みください。
参考までに、わが家の場合、換気装置での(熱交換される)換気風量は 233 ㎥/秒、トイレ 2 箇所と風呂の換気風量が最低で 118 ㎥/秒です。実際には、トイレや風呂の換気を強運転にすることもあるし、キッチンのレンジフードによる換気もあるので、換気装置を通らない換気量はもっと多くなります。
空調メーカーに問い合わせた結果
「家全体の排気量の合計のほうが給気量より多くなるので、その分の空気の流れや熱交換はどうなるのか」といった趣旨で換気装置のメーカーに質問したところ、その回答は、「機器だけでなく住宅に関連する問題のため、住宅会社に問い合わせてくれ」という内容でした。
どの住宅でも全熱交換型換気を採用すれば実態としてそうなるというのに、その丸投げの回答には呆れてしまいます。
まぁ、住宅によるというのも真実なので、大した回答は期待できませんがハウスメーカーにも問い合わせてみることにしました。
ハウスメーカーに問い合わせた結果
同じ内容で問い合わせたところ、その回答は、「確かに排気量のほうが大きくなるが、その量はわずかであり、局所換気はそこが負圧になる」とのことでした。
これ以上聞いても無駄だと思い、しつこく聞くことは止めましたが、これはおかしいと思います。その理由は以下のとおりです。
排気量が多い分の空気の流れを推測する
ハウスメーカーの言い分ではトイレや風呂が負圧になるだけ、とのことですが、例えば風呂で排気の換気扇が回っている場合、空気の流れはどうなっているでしょうか。風呂のドアが完全に密閉されるなら浴室だけが負圧になると思われますが、実際にはドアは通気するようになっています。つまり、脱衣所などから風呂場に向かって空気が流れているのです。風呂のドアを閉めてティッシュをかざせば、気流でペタっと張り付いて落ちてこないので、気流があることは確認できます。
他の部屋から空気が流れているならば、家の内部全体が負圧で安定するか、どこかから同量の空気が入り込んでいるはずです。家の内部に負圧が働くというのは、第三種換気と同じ状況です。このとき、わが家のような気密性能が特に高くない住宅の場合は、すき間から空気が入り込みます。このことは、第三種換気の気密性能と給気量の関係から容易に推測できます。
一方、ものすごい気密性能が高い住宅では、負圧で安定する可能性もあります。しかしおそらくは、第一種換気装置の給気量が増えるのではないかという気がします。メンテナンス時に第一種換気装置を完全に停止しても、給気口から結構な風量の外気が入ってくるからです。家のすき間と、第一種換気の給気口の両方から外気が入っているのでしょう。
ちなみにわが家では、風呂の換気扇を弱から強にしたときに、遠く離れた部屋の換気量が増えることが確認できました(ティッシュ法(?))。これは、引き違いサッシなどのすき間から入る空気が増えたのだろうと考えています。
そんなわけで、全熱交換型の熱交換効率が実際は低いというのは、ハウスメーカーが認めなくても事実だろうと思っています。もちろんそれは、換気装置の性能表示に偽りがあるわけではなく、住宅の換気の実態としてそうなる、というものです。
この問題は鵜野日出男氏のブログを読んでいて知ったことですが、第一種換気を検討するうえで大事なのに無視されている大きな問題だと感じています。
湿度の維持効果はどうなるか?
なお、実際の熱交換効率が低いというのと似た問題で、換気による湿度の維持効果はどうなるかという問題があります。全熱交換型換気では室内の湿度を維持できるという特有のメリットがありますが、換気装置を通らない換気が多いのであれば当然ながら湿度の維持効果も落ちることになります。
しかし、高気密な住宅で、すき間から空気が入らず、換気装置を通る給気量だけが増える場合を考えると、単体の換気装置では難しいかもしれませんが、全館空調ではその分の空気も除加湿される可能性があります。あくまで可能性で、実際のところはよくわかりません。空調機の換気装置の機械的な仕組みについて詳しいことはわからないので、専門の方からコメントをお待ちしております。
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