FIT終了後の買取価格は安すぎる?電力の価値は kWh で評価できない

2009 年に導入された固定価格買取制度(FIT)の買取期間が 10 年で終了するため、これからは FIT を卒業する住宅が続出していきます。これにより、これまで 48 円/kWh(2009 年時)だった売電価格は自由化され、8~10 円/kWh 程度まで落ち込むものと見られています。

普通に電力を使用する場合の単価は 27 円/kWh とかなので、8 円/kWh というと非常に安く買い叩かれている印象を受けます。これは太陽光発電に対する不当な圧力か何かが働いているせいなのでしょうか。

私は逆だと思います。これまで優遇されてきた再生エネルギーの規模が大きくなり、影響が大きくなってきたことで優遇措置がなくなった結果なのでしょう。電力会社が小規模で不安定な太陽光発電を売り買いするためには送電網の整備などで大きなコストが発生するはずで、それらを組み込んで元が取れるようにするためには、買取価格を下げるしかなかったのでしょう。

つまり、今後の低い買取価格が本来の価値なのです。

ここで注目したいのは、電力にはさまざまな単価(kWh あたりの価格)が設定されているという事実です。電力の価値は kWh という量だけで決まるものではありません。

電気は蓄えることができない(蓄えるコストが高すぎる)ことから、電力会社はさまざまな電源を組み合わせて需給を調整しています。不安定な再生エネルギーが増えれば、それに対応してバックアップできる体制を整える必要があり、そのために大きなコストもかかります。不安定な電源の比率が増えて調整が困難な状況になれば、出力を調整しやすい電力の価値は高くなり、逆に不安定な電力の価値は低くなります。

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太陽光発電はエコか?

いくら太陽光の買取価格が低くても、「エネルギー収支がプラスになるのであればエコだ」という意見もあります。

太陽光などの再生エネルギーの評価手法として、エネルギーペイバックタイムEPT、エネルギー回収年数)という指標があります。投入エネルギーをエネルギー生産で回収できるまでの期間を示すもので、太陽光発電の場合は 3 年だとかそれ以上だとか以下だとか言われていますが、1 以上であれば環境に良い、というわけです。

しかし、この考え方にはそもそも大きな欠陥があります。

エネルギー量(電力量)だけを問題にしていて、電力の安定性・調整力・規模などの価値を考慮していないからです。ライフサイクルアセスメントで太陽光発電に高い CO2 削減効果があると計算できたとしても、それは一面的な見方でしかありません。

たとえば不安定な太陽光発電の比率が大きくなると、同時にバックアップ電源の需要も高まります。出力を調整しやすい火力発電の必要性が高まることになるわけです。不安定な電源の価値は下がり、買取価格が下がったり、出力制御が必要になったりすることも予想されます。

その結果、太陽光で発電された電力の利用率が下がり、電力構成が変化を強いられることで仮に社会全体の CO2 排出量が増えたとしても、それは EPT では評価できないのです。

発電量 1 kWh あたりのコストにしても同じことです。いくら太陽光などの発電コストが低くなってきていても、極端な例として太陽光発電の割合が 100% となったときの夜間や雨天時のことを考えるとわかるように、単独で成立しないことには注意を払う必要があります(蓄電池を含めて考慮するなら問題ありません)。

それではどうすればよいのでしょうか。

非現実的な解決策?

CO2 の排出量だけを考えれば、既存の原子力をベースとし、残りの需要を水力(揚水)や少量の再生可能エネルギー、火力などのミックスで補完したほうが CO2 は減らせるはずです。電気料金としてもそれが一番安くなるはずで、その道から外れれば外れるだけ電気料金は高くなるものと思われます。

原子力発電は安くはありません。ただ、新設するとなるとコストもかかりますが、すでに巨額が投資されている既存の設備を活用する場合には、活用しないで維持費用だけかかる場合よりは低コストな運用になります。将来的にゼロにするにしても、です。

太陽光では蓄電池を活用すればいい、という意見もあります。が、導入を検討した方はわかるように、現在はとてもコストに見合うものではありません。将来的に安くなってペイできるようになるとしても、それがいつになるのかはわかりません。

そのときが来るまでは、まだ使える原子力発電所を活用し続けたほうがよいはずです。CO2 や経済の観点からは。

原子力発電については複雑な(時として感情的な)その他の問題が大きすぎるので、その是非は述べませんが、再稼働に非常に慎重な姿勢は今後も変わらなそうなので、原子力の活用はもはや非現実的なことなのかもしれません。

つまり、日本のエネルギー事情は今後も楽観できません。不経済なことをしていて電気料金が上がると、元々コストの高い再エネは採算がとりやすくなります。しかし、日本全体の電気料金が高くなり、製造業が海外に移転して雇用が減り、CO2 の総排出量が増え、あらゆる産業・生活のコストが増えることは、日本にとって本当に望ましいことなのでしょうか。

上記の問題はすでに表面化していますが、今後も進むことです。太陽光発電は、ある程度までは望ましいものですが、増えれば増えるほどよいものではありません。たとえ太陽光+蓄電池でペイできる状況になったとしても、太陽光だけで大都市のエネルギーをすべて賄うのは面積的に無理があります。風力にしても似たような問題があります。

エネルギー問題は難しいです。そんなわけで、個人が住宅でソーラー発電を設置するかどうかは、好きにすればよいことだと思っています。

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