第一種換気の熱交換率は本当に90%もある?

全熱交換型の第一種換気システムでは、多くの製品で 90% 程度の熱交換率(温度交換効率)が宣伝されています。熱交換率は、高ければ高いほどよいものです。

しかし、宣伝パンフレットに熱交換率 90% と書かれていても、実際の住宅で使用する際に 90% の熱交換率が実現できているかというと、そうではありません。

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熱交換率 90% の詳細

熱交換率のデータは、通常、パンフレットに 1 つしか書かれていません。
それがどういう条件で得られた数値なのか、どのくらいの幅があるのかについては不明です。

とあるダクトレス換気システムには、温度交換効率が「最大」93% と書かれていますが、最大値以外の詳細データは見つかりません。それなのに、暖房費の節約シミュレーションは 93% の数値を元に計算されています。

わが家のダクト式換気システム(東芝キヤリア)は、カタログなどには記載がなく、取扱説明書をよく読むと、風量 250 ㎥/h の「強」運転では温度交換効率 78%(全熱交換効率は 70%)、風量 150 ㎥/h の「弱」運転では 81.5% と書かれています。風量が弱いほうが高効率なようです。ただし、測定条件などは不明です。

実際はどのくらいなんだろうというのは長年疑問だったのですが、たまたま、別の換気システムで細かい情報が公開されているのを発見しました(きちんと公開してくれているのでメーカー名は伏せます)。

その全熱交換型第一種換気装置は、資料をパッと見たところ、温度交換効率 90%と書かれています。それなら、わが家の換気装置よりも高効率です。
ただし、この数値には、「風量100m³/hで運転した際のエレメントユニット単体での値」との注意書きがあります。

さらに細かい資料を確認すると、同装置について、次の表が見つかりました。

この表の数値を見てまず驚いたのが、90% という数値がどこにも見当たらないことです。注意書きに書かれている測定条件の違いが影響しているのか、最高でも 80% です。注意書きの内容からは、こちらの表の数値のほうが実環境に近い感じがします(現実よりはダクト短め?)。

また、表を見ると、設定風量を強くするほど温度交換効率が落ちる傾向も見えます。カタログ値に近い熱交換効率を実現するためには、余裕を持たせた換気設備を用意し、弱運転で運用しなければならないのでしょう。

この装置を、床面積 100㎡、天井高 2.4m、換気回数 0.5回/h で使用するならば、換気設備の必要風量は 136 ㎥/h ほどなので、温度交換効率は 76%、全熱交換効率は 69% あたりになりそうです。この数値で比べると、わが家の換気システムとの性能差はほとんどないか、わが家のほうが高性能な感じがします。

そういうわけで、カタログなどで温度交換効率が 90% などと書かれていても、実際の温度交換効率や全熱交換効率は、それよりも何割か劣るものと考えておくのが無難そうです。車の燃費や、エアコンのエネルギー消費効率とかと同じですね。

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熱交換率が低いと何がまずい?

実際の熱交換率が 90% より低い場合、どのような問題があるのでしょうか。

熱交換換気が効果を発揮するのは、内外温度差が大きい時期です。つまり夏と冬で、メインは冬です。

夏については、熱交換換気を使用する場合、室内より高温な外気を取り込む影響が軽減されるため、エアコンの冷房負荷が軽くなります。冷房負荷が軽くなると、温度だけをみて冷房運転を行う場合は省エネになりますが、再熱除湿運転を利用して湿度も含めた快適性を追求すると、省エネではなくなる場合もあります。

参考 冷房期の第一種換気のデメリット?【熱交換換気と再熱除湿の関係】

省エネ効果だけをみた場合、夏の熱交換換気の効果はもともと微妙です(各部屋の快適性に関しては、エアコンのない部屋が高温多湿な外気の影響を受けにくくなるので、メリットがあります)。なので、熱交換率が 80% であろうが 90% であろうが、大きな差はなさそうです。

冬については、熱交換換気を使用すると、換気による熱損失が減るため、暖房負荷が軽くなります。湿度に関しても乾燥しにくくなるため、冬は熱交換換気によるメリットを享受しやすい時期といえます。

それでも、第一種換気システムはもともと第三種換気システムより消費電力が大きいため、省エネ効果を得るためには、この消費電力の増分を打ち消す以上の熱回収が行われる必要があります。熱回収が多くなる条件は、内外温度差が大きいことと、熱交換率が高いことです。ここで、熱交換率は高ければ高いほど、内外温度差が小さい条件でも省エネ効果を得やすくなります。反対に、熱交換率が低い場合には、内外温度差が非常に大きい、限られた条件のときにしか省エネ効果が得られないことになります。寒冷地はともかく、温暖地ほど効果は限定的です。

細かいことを書くと、省エネ効果を得るためには、暖房器具のエネルギー消費効率が影響します。換気の消費電力を評価するには、回収した熱を暖房器具で暖める場合の消費電力で比べる必要があるからです。数式で書くと、省エネ効果があるといえるのは、次の条件を満たすときに限定されます。

熱交換換気の消費電力増分[W] < 熱交換換気による回収熱 [W] ÷ 暖房エネルギー消費効率(COP)

または

熱交換換気の消費電力増分[W] × 暖房エネルギー消費効率(COP)< 熱交換換気による回収熱 [W]

たとえば、熱交換換気システムの消費電力が第三種換気より 80 W 大きく、暖房 COP が 4 であるとすると、熱交換換気によって熱損失量を 320 W 以上減らせる条件になってようやく省エネ効果が出始めるということです。

熱交換換気による回収熱 [W] は、「換気分の熱損失係数 × 床面積 × 内外温度差 × 熱交換効率」で計算できます。
ただし、この計算は、換気量が同じであること、高気密であること、局所換気がゼロであることを前提としているので、実際には熱交換換気はもっと不利です。

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この記事で書いた内容は、熱交換換気による省エネ効果が実際は小さかったりマイナスだったりするということなので、熱交換換気システムの広告でうたわれている「光熱費の節約効果」を否定しているようなものです(程度の問題なので、なかには効果のあるシステムもあると思います)。光熱費の節約を期待して高価な第一種熱交換換気を採用した方にとってはショックかもしれません。

でも、安心してください。私も同じですし、空調機から離れた、換気空気の影響を受けやすい部屋の快適性にとってプラスであることには変わりないので。

熱交換換気を採用した私が今現在、満足しているかというと、後悔のほうがやや大きいかな、というのが正直なところです。とはいえ第一種換気なしの生活は体験していないので、公平に比べることはできません。また、メンテナンス費用や更新費用が気にならないくらいの金銭的余裕があれば、満足度のほうが上回ることでしょう。

第一種換気は、快適だけどお金がかかる、そんな贅沢品です。

参考
熱交換換気(80%)の給気温度は本当に暖かいのか実測してみた
第一種換気と第三種換気 – 特徴とコスト、デメリット

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