軒の出の長さを三角関数で検討するツール

最適な軒の出の長さはどの程度でしょうか。
これは地域や配置によっても異なり、本来は設計者が考えることですが、住宅会社によってはまったく検討されないこともあります。

ここでは、日射の角度から日射の深さを計算する簡易ツールを作成しましたので、参考程度にご利用ください。

このツールは、以下の図のように、太陽高度(θ)と、窓の下端から日射遮蔽物までの高さ(H)がわかっているときに、三角関数の計算(Wikipedia)によって日射が侵入する水平方向の深さ(D)を計算するものです。

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使い方としては、下図 A)のような軒の出(ひさし、オーニング、バルコニー、サンシェードなども同様)について、ある太陽高度のときに日射の侵入を防げるかどうかを判断できます。
軒の出の長さが D より長ければ日射は入らず、短ければその長さの分だけ日射が入ることになります。

軒の出がない場合や、太陽高度が低くて軒の出が日射を遮蔽していない場合は B)のようになり、どれだけ奥まで日射が入り込むかを計算できます。

参考までに、東京の南中高度はおおよそ、31° (冬至)~78° (夏至)の範囲です。

ある地点・時点における太陽高度や方位は、以下のサイトで調べることができます。

太陽高度(一日の変化)
1日の太陽の高度(仰角)と方位の変化を計算しグラフ表示します。
太陽高度(同時刻の年間変化)
1年間の太陽の高度(仰角)と方位を週毎に計算しグラフ表示します。

緯度と経度は地図から選択できます。

試しに、ここで調べた値を使って現在の家の日射の深さを計算し、実測値と比べてみたら、ほぼピタリでした。

太陽高度についての詳細は後述します。

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軒の出の役割

軒の出の役割はいろいろありますが、特に重要なのは、雨を防げることと、日射を調節できることだと思います。
住宅密集地を中心に軒のない住宅や軒の短い住宅が多くなっていますが、階ごとに 90cm ほどの軒の出があるだけでも大きな違いが生じます。

雨を防ぐ

軒の出があると、風が強くないときに雨が外壁や窓にかからなくなります。窓を開けていて急に雨が降ってきても、室内が濡れません。

また、外壁の塗装などは何度も塗れたりすると劣化が早まるため、耐久性にも影響があります。

ただし、いくら劣化を軽減するといっても、ベランダの外壁面などはふつうに雨がかかります。そのため、外壁塗装の塗り替え周期が長くできる、といった期待はしないほうがいいかもしれません。全体的な防水効果が長持ちしたり、汚れにくくなる効果であれば、多少は期待できそうです。

また、屋根と外壁の間の取り合い部分は、雨漏りが発生しやすい箇所です。軒ゼロ住宅では注意が必要になりますが、軒の出があれば構造的に雨漏りを防ぎやすいため、安心できます。

日射を調節する(南面限定)

太陽の高度や方位は季節や時間によって変わるため、外壁面に当たる日射をすべて防ぐことはできませんし、その必要もありません。
ただ、高度の高い日射だけは、軒の出でうまくコントロールすることができます。

太陽高度が高くなるのは、夏至を中心とする夏季の南面です。夏の南面は、軒の出だけで室内に窓から日光が入るのをほとんど防ぐことができ、冷房の使用を控えることができます。

一方、冬季やその他の方位では、軒の出だけで直射日光の侵入を防ぐことはできません。夏は東西面の窓から侵入する日射熱のほうが南面から入る日射熱よりも熱量が大きいため(窓面積によります)、東西面には別の対応が必要です。

参考 夏の日射熱対策のカギは西日にあり。その理由と対策

日射熱の侵入は、暖房期においてはメリットとなります。冬は南面も太陽高度が低いため、軒の出が適度であれば、南面から日射熱を多く取り入れることができます。

冬の日射熱取得は、軒の出が長すぎると小さくなる場合があります。夏と冬の日射熱の収支を 3D図面からシミュレーションできるようになれば理想ですが、その時代が来るにはまだ時間がかかりそうなので、上記ツールなどで簡易的にチェックしてみてはいかがでしょうか。

既知の軒の出の長さをD、太陽高度をθとすると、鉛直方向の日陰の高さHは次式で計算できます。
H = D x tanθ

太陽高度について

太陽高度は上記のサイトで調べることができますが、調べる際のヒントや注意事項を挙げておきます。

年間の南中高度を見る方法

太陽高度は緯度によって決まりますが、南中時刻は経度によって変わってきます。
ある地点における南中時刻の南中高度の年間変化を見たいときは、次のいずれかの方法でチェックすることをお勧めします。

・観測時刻をその土地の南中時刻に設定する
・北緯はそのままで東経を135°(日本標準時)に変更し、観測時刻を12時とする

夏至より冷房期に注意

太陽高度が最高になるのは夏至ですが、これは6月21日頃であり、まだ暑さの本番ではありません。
夏の日射侵入を防いで冷房の負担を減らしたいのであれば、冷房が必要な 8 月頃の太陽高度を意識する必要があります。

たとえば東京の南中高度は夏至で78° ほどですが、8月末では63° ほどになります。

上記ツールで高さ 240cm の条件で計算すると、日射を入れないための軒の出の長さは、78° のとき 51cm、63° のとき 122cm という計算になります。

とはいえ、厳密に日射が少しも入らないようにする必要はない、とも思います。前述のように、東西面、特に西面の窓のほうが室内に及ぼす影響が大きいため、そちらにより注意を払うべきでしょう。

軒の出は 90cm とか 1m くらいあると良いなどと言われるのは、なんとなく妥当な感じがします。

正確に真南でない場合の注意事項

住宅周囲の面が正確に東西南北の4方向を向いているとは限りません。南西向きと南東向きかもしれません。その場合、時間ごとの計算はより複雑になります。

正確を期すなら、上記サイトで太陽が正面に来る時刻の高度を調べたり、三角関数を駆使して検討することになるでしょう。

ただそれは面倒なので、「南西向きなら南面と西面の中間的な性質だろう」ぐらいに考えるのがラクです。

夏の日射熱の侵入を軒の出などで防ぐことが難しそうであれば、アウターシェードのようなものを設置したり、全方位に遮熱タイプの Low-E ガラスを選択するという選択肢もあります。

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