当サイトを通じて一番広めたいことは何かというと、温暖地であっても高断熱住宅で全室の連続暖房をすると本当に快適になる、ということです。
常連読者の皆様にとっては当たり前のことかもしれませんが、一般的なレベルでそのことが認知されているかというと、まだまだです。国の政策としても、パリ協定に縛られているためか、温暖地の連続暖房を推進する意図はまったく感じられず、ZEH での扱いを見るに、むしろ抵抗勢力です。
これが一部の人にしかメリットのないことであればどうでもよいのですが、トータルコストが特に増えずに快適レベルが大幅に向上するのであれば、もっと広まったほうがいいことだと信じています。日本のなかでは温暖な気候のはずの東京近郊で冷え性に悩まされている方々の声を聞くと、特にそう思います。
そんな動機もありチマチマとブログを書いているわけですが、当サイトにたまたま迷い込んできた方がこのことを認識してくれるようになるのかというと、自信がありません。各記事にはそれぞれ前提知識が必要な内容も多いので、「意味不明」と読み飛ばされているような気もします。部分的に賛同していただけても、結局は住宅業界の多数派の意見に流されて、高断熱・高気密をあきらめてしまう人も多いのではないかと推察しています(私もかなり流されました)。
そこでふと思いついたのが、本を出してみようということです。電子書籍なら意外とかんたんに本を出すことができるみたいなので、上記のテーマで本を出せば少しでも普及に役立つことができるのではないかと。
考えてみると、高断熱住宅に関する書籍はいくつかありますが、このテーマに絞って施主側の視点から書かれた書籍はありません。
当サイトで推奨している東大・前真之先生の著書『エコハウスのウソ 増補改訂版』は温熱環境のしくみがよくわかる良書ですが、全室24時間暖房は温暖地では「リッチな暖房」との扱いです。寒冷地では標準になっている快適な暖房方式が、温暖地の一般レベルで普及すべきこととは見なされていません。
この点、兵庫県に事務所を構える松尾和也先生の著書『ホントは安いエコハウス』は、高性能住宅でエアコンを連続運転することによって快適になることがデータとともに示されています。ただ少し残念なのは、住宅関係者向けの専門誌「日経ホームビルダー」の連載コラムを基にしているため、完全に施主向けかというと、そうではありません。施主が読んで役立つ情報も多いのですが、一般向けとしてはやや難しい内容や、住宅会社側が知っていればよいレベルの内容も含まれています。
施主にとって内容が難しいという点は、新住協理事の西方里見先生や鎌田紀彦先生の著書も同様です。鎌田先生は『本音のエコハウス』(エクスナレッジ, 2018, p.18)に、東京暮らしの印象として、
全室暖房は日本中で歓迎されるであろうと確信していた
との記述があるので、温暖地の連続暖房には推奨の立場でしょう。ただ、お二方は新住協の家づくりが理想とお考えでしょうから、他のハウスメーカーなどで家を建てたい施主にとってはどう参考にすればよいのか戸惑うところがあります。
高断熱住宅で連続暖房を行う方法はいくつもあり、住宅会社の選択肢も少なくないはずです。
かといって私が書くというのもおこがましいことですし、伝えたいことをきちんと伝えられるかはわかりません。多くの方に読んでいただけるかどうかもわかりません。それでも、できる限りのことはやってみようと思い、現在、執筆中です。
最初は適当に過去記事をちゃちゃっと再編集すればいいやと思っていましたが、いま見ると納得いかない記事が多いので、完全書き下ろしです。時間のない施主向けに、重要な最低限の知識を伝えることができれば、と考えています。
はじめてのことなのでどのくらい時間がかかるのかわかりませんが、令和元年内の出版を目指しています(と宣言することで自分に発破をかけていますが、間に合わなかったら申し訳ございません、と先に謝っておきます)。これに伴い、サイトの更新はしばらく滞ります。
本は Amazon で電子書籍として出版し、Kindle Unlimited メンバーの方は自由にお読みいただけるようにするつもりです。紙の本はあまり安く設定できないために今のところ発行予定はありませんが、もしご要望があれば対応したいと思っています。
なお、当サイトの内容がだいたい理解できている方や、既に高断熱住宅にお住いの方にとっては特に得るもののない本になります。ご了承くださいませ。
コメント
さとるパパさん
こんにちは。
書籍、スゴイですね。
さとるパパさんの仰っていること、すごく共感します。
温熱について、分かっている人は分かっているし・・という感じですよね。
これから家を建てられる方の知識や意識に働きかけるものが必要になっている気がします。
執筆活動、応援しています(^^)/
コメントありがとうございます。
施主ブロガーが本を出す事例は聞いたことがなく無謀かもしれませんが、電子書籍は思っていたよりハードルが低く、
低評価レビューが怖いくらいのリスクしかないので全然大したことではありません。
異なるプラットフォームでこれまで届かなかった層に届けばいいなと思います。
自信はありませんが、高コストでなくても非常に快適な住宅を建てられることを実証しているくろーばーさんに応援していただけると心強いです。
ありがとうございます!
住宅を建築するにあたり,大変参考にさせていただきました。(まだ着工には至らず,結果がどうかわかりませんが・・。)
自分のところだけでなく,快適なお家が増えるといいなという思いはありますが,私は発信するのは苦手なので,本を出版されるとのこと,とても尊敬します。
これからも陰ながら応援しております。
コメントありがとうございます。
いつの間にやら簡単に本を出せる時代になっていたので大したことはないのですが、反響に驚いております。
やっぱり面倒、となったときの励みになります。ありがとうございます。
新築にあたっての教科書として参考にさせていただいています。
計算ツールなどは使いやすいものが他になかなかなく、唯一の頼れる存在です。
どの家づくりセミナーより論理的、科学的で説得力があります。
これだけのブログを作るには大変な労力が必要かと思いますが、日本中に頼りにしている人がいると思いますし、その人たちの今後数十年の快適で経済的な生活に繋がるので、是非がんばってください。
ありがとうございます。
本の試みは失敗だったかもしれませんが、ブログはそれなりに読んでいただけているようなので、これからもできる範囲で続けていこうと思います。
結構いい加減なところや知識不足な面もあるので、参考程度にご利用いただければ幸いです。
よろしくお願いします。