断熱性能を表す UA 値(外皮平均熱貫流率)は小さいほど断熱性能が高いことを意味します。家と外を移動する熱量が少ないと冷暖房の光熱費が安く済み、快適になるはずですが、例外もあります。ここでは、UA 値だけに注目していると見落としがちなポイントを 6 つ紹介したいと思います。
・実は思っているより UA 値が高い
UA 値は一軒一軒個別に計算されるものです。カタログや広告に掲載される UA 値は計算上有利なモデルで算出した数値であり、実際の家の UA 値はそれより何割も高くなるのが常です。実際の値は聞くまで教えてくれないこともあるので、注意しましょう。通常、一番熱を通しやすい窓の面積が大きく影響します。
・家の外皮面積が大きい
UA 値は外皮(屋根や壁など)面積あたりの指標なので、外皮面積が大きければ大きいほど熱損失量は大きくなります。空から見て正方形に近いカタチの家は良いですが、細長い形状や、1F と 2F の大きさが違う場合などは外皮面積は大きくなり、熱損失量が大きくなります。形の違いは Q 値では考慮されるのですが、UA 値には反映されないため注意が必要です。また当然ながら、家の面積(吹き抜けを含む延床面積)や天井高も大きいほど熱損失量は大きくなります。ちなみに、シンプルな形状は耐震上も有利です。
・断熱材の施工がいい加減
UA 値は断熱材の熱伝導率や厚さから計算するものであり、実際に移動する熱量を測定したものではありません。このため、断熱材がきちんと施工されているかどうかは数値からはわからないのです。グラスウールなどの断熱材の施工が悪いと、熱貫流率には 2 倍ほどの差が出るそうです。グラスウールなどの場合はすき間がなく、詰め込みすぎていないこと、吹き付け断熱材の場合は、厚みにムラがなく十分であることが重要です。
・換気の熱損失が大きい
UA 値は Q 値と違い、換気の熱損失が考慮されません。換気は一般に2時間で空気が入れ替わるように設計されるため、冬場は特に熱損失量に影響します。熱交換型の換気システムを導入すればこれを減らすことができますが、高価で電気代もかかるため、微妙です。それより重要なのは、換気計画の対象外となる漏気(すき間風)を減らすことです。つまり、高気密であることです。強風時にもすき間風が冷暖房に影響しないようにするには、C 値 0.7 以下の気密性能が要求されます。残念ながら、この水準に対応できるハウスメーカーは少数です。
・暖房方法が非効率
暖房器具によってエネルギー当たりの暖房効率は異なります。電気は高価ですが、新型のエアコンは高効率です。また、家全体に冷暖房を行う場合は、かなり断熱性能が高くないと(UA = 0.4 程度)、光熱費がかさみます。暖房にはさまざまな方法がありますが、実際に利用している方の費用をブログなどで調べることが確実です。ただし、その際は、家の大きさや暮らし方、太陽光発電の有無やオール電化などの条件も考慮する必要があります。
・日射熱の取り込みが過剰
高断熱住宅は少しの熱量で家が暑くなるため、夏を快適に過ごすには日射の管理が重要になります。日射遮断型の Low-E ガラスでは 6 割程度の日射熱をカットできますが、窓が多い場合はそれだけでは不十分です。夏は特に東西から光が入るので、植生やサンシェードなどで大きい窓の光を遮断すると効果があります。一方で、冬はうまく管理すれば無暖房住宅も可能です(天気には依存します)。
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