わが家は、以前そのデメリットを書いたように、完全分離の二世帯住宅です。
三井ホームで家を建てるにあたって、わが家は迷いなく全館空調を採用しましたが、親世帯は全館空調を採用すべきかどうかをギリギリまで悩んでいました。「全館空調に関する記事まとめ」で書いているように、全館空調にはさまざまなメリット・デメリットがあります。
親にとって一番気になる点は、「使わない部屋まで全部屋を冷暖房するのはもったいない」ということでした。たしかに、普段使わない部屋が多いと、高断熱でも個別エアコンより大幅に電気代が増える可能性があります。
また、高断熱住宅での全館冷暖房の生活は、低気密・低断熱住宅の生活と大きく変わります。高齢者にとって、長年の生活で染みついた生活習慣を変えるのは困難です。子世帯としてもどちらを勧めるべきか微妙だなと思っていたところ、最終的には全館空調を採用することになりました。親世帯はお金に困っていないので、快適性を優先した結果です。
今回は、その結果として、全館空調を採用した高齢者のくらしがどうなったのか、実例を紹介したいと思います。
生活習慣は変えられない
全館空調ではふつう、他の暖房器具は不要です。しかし、義父にはこだわりがありました。冬はコタツに入ってゴロゴロしたいのです。
コタツという局所暖房を使用するとなると、部屋は寒い必要があります。これは全館空調の考えと相反するし、コタツは洗練されたインテリアとも合わないため、周囲の説得でなんとかあきらめてもらうことになりました。
妥協した結果が、ホットカーペットです。本当はそれも要らないのですが、床から熱を感じながらゴロゴロするのが気持ちいい習慣なのでしょう。冬に薄着をするのも慣れず、「はんてん」やダウンベストを着ることもやめられません。しかし、全館空調の家でその恰好では、やはり暑いのでしょう。のぼせたのか、真冬に「外の寒さが気持ちいい」とフラッと涼みに出ることもありました。
上着を脱げばいいのに、と思いましたが、そうはいかないようで、結局、暖房の設定温度を下げることになったようです。
全館空調で常に 23 度にしているわが家から親世帯の家に入ると、まず寒さを感じます。来客時などで急遽設定温度を上げた場合でも、床まではなかなか暖まらないため、足元が冷えます。
これでは、せっかくの全館空調のメリットがあまりないような気がしてしまいます。
それでも快適かつ健康
そんな生活状況ではありますが、昔の住宅よりはずっとマシです。昔の住宅のように、水道が凍るような朝の寒さはありません。設定温度を低くしても、風呂場や脱衣所が特に寒いということがありません。暖かいと言えないほどでも、家中の温度差は大きくありません。
これは快適なだけでなく、高齢者に多いヒートショックを防ぐ意味でも非常に重要です。Wikipedia の「ヒートショック現象」の説明によると、
日本で年間累計 1 万人以上がヒートショックが原因で死亡しているとされ、この数字は、室内における高齢者の死因の 4 分の 1 を占める
というデータもあるそうです。かんたんに比較することはできませんが、以前の住宅のままでは何か起こっていたかもわかりません。
ただし全館空調は不要?
しかしながら、家中の温度差を少なくし、朝の寒さを緩和するだけなら、高断熱であれば済むことです。親世帯はわが家と同様、三井ホームの標準仕様よりは高断熱にしているため、それだけでも以前の住宅よりずっとマシな住環境が得られていたはずです。
冬場だけを考えたとき、高断熱であれば暖房は個別エアコンでもよかったのかな、とも思います。
続いて、お金の面からも考えてみます。
経済的観点
全館空調の場合、問題になるのはランニングコストです。
問題だと思うのは、いつか住めなくなった時にどうするかということです。住宅を誰かに引き渡すことになったとき、すぐに入居するならよいのですが、空き家の期間が長引く場合は困ります。いつでも住める状態を常にキープするためには、なかなか費用がかかります。全館空調は換気も兼ねているため、切るわけにいかず、それだけで基本料を含め毎月 5 千円程度の電気代がかかります。業者による毎年のクリーニングや設備更新の費用もかかるでしょう。
キッチンの換気扇で常時換気を代用する方法なども考えてみましたが、各部屋に給気口はないし、全館空調を動かさないことによる配管や機械への悪影響を考えると、動かし続けたほうがよい気もします。いっそのこと、全館空調を廃止することになるかもしれません。
子世帯の都合だけを言えば、全館空調を採用しないことを勧めたほうがよかったかもしれません。
一方、親世帯が全館空調を採用して良かったと思うこともあります。
高齢者のメリットが大きいのは夏場
夏場、高齢者は暑くてもエアコンを我慢しがちです。高齢者は、冬に暖房を入れるのは当然だと思っていても、夏の暑さは我慢すれば何とかなると思っている節があります。特に夜間など、これが原因で起きている熱中症は多くありそうです。
しかし、全館空調では、節電として設定温度を高めにしていても完全にオフにすることはないため、熱中症のリスクが自動的に軽減されます。ピーク電力が多くなることもありません。
全館空調を採用しない場合を考えると、エアコンを自動運転で付けっぱなしにすることはなかなか実行しなそうなので、これは全館空調ならではのメリットだと思います。思えば、新居に住んでから、夜暑くて眠れなかったという話を聞きません。
なお、全館空調を採用した親世帯であっても、それなりに病気になることはあります。風邪もふつうに引いていますし、外では熱中症で倒れることもあります。ご注意を。
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